ーメンター?との出会いー

 さて、ながく地方公務員として生きてきた私は、不動産投資、不動産事業の世界に飛び込んでみて様々な人に出会い、今までつくづく狭い世界に生きていたものだ、と感心することしきりでした。

 まず、金融機関は都市銀行から地銀、信金、公庫、ノンバンクとさまざまあり、人も役割もそれぞれ違いがあることが実感をもってわかりました。

 勉強をはじめたばかりのころ、何も知らない私は何のつてもなく、いきなり大手都市銀行をたずねたことがあります。

 思いがけず立派な部屋に通されると、しかるべき方が数名の部下を連れて現れ、怪訝そうに、しかし丁重に話をきいてくれました。しばらくするとやっと得心された様子で慇懃にお断りされました。まさにお門違いでした。

 銀行とのお付き合いはやはり融資に始まります。

 不動産業者。経営者、管理者は概して個性豊かな人が多く、魅力的です。また、一口に不動産業といっても売買、仲介、賃貸、管理と取り扱う仕事の種類はあまたあり、規模も大小さまざまですので、実に様々な人たちがいます。その人の得意分野も、さながら昨今のお医者さん同様、かなり専門化、分業化していることがわかりました。若い人たちは概して真面目で勉強熱心なため、多く好感が持てます。

 そんな中で出会ったのが、A社長です。

 記念すべき1棟目のアパートの仲介業者であり、驚いたことに売主でもありました。ほかに不動産の管理会社、メンテナンス会社など複数の会社を経営され、自社ビルもお持ちです。

 近年は東京に進出され、海外にも手を広げておられます。まさに叩き上げのプロの投資家といえる方でしょう。

 はじめは売り手と買い手との出会いでしたが、すぐに本物だと直感した私は、これは師事しなければ、と強く思いました。以来、か細いお付き合いではありますが、ご迷惑にならない範囲でときどき助言をいただいています。

 ーA社長の助言ー

 初めての融資が実行され、めでたく登記が終わった直後のこと。

 「〇〇さん(私のこと)は土地を買ったんですよ。」

 えっ~?なに?なに?私はアパートを買ったんじゃないの?と思いつつ、あっけにとられてA社長の顔を見ていると、なるほどそうか、建物はとどのつまり滅失する。最後には土地だけが残る。やっと気が付き、「そういうことですか。」と感心しました。

 A社長はお忙しいせいか、大事なところ、結論だけをズバリとおっしゃるので、素人にはとてもついていけないところがあります。何はともあれ、土地の価値が大事ということか。ならば、やはり区分マンションはないな、とあらためて思った次第です。この言葉はショックが大きかったので、今でも頭に刷り込まれています。

 例えば超一等地のタワーマンション、相続税対策ならあり、とでも?いや、そういえば確かに「住む家は別です、日本では。」とはおっしゃったような。

 「(不動産投資は)ババ抜きと同じです。最後にババを引いた者が負けです。」

 いずれは売らなきゃ成功したかどうかはわからない、早く転売せよ、ということかしら。確かに滅失したら保有し続けることはできないわけです。

 「手残りは投資額の3%ほどでしょうか。」

 なるほど、評価の視点はまずはそこか。CFが大事だということはおぼろげながら分かったつもりではいたものの、いろんな指標があるものですから。それにしてもハードルが高いですね。

 「一般の方々の6割くらいが失敗してますね。あとの4割がトントン。」

 なあんだ、素人の成功者はいなのか。プロの基準からみると、そうなのでしょう。優し気な口調から推して、自分はたぶん6割と4割のボーダーラインくらいなんでしょうね。

 「小さなことの積み重ねが大事です。(不動産投資、事業は)実にきめの細かい話です。」

 これはすぐに実感しました。空き室を恐れるあまり、広告料を出したがる、礼金、敷金の免除はともかく、フリーレントをつける、やれ家電、家具のプレゼントだのショールームだの。挙句の果てに家賃も下げる。現状復旧、修繕料は管理会社の言いなり。清掃費は彼らの稼ぎどころなので、あまり無理もいえませんが。それにしても、オーナーたるもの、細かくなくてはいけません。

 もっと金言を頂戴したはずだとおもうのですが、いかんせん駆け出しの悲しさ、その多くを理解できないまま失念してしまいました。

 そんなA社長に一度だけ褒められたのは、「ご自分で確定申告されているとはおどろきました。たいへんでしょう。」「でも、それなら大丈夫、(2棟目、3棟目)きっと行けますよ。」

 税理士に頼まないなんて非常識、時間の無駄だろうに、という含みももちろんあるのでしょうが、まあ否応なく数字を見ざるを得ないから初心者には勉強にはなる、それなら大きな失敗はしないだろう、A社長が励ましてくれたのは、そんなところでしょうか。

 「そこから先は税金との戦いです。」「国家権力には逆らえません、恐ろしいものです。」

 アパート経営とは、国家権力との戦いか、ロマンがあるな~。

 A社長との出会いから6年にもなろうとしているのに、いまだ税金と戦ったことのない私は国家権力の恐ろしさというものを全く知らないでいます。税務署なんか一向に怖くないのです。儲けていない証拠でしょう。実に情けない~。