こんにちは
実践大家のメッシといいます。私は自分で不動産投資を行いながら、賃貸管理会社で10年以上実務を担当していたサラリーマンでもあります。
私は大家でもありながら、管理会社の内情、不動産業界の内情を知る立場でもあります。コラムを通し、不動産投資を行っている多くの大家さんに対し、参考になる情報を提供できればと思いコラムを書くことにしました。
管理会社で働く社員のレベル
今回は管理会社で働く社員の実態について、10年以上その真っただ中で働いてきた私の感想をご紹介させていただきます。結論から言うと、賃貸管理会社の社員のレベルは、社会的に見て正直高くありません。
もちろん私個人の主観であることが大前提ですが、外側からは、垣間見ることしかできない管理会社社員の生の姿をご紹介させていただきます。
また、そのような状況で、大家さんは管理会社とどのように付き合っていくのが良いか、私なりの考えを数回に分けて述べさせていただきます。
業種別の離職率
最初に公的なデータをご覧いただきます。
厚生労働省発表の大学新卒者の3年以内離職率のグラフです。
このデータによると、不動産業・物品賃貸業の大学新卒者の3年以内の離職率は34.9%です(全産業の平均より若干高い程度です)。
つまり、新しく入社した人のうち3人に1人以上が3年以内に退社することを表しています。宿泊業・飲食サービス業(50.2%)や教育産業(45.4%)などよりは大分低いものの、金融・保険業(21.8%)などよりは高くなっています。
この離職率は、恐らく業界のブラック度と相関関係があるのではないでしょうか。給与が安い、しかし長時間労働で休日も満足に取れない。
毎日、忙しく過酷な仕事に追われ、その割には専門性などのスキルを得にくく、将来に希望を抱きにくい環境が想像されます(該当する業界に勤めている方には申し訳ありません)。
データとマッチする管理会社離職率のイメージ
厚生労働省のデータは、私が持っている賃貸管理会社の内情イメージにマッチするものです。つまり、給与、労働時間や休日数などを勘案すると、割に合っているか微妙で、将来に対する不安が常に付きまとう業界です。
離職率が高く、社員の仕事に対するスキルが高まりづらい状況なのです。専門性という点では、不動産関連法規や建物や設備に関する知識などが身に付きますので、その点では、より離職率が高い業界よりはましなのではと、勝手に仮説を立てています。
なお、既卒者のデータでは、同じ業界でも離職率の傾向が新卒者とは異なっていたり、年度によって大きく変動していたりします。
また、「不動産業・物品賃貸業」では、業界幅が大きすぎて賃貸管理会社に絞って論じることには無理があると思いますが、あくまでも、私の賃貸管理業界に対するイメージに対し、「不動産業・物品賃貸業」大学新卒者の業界別離職率が相応しい数字であるという話です。
管理会社社員のレベルは低いのか?
率直なところ、管理会社社員の社会人としてのレベルですが、残念ながら「決して高くはない!」、と言える人が多数含まれていると思います。私が勤めていた会社についての印象が中心となりますが、印象は他社の人も含めた業界全体に対するものです。
なぜ、他社の社員のレベルが分かるかと言うと、例えば、大家さんの物件が売却されるときには、他の管理会社社員と打ち合わせをすることがあります。
その他でも、何かと他社社員とやり取りすることがありますが、世の管理会社の社員のレベルは高いものではありませんでした(自分もその一員に含まれていたところが悲しいところです。ただ、私が勤めていた会社は、どちらかと言えば、業界の中では、まだ質の高い方だったような気がします)。
社員のレベルが高くないとは、例えば、一般常識、ビジネスマナーや専門知識、接客能力、対人能力、IT知識、会計知識、自己啓発力など、ビジネスマンとしての能力が十分に備わっていない人が多いという意味です。
もちろん、能力が高い人が全くいないということではありませんが、全体の平均に対するイメージです。大手も中小・零細企業も含めて余り大差はないと思います。
管理会社社員の会話例
社員のPCが不具合を起こし、会社が契約しているシステム会社のサポートデスクとの電話での会話例を見てみましょう。
()はシステム会社担当者の心の声です
管理会社社員A「PCがフリーズして仕事にならないので、早く何とかしてほしいのですが」
システム会社「ご迷惑をお掛けし申し訳ございません。では、状況を確認したいのですが、お客様が使用しているPCのOSを教えてください」
管理会社社員A「OSって何のことですか?専門用語で言われても分かりません」
システム会社「申し訳ありません」
(今の社会OSが分からなくて、良くサラリーマンやってるよな。不動産業界はだから対応するの嫌なんだよな)
システム会社「では、リモートデスクトップで対応しますが、そのご了承をいただけますでしょうか?」
管理会社A「だからリモートデスクトップって何ですか?あなた、専門用語しか使えなくて、サービス業失格ですね」
システム会社「たびたび申し訳ありません(我慢が切れそう)」
(いい加減にしてくれ。不動産業界の人間は、PC使うの止めて欲しい・・・)
管理会社社員のITスキルは、大体こんな感じです。
では何故、社員のレベルが高まらないかと言うと、一つには業務量が多すぎるという業界の特性があると思います。
管理会社の業務を分解
賃貸管理会社の仕事を分解してみると、以下のような膨大な業務をこなしていることが分かります。
「空室募集業務」
・家賃相場算定
・募集条件大家さんと打ち合わせ
・室内写真撮影
・募集図面作成
・ネットなど媒体登録
・仲介業者Fax・メール送信
・大家さんへ定期的に提出する募集反響報告書作成(仲介業者やエンドからの問合数や空室内見実績などを集計し、この後どのような空室対策を行うのが良いのか提案などを盛り込みます。)
⇒私の会社では空室のある全物件について、月2回作成して大家さんに提出していましたが、この報告書の作成のために多くの営業社員が夜遅くまで会社に残っていました。作成するのがシンドく、作成しても、作成しても、あっという間に次の期限がやってきます(涙)
・仲介業者訪問
・モデルルーム設置
・その他新しいアイデアを出せと大家さんから言われることに対応する
「入居時新規契約業務」
・社内入居審査
・保証会社審査対応
・仲介業者と打ち合わせ
・大家さんと打ち合わせ
・社内システム登録
・契約書作成
・部屋の鍵交換
・入居前設備不具合チェック
・ネットから情報削除
・電気契約変更手配⇒東京電力なかなか電話つながらない
・その他
「賃料収納業務」
・管理している全室の家賃入金確認
・社内システム処理
・家賃報告書作成⇒とっても地味な事務作業です
「滞納督促業務」
・入居者に電話や手紙で督促
・訪問督促など⇒入居者が怖い人だと逃げ出したくなる仕事です
・大家さんに状況報告⇒大家さんから回収できて当然と言われると気力が萎えます
「更新契約業務」
・更新リスト確認
・更新条件オーナー提案・打ち合わせ
・更新契約書作成、更新契約締結
・社内システム登録⇒「全部自動更新にすれば事務作業なくなって少しはラクできるのに」とつい思ってしまいます
「入居中クレーム対応業務」
・騒音、ゴミ出しマナー違反、駐輪マナー違反など随時対応⇒悪質な入居者を相手にするときは、人間の嫌な面を嫌というほど見せつけられることになります
「入居中設備不具合対応」
・エアコン、給湯器、ガスコンロ、水道など設備修繕対応
・漏水対応⇒漏水で家具が水に濡れたりすると、保険対応をはじめ膨大な作業が発生
⇒設備不具合のたび修理金額値切る大家さんに電話するのが憂鬱
「解約時原状回復工事」
・募集担当者と工事内容打ち合わせ
・工事業者見積取得
・大家さんへ見積提出・承諾取得
・工事業者打ち合わせ
・工事進捗管理
・工事完了後チェック作業
・工事業者へ工事やり直し指示
・大家さんへ工事完了報告⇒そのあと大家さんが自らチェックし追加でやり直しが発生し対応
「敷金精算業務」
・精算書作成など事務処理
⇒工事の大家さん負担と入居者負担の折り合いがつかず、調整に難儀することあり
⇒東京都、国土交通省の原状回復ガイドラインを理解できずに業務を続けている社員多数
「建物管理業務」
・共用部清掃
・貯水槽、高架水槽、消防設備、建築設備、エレベーターなど各種点検の下請け業者作業チェック
・各作業大家さんへ報告⇒下請け業者が作業をすっぽかし、そのことにしばらく気が付かず大きな問題に発展することあり
「管理契約の新規獲得営業」
・新規大家さん探し
⇒新しい管理なんて簡単には取れません。会社からは、新しい管理が増えなければ昇給もないと脅されます
「24時間電話対応業務」
⇒業務時間外の緊急電話対応は外注したりしますが、その緊急センターから深夜に管理会社担当者の携帯に電話がかかってくることがあります。
電話が鳴っていることに気が付かなかったことにして、バックレたい衝動に駆られます
「その他」
(裁判案件などもあり、イレギュラーな仕事も津波のように押し寄せます)
これだけの業務を複数の担当者で分業しながら、25棟・500室くらいについて3~4人程度で手分けをして行います。分業の場合、担当者同士のすり合わせのため、会議なども多く発生します。
会社組織の場合、目標管理シートやボーナス考課表なども作成して定期的に上司に提出したりします。
入社して責任が増えるにつれ、サービス残業や休日出勤が増える一方です。
会社によっては、福利厚生との名目で、皆で旅行などにも行かなくてはいけなかったりします(会社で旅行など行っていないで、本当は休みたい・涙)
決して高くはない給与
これだけの業務を行わなければなりませんが、給与は決して高い業界ではありません。
入居者や大家さんに対するクレーム対応などで、神経をすり減らし仕事を行わなければならない事も少なくありません。精神的に余裕が全くありませんので、自己能力向上のためITスキルを高めようなどの発想も生まれにくいと思います。
時間があれば、休んだり、人間らしく趣味に時間を使いたいと思う力が働きます。
結果として、離職率が高止まりし、そのため社員の熟練度が上がらず、お客様である大家さんや入居者に対し満足なサービスを提供できない状況が発生するのです。
次回に続く
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