ドーモ、投資侍です。

最近のコラムでは不正融資に関する話題が盛り上がっていますね。

二重売契にエビデンス偽造とこの世界に長くどっぷり漬かっている方であれば古くはバブル時代からの不動産業界の慣行と割り切ってしまうかもしれません。

 

ただ、多くのコラムニストの方のご意見が投資家側からの意見に偏っており、銀行側の意見が少ないように思いました。

ワタクシは金貸し屋ではありませんが、おそらく皆さんよりは少しだけ多くの情報に触れることができます。

 

そこで本日は今回の問題について銀行と金融庁からの視点を絡めてコラムを書かせていただきたいと思います。

 

キーワードは「リスク感応度」です。

 

なお、本日のコラムは多くの投資家の方にとって捉えるところが異なるでしょうから、色なし画像なしにて段落だけ整理して書きます。

 

不動産業者、専業大家、サラリーマン、初心者など多くの読み手がいらっしゃるかと思いますが、ご自身の過去の経験や先入観を外して1コラムニストの意見としてお読みいただければ幸いです。

 

先に申し上げますが、本日のコラムは超長文です。ご容赦ください。

 

1.賢者は歴史に学ぶ

不動産投資は銀行融資なくして成り立たないものです。

過去は平成バブル前の高度経済成長期から不動産の発展と日本の発展はセットでした。

多くの人たちは不動産神話を信じ、人はこぞって不動産を買い漁り、銀行はこぞって不動産融資を行っていました。

 

ワタクシ、流石にこの頃はまだ不動産に関わっていませんが、二重売契を利用したフル・オーバーローンの慣習が行われるようになったのはこの辺りの高騰相場が原因と聞き及んでおります。

 

ここまでのお話は最近の出来事に似ています。

そうです、金融緩和により多くの投資家が不動産を買い漁り、スルガを初めとする多くの銀行がフル・オーバーローンによる融資を出した結果生じた昨今の不動産価格の高騰です。

 

過去の平成バブル時代の終わりを迎えたのは不動産の短期売買規制と総量規制です。

つまり、官が不動産バブルを人為的に終わらせました。

当時の大蔵省・日銀はもちろんバブル崩壊などさせるつもりもなくソフトランディングさせるつもりだったのでしょうが、不動産の価格下落による銀行の融資資産の毀損が更なる不動産価格の下落と融資資産の毀損を呼び、歯止めがかからなくなりました。

 

このような反省から不動産の短期売買による投機的な取引を抑え、かつ、銀行の資産保全を確保するために決められた銀行共通のルールが自己資金2-3割という自主規制です。

 

つまり、不動産融資に関する自己資金ルールとは、官と民が過去の経験に学び、健全なる経済の発展のために決めた防波堤なのです。

 

2.不動産投資家のモラルの低下と傲慢

不動産価格の高騰相場は得てして不動産投資家のモラルの低下と傲慢を生みます。

ワタクシ、平成バブルは経験しておりませんが、リーマンショックは経験しておりますので、相場の高騰というものは人の感覚を麻痺させ、変貌させる麻薬のようなものであることを知っています。

 

さて昨今のアベノミクスの高騰相場を振り返ってみましょう。皆様の周り、又は皆様ご自身で麻薬に犯されているような方はいらっしゃらないでしょうか。

 

二重売契を使ってでも融資を受けた者勝ち、自分の買った物件は割安だから損をするはずがない、などと思われていませんか。

平成バブルの高騰相場で不動産を買い漁っていた人も同じような考えを持っていたことでしょう。

 

最近の不動産投資家は自分が割安で買ったことを自慢する方が多いです。例えば、1億で売りに出ていた物件を8000万で指し値して買った、近隣相場坪単価200万の土地を100万で買った。

こういう不動産投資家は銀行が2-3割の自己資金を求めることを批判します。なぜなら、自分は割安で買っているのだから絶対に安全な投資なのに銀行はそれを理解してくれないと考えているからです。

 

この考えは正しいでしょうか。それとも不動産投資家の傲慢でしょうか。

 

さて銀行の立場から考えてみましょう。

 

銀行は不動産投資家と異なり物件が儲かるかどうかは考えていません。考えていることは如何に安全に融資を回収するかです。

 

銀行からすれば1億の物件を8000万に指し値をして買った物件の市場価格は8000万円です。1億円ではありません。なぜなら、1億円で他に買う人がいなかったから投資家が8000万円で買えたに過ぎないからです。売主も1億円で他に売れるのであれば当然売るでしょう。

また同じように、近隣の土地が坪200万円であっても投資家が買った土地が坪100万であれば市場価格は坪100万円です。なぜなら、売主は200万円で売れなかったから100万円で売ったにすぎないからです。

 

銀行は割安で買った、含み益があるなどという架空の利益は評価しません。なぜなら、平成バブルという過去の教訓から含み益なるものは泡のように消えることを学んでいるからです。

 

含み益なるものをご自慢される方、含み益があるから安全だと仰られている方は得てして不動産投資歴10年以内にて、かつ、セミリタイアされた方が多いように思います。

 

銀行はお金を貸す側であり、如何に安全に回収するかを歴史の教訓からルールとして定めているのであって、投資家がそれを自己の経験を元に安全だと主張するのは正論でしょうか、はたまた単なる傲慢でしょうか。

 

銀行は平成バブルという過去の教訓を元にルールを決めて融資をするだけです。投資家が投資目線を決めてそれに適う物件だけを購入するように、銀行も貸し手側の理論により安全に回収できるルールを定めて融資を出しているのです。

 

3.歴史は繰り返す

二重売契やエビデンス偽造は平成バブル時代から住宅ローンについてまで一般的に行われてきました。

これは銀行が決めたルールに従っていると収益が上がらずに立ち行かなくなるため、不動産業者が慣行として行い始めたものです。

 

しかしながら、時代は変わり、銀行員にも平成バブルを知らない、つまり、今の融資ルールが作られた背景を知らない方が入行していきます。

そして、金融緩和による溢れたマネーの融資先を見つけられない銀行員は、行内ルールを守っていては融資ノルマを達成できないため、あの手この手で融資金額をかさ上げしていきます。

 

それは時にはサラリーマン収入を使うものであったり、時には定性評価を使うものであったり、更には二重売契の黙認であったり、と様々な手法により行われました。

 

こうして平成バブル時代の教訓を生かして作られたルールは徐々に破られるようになったのです。

 

4.時代の変遷

不動産業界にどっぷり漬かっている方は二重売契などは当たり前のことであり、大きな問題ではないと考えているかもしれません。

 

しかしながら、その考えは正しいでしょうか。今一度立ち止まって考えてみてください。

 

過去の経験則は将来においても正しいとは限りません。名門と言われた企業であっても過去の成功体験が足枷になり、時代の変化に対応できなくなったことが原因で倒産しています。

 

昔はセクハラなどは当たり前で問題などとは考えられていませんでした。

しかしながら、今はセクハラが原因で世界トップの半導体企業のCEOや外資系金融機関の日本法人トップが辞任する時代です。

 

今の時代は過去に行われていた過ちが精算される時代に差し掛かっていると感じています。

二重売買などという過去の慣習は今の時代においても取るに足らない問題なのでしょうか。これからも将来において認められるものなのでしょうか。

 

4.銀行の変化

一部の銀行では金融庁からの検査もあり、二重売買契約の調査を行い始めました。

銀行法務の見解は二重売買契約は欺罔行為に該当し、発覚した場合は期限の利益の喪失事由に該当しうるという点では銀行業界の解釈に大きな差はないと理解しています。

 

もしコラムの読者の方で二重売買契約に手を染めた方がいらっしゃれば今一度真摯にご自身の立ち位置をご確認ください。

 

まず、個人の売買で二重売買契約を行った方の99.9%は銀行が把握しています。残りの0.1%は銀行員が見落とした場合に限られますのでまず把握されているとお考えになってください。

 

次に、法人の売買で二重売買契約を行った方は80%の確率で銀行が把握しています。

残りの20%は担当税理士が●●●を作成し、法人決算書類の▲▲▲の部分を×××し、かつ、○○した場合だけ把握されていない可能性があります。

ここは犯罪指南になるので詳細は書けません。ご自身の担当税理士にご確認ください。

税理士が「絶対に把握されません」と断言すればその税理士は対応していると思いますが、「把握される可能性がゼロではありません」という税理士は自分の仕事に穴があると理解しているということなので、おそらく銀行に把握されています。

 

一部調査を開始した銀行では二重売契の疑いのある借入人をリストアップし始めています。

 

このリストにより直ちに期限の利益喪失の引き金を引かれることはないでしょうが、金融庁からの調査命令、景気のリセッションなどがあればいつでも投資家から資金を引き揚げることができるブラックリストです。

 

平成バブルの高騰相場を終わらせたのは官であったように、今回の高騰相場を終わらせるのも官であるのかもしれません。

 

5.投資侍の思うこと

ここ2ヶ月ほどの出来事で時代の潮目が変わってきたことを肌で感じ始めています。

 

不動産投資は銀行依存の投資であり、銀行融資がなくなれば立ち行かなくなってしまいます。

多くの不動産投資家は依存物件は危険だと言いますが、そういうご自身の生活が実は銀行に完全に依存していることに気づかれていない方も多いです。

 

今回の問題は金融庁と銀行側からすれば、個人投資家に融資を行うこと自体を考える節目になる可能性があります。

自分の物件はインカムが取れるから安全だとお考えの方はそれはそれで1つの考えだと思います。

ただ、二重売契を行っていなくても絶対にご自身の融資が引き上げられることがないのか、その点に思いを巡らせてください。みなまでは申しません。

 

長く専業投資家をされている方は、ご自身の立ち位置を今一度ご確認された方がよいでしょう。

以前ワタクシが申し上げましたが、事業とは「人」「財務」「知識・経験」と考えております。事業の利益や手元CFなどは時代の変化により数年で吹き飛ぶというのがワタクシの経験です。健全な財務となっているかこれを機会にご確認ください。

 

サラリーマン投資家の方はセミリタイアなどしないでください。

ワタクシは本日時点では今もなおサラリーマンは不動産投資を行った方がいいと思います。それはインフレリスクヘッジと資産運用のためです。将来的に不動産投資ができなくなったとしても、30年後に今を振り返ってみて「数千万円儲けられてあの頃の時代は良かったね」、と昔話ができればそれでよいと思います。

 

直近でセミリタイアされた方はご自身の考えに傲慢が一切ないかを今一度見つめ直してください。

セミリタイアした時に銀行が今後も融資するなどと言う発言はリップサービスです。銀行は今日融資すると言っても明日に融資しなくなるものです。含み益や積算評価といった架空の資産など無力です。もしご自身が麻薬に犯されているという自覚があれば、解毒することをお奨めします。

 

ここに書いたことはあくまでも投資侍個人の見解です。

 

何を思うかはそれぞれと思いますが、1コラムニストの考えとして皆様が何か気づかれる点がございましたら幸いでございます。

 

投資侍より