夜逃げ業者

先日、夜逃げした業者のことに少し触れましたが

プロ同士でも連絡が取れないことがあることに驚かされます。

しかも、所有物件を放置したまま夜逃げするとは、いったいどういう事情があったのでしょうか?

その物件の一部が鶯谷駅前にあるといい、

すでに抵当権者に差し押さえされていると報じられています。

わたしが体験した恐怖とは、

 

さて、わたしが実際に経験したなかでもっとも恐ろしかったことは、

サブリース業者と突然連絡が取れなくなったときです。その恐怖は筆舌に尽くしがたく思います。

契約後すぐにサブリースを一方的に打ち切られ、その業者の社員も四散。自主管理しようとも、肝心の入居者の情報さえ手元にないのです。そんな状況でした。

ひとつの記録として、

そんな状況の一部を記しておきたいと思います。

(以下文体が変わります。)

 

わたしは追い込まれていた。サブリースの入金がないとローンが支払えない。

携帯を取り出すのももどかしく担当者の電話番号を押す。呼び出し音が空しく鳴り続けるが誰も出ない。何度も何度もしつこく掛けるが、空しく響くのは呼び出し音だけ。

日頃繋がることが普通だと思っているから、一旦繋がらないとなると謂れなき恐怖が襲ってくる。

すかさず業者(会社)の固定電話すると、今度は誰かが出た。

「もしもし、・・・大友です。」わたしの話をどうか聞いてほしい。悲痛な叫びだ。

でも事務の女性は、「わたしは留守番。なんにもわからない。社長とも連絡が取れない。」の一点張り。伝わらないであろうが、ともかく伝言は残す。果せるかな、この叫び届くのか。

しかし、何時間経過しても折り返しの電話はない。

いやあるはずもない。相手にとって、わたしなどどうでもよい存在であろう。

ジリジリと焦燥感だけが募る。それでも諦めきれない。諦めたら一貫の終わりのような気がする。

ひっきりなしに、誰彼かに電話する。そう怖いからだ。落ち着いていられない。

この恐怖から逃れたい。誰か、話を聞いてくれる人間はいないのか!

連絡が取れない恐怖で、これほどまでに極限状態になるのか。

 

偶然にも、執行役員のひとりと電話が繋がる。でもまるで他人事のようだ。

「すべて社長しか知らない。わたしも困っている。」

この執行役員ではまったく役に立たない。やはり社長を捕まえるしかない。

思考回路が停止しそうになる。

 

居ても立っても居られない。

 

そのうち、社長の携帯電話番号が変わったことを知る。

見かねたある担当者がそっと教えてくれた。

「会社にはもう誰もいない。私も辞める。」

か細い手綱が完全に切れてしまう。もはやどうしようもない。

慌てて、入居者資料だけは確保する。会社がなくなると入手も困難になる。

そんなとき銀行から、ローンの支払い通知がこともなげに舞い込む。

「サブリースを組むとき、銀行はなにか知っていたのではないだろうか?」

そんな疑心暗鬼が頭をもたげる。

しかし、銀行は取り合ってくれるはずもない。そんなこと知るかと言いたげだ。

なぜこんな苦しみを背負わなければならないのか!?

自分の浅はかさを呪う。

ともかく、ともかく居ても立っても居られない。

次に進むには、何から始めたらいいのか?思考がゆっくりと回り始める。

連絡が取れない恐怖・・・わたしは骨の髄まで味わった。

 

 

あとがき

今年になって、偶然にもこの業者の担当者と思わぬ処で遭遇する。それは書店である。書店にならぶ不動産投資指南書に彼(著作者)の名前を発見した。パラパラとめくると、著作者の信条の欄に「顧客とのコミュニケーションを一番大切にしている。」と書いていた。彼とは真っ先に連絡が取れなくなってしまっていた。わたしはやりきれない思いでその本を手に取った。今となっては、なんとたくましいことかと苦笑いするしかなかった。

わたしは、一瞬迷ったが、

その書籍にあった会社に電話してみた。

呼び出し音がなる。しかし、

なぜか・・・、いや当然に繋がることはなかった。

 

ありがとうございました。(参考になりますかどうか。あくまでわたしの記録です。)

大友カツトシ