こんにちは、元資産税課職員KSです。

先日の北海道地震で被災された皆様、そしてご遺族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

私はかつて熊本地震の際に災害派遣で熊本県の某自治体へ行き、罹災証明書発行の元となる被害認定調査を行ったことがあります。

皆様の役に立つ機会があって欲しくはないですが、罹災証明書について自治体職員として経験したことを踏まえて罹災証明書に関することを書きます。

公的支援の入口である罹災証明書

ニュースでもよく出てくる言葉でもありますし概要は知っているかもしれませんが、念のためそもそも罹災証明書とは何かをまずは紹介します。

災害が発生した場合に備えて真っ先に思いつくのは、私的に用意しておく火災保険や地震保険といった損害保険だと思います。

公的に受けられる各種支援制度も被災者の方にとっては少ないかもしれないながらも存在し、公的支援の入口となるのが罹災証明書です。
災害による公的支援は罹災証明書における被害の程度によって何が受けられるのかが変わってきます。

罹災証明書は基本的には「世帯情報」、「家屋情報」、「被害情報」の3つによって構成され、どの世帯が、どの家屋に対して、どのような被害を受けたかの証明書となります。

「世帯」とわざわざ書きましたが、災害対策基本法においては「住家の被害」と定められていて居住者に対して発行されるのが原則ではあるのですが、実務上は熊本地震の時なども住家ではない事務所などの家屋に対しても証明書は発行されましたし、居住者ではない所有者に対しても証明書の発行されました

もらう機会がない方がうれしいですが、賃貸経営をしている皆様は

・自宅で罹災証明書を発行する場合
・所有する賃貸用アパート等で罹災証明書を発行する場合

の両方が可能性としてはあります。

被害の程度と公的支援

義援金、生活再建支援金、仮設住宅、融資、公的な支払など各種支払の減免や猶予、などなど、様々な生活再建のための支援はあるのですが、支援を受けるためには罹災証明書が必要なものが多く、罹災証明書における被害の程度によって受けられる支援内容が異なってきます

皆様も聞いたことがあるかもしれませんが、

全壊
大規模半壊
半壊
一部損壊

と被害程度が区分けされていて、上にいくほど手厚い支援が受けられ、仮設住宅に入れる優先順位なども変わってきます。

そのため被災者の方は罹災証明書としてはより高い程度での被害を認めてもらいたいという気持ちになるはずです。

ちなみに本来の目的とは異なりますが保険請求に罹災証明書を用いる場合もあり、某損害保険では台風などの風水害で雨樋が壊れた場合とかでも、罹災証明書の提出を求めてくるというところもあります。

誰がどうやって罹災証明書を発行するか

そもそも罹災証明書を発行するのは誰かというとこれも災害対策基本法に定められており、

「市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の被災者から申請があったときは、遅滞なく、住家の被害その他当該市町村長が定める種類の被害の状況を調査し、当該災害による被害の程度を証明する書面(次項において「罹災証明書」という。)を交付しなければならない。」

とあります。

市町村長が交付するということなので、要するに地方自治体の職員が市町村長名で証明書を発行するということです。
また、遅滞なく、調査し、交付しなければならない、ということです。

「遅滞なく」というのはどれぐらいの期間なのかが難しいところですが、災害発生後1か月以内と考えている自治体が多く、その期間は被災者の方にとっては遅すぎ、自治体にとっては人員を多く確保できない限りは極めて難しい数字となります。。。

そもそも調査が可能な下地のある職員を集めるのも難しいですし(できれば家屋に関する知識など)、実際の調査前に調査員の研修を行って調査基準を統一させていくのも人員が増えれば増えるほど大変になっていきます。

被害認定調査

災害対策基本法にある「被害の状況を調査」というのは、具体的な被害認定基準運用指針を内閣府が定めており、調べようと思えばネットで簡単に見つかります。

重要なのは経済的な損失が基準とされていることで、経済的な損害割合によって、

全壊:50%以上
大規模半壊:40%以上50%未満
半壊:20%以上40%未満

とされています(一部損壊は半壊に満たない被害)。

この損害のパーセンテージを点数に置き換えた調査手法が存在し、調査を行う人はそれにそって採点することで被害程度が決まります。

一次調査と二次調査

簡単にでいいですが、想像してみてください。
例えば熊本地震のような大規模災害が発生した時に合計でどれぐらい調査に時間がかかるでしょうか?

大規模災害となると申請を元に被害認定調査をするよりも、全棟調査をローラー作戦で行っていくことになります。
例えば計算を簡単にするために10万棟の調査が必要な自治体があったとしましょう。

調査は最低でも2人一組で行い、3人一組で行っていた場合もありました。
調査に出かけるまでには準備があり、移動時間もあり、そもそも明るいうちじゃないと調査は難しいですが調査が終わった後もデータ整理などがあるので、実質的に1日の調査時間は6時間とします。

仮に1件あたり1時間かかって3人一組で調査していたとすると

100,000(棟)÷6(1日あたりの調査件数)×3(人)=50,000(人/日)

となり、職員を100人動員できていたとしても500日かかります。
これが1件10分、つまりは1日あたり36件調査できたとすると、

100,000(棟)÷36(1日あたりの調査件数)×3(人)=8,333(人/日)

となり、100人動員できても83日かかります。

自分が調査される側だったら「たった10分の調査で何がわかるんだ」と思うかもしれませんし、地元の職員側だったら自分自身も被災者だし、本来の業務にプラスして発生した業務だしとで、「遅滞なく調査」というのがいかに難しいかがわかるかと思います。

そのため、まずは調査で数をさばくために作られた手法が一次調査と二次調査にわけるという手法で、

・外観のみでさっと評価して被害程度を効率的に調査するのが一次調査
・一次調査の内容に納得がいかなかった方の申請ベースで行い、室内も含めてじっくり調査するのが二次調査

という違いがあります。

だいたいの感覚で、一次調査は一見して全壊とわかるものを除けば1件あたり10分ぐらいかかり、二次調査は1時間ぐらいかかってしまいました。

 

この時点で結構長くなってしまったので、明日以降に続きます。