こんにちは、元資産税課職員KSです。

前回に引き続き、皆様の役に立たないことを切に願う知識である、罹災証明書に関係することを書いていきます。
今回は罹災証明書の被害程度を決める被害認定調査、特に一次調査をどうやって行っているかが中心です。

なお、災害が地震なのか水害なのかなどによって異なってくる部分がありますが、基本となる考え方は同じなので地震を例にして説明していきます。
さらに対象の建物が木造なのか非木造なのかによっても変わってきますが、こちらも基本となる考え方は同じなので木造を例に説明していきます。

簡単に説明しようとするためとはいえ、いろいろと条件をつけてしまってすみません。

外観による一次調査の概要

罹災証明書においては経済的被害の割合を点数化して(例えば50%の被害なら50点となるよう)、被害程度を判定します。

調査は2段階存在し、

・外観のみでさっと評価して被害程度を効率的に調査するのが一次調査
・一次調査の内容に納得がいかなかった方の申請ベースで行い、室内も含めて詳細な調査をするのが二次調査

という違いがあります。

そして点数というのは一見して全壊にならない場合は部位ごとに構成点数が決まっていて、一次調査であれば

屋根:15%、外壁:75%、基礎:10%

として判定します。

しかしながら、そもそも外観によって調査することで可能な限り調査時間を短縮させたい調査方法なので、部位による判定の前にいくつか調査をすぐに終了できないかのチェックをします。
どういうことかというと、それがわかった時点で判定結果は全壊とするものがいくつかあり、

・一見して住家全部が倒壊
・一見して住家の一部の階が全部倒壊
・一見して住家全部が流出又はずり落ち
・地盤の液状化等により基礎のいずれかの辺が全部破壊かつ基礎直下の地盤が流出・陥没
・地盤面の亀裂が住家直下を縦断・横断

のいずれかに該当した場合はそこで調査終了となり、該当しなかった場合のみ部位による点数付けをします

また、傾斜を測定して1/20以上の傾きだと全壊となりますが、1/60 以上 1/20 未満の場合は全壊にはならないものの傾斜ありということで部位による判定の際に加算がされますし、基礎の損傷率が75%以上の場合でも全壊となってその時点で調査が終了となります。

一次調査における部位による判定

一次調査では屋根、外壁、基礎の部位それぞれの点数付をして判定を行います。
「屋根:15%、外壁:75%、基礎:10%」と書きましたが、それぞれの部位の損傷割合に対して、構成比をかけることで点数をつけます。

判定は経済的な損失が基準とされており、経済的な損害割合によって、

全壊:50%以上
大規模半壊:40%以上50%未満
半壊:20%以上40%未満

とされていて、

損傷率=対処部位の損傷面積÷対象部位の全面積

として、損傷率と構成比をかけることで点数が求まります。
例えば損傷率が屋根75%、外壁10%、基礎被害なしとなった場合は、

屋根の構成比15点×屋根の損傷率75%+外壁の構成比75点×外壁の損傷率10%=18.75点

ということで半壊に満たないということで一部損壊となります。
仮に屋根と壁の損傷率が入れ替わって屋根10%、外壁75%だった場合は

屋根の構成比15点×屋根の損傷率10%+外壁の構成比75点×外壁の損傷率75%=56.4点

ということで全壊と判定されます。
このように一次調査だと外壁の構成比が高いため、例えば瓦は重みによって派手に落ちているけど半壊にもみたないとか、屋根はあまり損傷はないけど外壁の損傷が多いため半壊となるといった差がよく現れます。

正直なところ、私は固定資産税の家屋調査を通して新築時の工事請負契約書を読み慣れていたので、

「経済的な価値としてこの判定の仕方でいいのだろうか?施工にお金がかかっている部分は目に見える仕上の部分とは違うような気がするけど・・・」

と思ってしまいましたが、外壁が損傷していれば主体構造も損傷しているはずだし、簡単に見た目で判定するためにはしょうがないんだと納得もしました。

応急危険度判定との違い

罹災証明書とよく混同されてしまうものとして応急危険度判定というものがあります。
これは罹災証明書と判定基準が違うために、罹災証明書の発行時に問題が発生することがあります。

それぞれに考え方に違いがあり、

応急危険度判定:二次被害を阻止するためのもので、余震などで家屋の崩壊や部材の落下などの危険が及ばないかという、ただちに危険かを基準に判定

罹災証明書:家屋の経済的な損失を基準に判定

という、そもそもの基準が違うことによる誤解が発生します。
応急危険度判定は危険性がないかを判定することを即座に実施され、

「調査済」(緑)、「要注意」(黄)、「危険」(赤)

の判定がはられていきます。

被災者の方は「危険」、「要注意」がはられているから罹災証明書は全壊、せめて半壊なんだろうと思って証明書を発行すると、罹災証明書の被害認定調査で調査対象に含まれていない家屋外の部分が危険な状態になっていたり、瓦が落ちて危険ではあったが点数としては半壊にも満たない状態だったということが発生してしまいます。

証明書を発行する前の被害認定調査の段階でもこの説明には非常に苦労しました。

一次調査の流れの例

私が災害派遣で経験したのは全棟をローラーで調査していくという方法だったので、今日はこの地域をという感じで朝に準備を行います。

大規模災害で膨大なデータを扱うとなると当然システム化して作業しないと無理なのでそういったシステムがあり、システムから発行した調査票にそって、調査指針にそった調査を行っていくこととなります。

一件ごとの大雑把な流れの例としては以下のようになります。

1.居住者の方に調査を行わせていただくという挨拶と説明をする(留守の場合でも調査は行わせてもらう)。

2.調査票に表示された管理上の調査番号と地図の点をデジカメでとって今からこの家を調査すると残した上で、家屋の全体像が映るように写真をとり、「一見して全壊」にあたらないか判定する。一見して全壊だったらそこで調査終了

3.基礎の状態で全壊になるか判定して該当しなかったら家屋の傾斜を「下げ振り」という道具を使って測定する。基礎に大幅な損傷、基準以上の傾斜があれば全壊となり調査終了

4.部位による判定のために、家屋の被害状況を写真に残し、各部位の損傷割合がどれぐらいかを判定し、その結果を調査票に書き込んでいく。

5.調査票の結果を写真に残し、デジカメのデータ内で調査はここで終わったと残す。そして調査番号を記載した紙を家屋の所有者に渡すまたは目立つ場所に貼っておき、罹災証明書の発行はこの番号を元に行うと説明する。

このようなことを1棟あたり10分ぐらいで行っていくとされていましたが、被災者の方への説明や移動時間を考えると1日の調査件数はあまり多くはできず、一見して全壊が多い地域でない限りはせいぜい30件前後ぐらいでした。

そして調査が終わって拠点に戻っても、デジカメのデータをチェックして所定の場所に移し、調査票のチェックを行ったりと、作業が残っていました。

一次調査を終えて

熊本地震での経験として、単純に自分の都合だけを考えてしまうと、暑い中で一日中立ちっぱなし、歩きっぱなしで、被災者の方たちからは早く罹災証明書を発行しろと怒られてつらいという面はたしかにありました。
ついでに宿泊地は遠くにしか残ってなく(マスコミが真っ先に宿も物資も押さえたんじゃないかとか噂が流れたり、マスコミには他にも怒りを覚えた場面はありました・・・)、たしかバスで峠をいくつか超えて片道1時間半ぐらいかかっていました。

しかしながらもっとつらいのは被災者の方たちで、過酷な環境で過ごし続けていたはずです。

そんななかで「遠いところからわざわざ来てくれてありがとう」と被災者の方たちから感謝の言葉をもらったことは数えきれないほどありましたし、現地の自身も被災者でありながらボランティアとして手伝いをしてくれた方との交流ができたりと、自分の公務員生活の中で最もやりがいのある仕事だったかもしれません。

同僚の中には、帰った後に改めて交流のできたボランティアの人のところに挨拶にいった人もいました。

 

更に次回に続きまして、次回は二次調査についてがメインの予定です。