こんにちは、元資産税課職員KSです。

不動産を持っている側だと火災保険をいかに活用できないかと考え、保険会社側としてはいかに保険料を払わないですむかと考え、当たり前ですが火災保険は立場の違いによって考え方は正反対になるかと思います。

今回はそこに火災保険申請人が関与していた上で、さらに地方自治体が罹災証明書発行を通して巻き込まれたことについて紹介します。
前回で罹災証明書シリーズは終了と宣言してしまいましたが、このネタも保険に罹災証明書が絡んできます。

地主の婿養子大家さんの過去の投稿を読んでいたら、2018年2月20日の「火災保険適用術」と2018年4月29日の「火災保険申請人VS火災保険鑑定人結果報告」という投稿にインスパイアされました。

火災保険の適用に罹災証明書は必要か?

保険の申請をしたら申請を元に見積や写真などから、請求内容の妥当性を保険会社自らが判定するはずで、罹災証明書は関係ないはずと罹災証明書について知った時は思っていました。
そもそも罹災証明書は前回までの4回のコラムに書いてきたように、公的支援の入口というのが本来の用途ですから。

私自身としても過去に台風でアパートにちょっとした被害が出て火災保険の保険金支払いの申請をしたら無事支払われましたが、写真などのエビデンスは提出したものの罹災証明書なんか提出しませんでした。
長いこと賃貸経営を行っていると何らかの理由で火災保険の保険金支払いの申請をしたことがある人は多いと思いますが、罹災証明書が必要だと言われたことがある人は少ないと勝手に予想しています。

また、地震保険の話になってはしまいますが、例えば熊本地震の際はいろんな保険会社の連名で

「保険請求には、地方自治体から交付される罹災証明書の提出は不要です。」

と声明を出している文書がネットでも見つかります。

じゃあ保険の申請に罹災証明書は関係ないのかといいきれるかというとそういうわけではなく、某法人の保険だと保険金支払い請求に罹災証明書の提出を求めてくるのです。

そのため某保険に入っている人の家屋が、台風で雨樋が壊れたなどという場合に、罹災証明書を交付して欲しいという問い合わせがたまに役所にきました。

罹災証明書は台風などでも交付してくれる?

役所としては、罹災した災害がはっきりしていて、その災害で被害を受けたということが調査で確認できれば、地震だろうと台風だろうと災害の種類に応じた罹災証明書を発行します。

どこの部署が罹災証明書の業務を担当しているかは自治体ごとに異なっていて、普段は○○課、大規模災害が発生した時は○○課みたいな取り決めが防災計画などで定められています。

とはいってもそんな役所の都合など理解している必要はなく、この件に限らず役所に用事があれば役所の代表番号に問い合わせて総合受付に事情を話せば適切な部署につないでくれるはずです。

電話をかけて担当につながった後に罹災証明書を発行して欲しいと伝えると、対象の家屋などの情報が聞かれ、いつの災害でどんな状況かを聞かれた上で現地調査の日程調整となるはずです。

火災保険申請人とは

ここで地主の婿養子大家さんのコラムを引用させていただくと、

 

 そもそも、申請人の仕事は本来、

 戸建にお住まいの一般家庭の方へアプローチし、

 火災保険申請代行をし、支払われた火災保険金全額を使って

 割高な金額で外壁塗装や屋根の葺き替え工事を請け負うことです。

 

ということです。
これを読んだ時、どこでも似たような業者っているんだなと思いました。

私が働いていた自治体の地域でもそういう人が活動していたようで、某保険じゃなければ罹災証明書なんか関係してこなかったのかとは思いますが、某保険が関わった時は役所が絡むことになっていました。

その方は罹災証明書を発行させる方法もアドバイスしていると思われ、似たような説明の仕方、似たような証拠写真の撮り方をしてきた申請が多発した時期がありました。
場合によっては所有者は立ち会わず代理人が立ち会うということで、同じ人が何度も別の家に現れるというありさまでした。

そしてそろって似たような症状の被害程度も一部損壊で、経年劣化が原因で他のタイミングだったかもしれない怪しいものなのになんで「○○年○○月○○日の大雪で壊れた」と自信を持って日にちまで即座に言い切れるんだと思えるようなマニュアル化がされていました。

火災保険申請人VS地方自治体職員

私が勤めていた地方自治体は、資産税課の家屋係が通常時に罹災証明書の発行を担当していました(大規模災害時は担当部署が増えるとされていました)。

とはいっても普段時間をかけていた仕事は固定資産の評価で罹災証明は片手間扱いだったので、たしか4年前の関東に降った大雪に対する罹災証明書の申請が多発した去年に、申請してくる地域も偏りすぎているし(その地区担当の仕事量的にも)どうにかした方がいいんじゃないかと問題になりました。

私が感じた役所側の思惑はこんな感じです。

建て前

そもそも保険料を払うか払わないかの問題は利益に直結する問題なので、保険料を支払う自分たちで調査するのが本来の姿なんじゃないか。

本音

役所に調査の仕事を押し付け、罹災証明書が交付されているからと責任も押し付けるのもいかがなもんか。
余計な仕事を増やすな!

調査に時間をとられるのは嫌だし、罹災証明書では「一部損壊」などという被害程度しか載っていなくて保険申請にどう使われているかわからないのも、責任をとるのが嫌いな公務員にとっても悪用されていたら嫌だというのがお役所の職員の考え方です。

私もその申請多発地域の担当ではないながらもこの件に巻き込まれ、いろいろ調べ、対策を話し合った結果、毎回その災害だと言ってくる大雪が発生して3年が過ぎるのでそれ以後はその大雪に対しての罹災証明書は発行しないとその業者に対して宣言することになりました。

落としどころ

一応保険にも法律で定められた時効があるようで、保険法第九十五条によって

「保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、三年間行わないときは、時効によって消滅する。」

とありました。
とはいっても、これとは別に保険会社それぞれで請求期限が定められているようではありましたが、一つの落としどころに思えました。

当時は火災保険申請人というものは知らず、地域のリフォーム会社が保険を利用した工事で売り上げを伸ばすスキームを編み出したんじゃないかと思っていました(実際そうなのかもしれません)。
だから三年間の時効はその保険で適用されているのかはわからないが、一般的な会社の期末である3月に間に合うよう、追い込みの営業をかけているんじゃないかと予想していました。
そのため、

「3年間の期限まではあの大雪に対しては証明書の発行できますので(期末の追い込みには間に合うかと)・・・」

という含んだ言い方も落としどころの一つにもなると思えました。

そしてそれらの落としどころは察してくださいと言外に含めながらも、

「長時間経っていくことでいつの災害に対しての被害と特定して証明書を発行するのが難しい」

というのが建前でした。

そんなネタを用意して火災保険申請人に対し、交渉ではなく一方的にこうなりましたと伝えたところ、意外にすんなりとおさまりました。

そもそも罹災証明書はいつまで発行できるのか

これについては答えがでませんでした。

まず罹災証明書を定義している災害対策基本法には交付期限は書いてありませんでした。
じゃあ他の自治体の事例はどうかと調べたところ、強気な期限設定をしている自治体もあれば、その災害による被害が特定さえできれば期限は設けていないというところもありました。

私の勤めていたところでは、災害発生から時間が経ちすぎていたらその災害による被害だと認定するのは調査したところで難しいという考え方もできるので、正式に期限設定していこうという流れができたのですが、別の部署から待ったがかかって期限設定はできませんでした。
そこらへんは役所のめんどくさい一面なのですが、期限設定推進派にも反対派にもいろいろと複雑な理由というか思惑があり、詳細は書きません。

結局、どの地方自治体でも、いつの災害で、どういう状況だったという証拠さえ提示できれば罹災証明書は発行できる可能性は高いです。

ただし罹災証明書を発行したからといって保険金が支払いに有効かどうかというのは保険会社によるのでご注意を。