1.越境の発覚は契約間近が多い?
こんにちは。山本です。
第2回目のコラム、ご覧いただき、ありがとうございます。

さて、皆さんは「越境」によって物件の購入を迷われたり、売却時に値下げせざるを得なかった経験はございませんか?

今回は越境の解決について、ご紹介したいと思います。

前回(第1回目)のコラムで、私は建物をあまり投資の対象にはしていないと申しました。

よって、私が越境について抱える問題は、隣接地からの越境物(「被越境物」と言います)がほとんどですが、一般に、売主様の多くは売却の意思が固まってから隣地との境界確定を行うため、水面下で取引されるような優良物件は越境の発覚も売買契約の寸前であることが珍しくありません。

 

2.越境解決のカギは物件の購入前に動くこと
ところで、皆さんは越境が発覚した際、どのように処理なされますか?

高い利回りゆえに問題を先延ばしにする投資家様もいらっしゃる一方、後々のトラブルを考慮し、物件の購入を躊躇する投資家様もいらっしゃることと思います。

さて、私ですが、私は自ら覚書を作成し、売主様と隣地とでそれを締結してもらうことを購入の条件にします
また、覚書の内容で隣地との協議が必要な際は、自らが協議にあたっても良い旨、売主様にお伝えします
つまり、手間を要し、物件の価値を下げかねない越境問題を代理で解決することで、売主様にはメリットのみを提供し、一方で、所有権譲受の際には、運用期間ならびに売却時において最もトラブルが発生しない内容で、隣地との約束を締結できる絶好の機会を先に頂戴しようというのが私のねらいです。

 

3.覚書の書き方とテクニック
(1)書き方
ところで「法律の専門家でもないのに、どのように覚書を書けば良いのか?」という疑問も出てくることと思います。
 下記をご参照ください。

 


覚書

甲〇〇〇〇と乙●●●●は互いに所有する末尾記載の土地について、次の通り覚書を締結した。

  1. 下記(1)から(2)までに示す現況構造物及びその付属物等(以下「本件越境物」という。)が越境していたとしてもお互いに疑義を申し立てず、今後、本件越境物について、越境の者が修繕、取り替え、撤去等の工事等を行う場合、または、本件越境物を使用しないこととなった場合は、自己の負担により越境を解消し、隣接地を侵さないように施工する。
    但し、本件越境物のほかに構造物及びその他付属物等が越境していた場合にはこの限りではなく、越境解消のため甲乙ともに協議のうえ解決するものとする。
    (1)甲所有の△△△ 1式(画像1の①に示すもの)
    (2)乙所有の▲▲▲ 1式(画像1の②に示すもの)

  2. 本件越境物につき、前項の工事等にかかわらず、被越境の者が越境の解消を望む場合は、その所有者に申し入れ、被越境の者の負担により越境を解消することができる。

以上を締結した証として、本書面2通を作成し、甲乙署名(記名)捺印の上、各自その1通を保有する。
また各々、土地を譲渡するときは譲受人に対して本覚書を継承させるものとする。

平成□□年□□月□□日
 甲  住所 □□□□□□□□
    氏名 〇〇〇〇  ㊞

 乙  住所 □□□□□□□□
    氏名 ●●●●  ㊞

末尾
 不動産の表示
  甲の土地              甲の建物
   所在:□□□□□□□□       所在:□□□□□□□□
   地番:□□番□□          家屋番号:□□番□□
   地目:□□□            種類:□□□
   地積:□□.□□㎡(公簿)     構造:□□
                     床面積:1階 □□.□□㎡
                         2階 □□.□□㎡(公簿)
  乙の土地              乙の建物
   所在:□□□□□□□□       所在:□□□□□□□□
   地番:□□番□□          家屋番号:□□番□□
   地目:□□□            種類:□□□
   地積:□□.□□㎡(公簿)     構造:□□
                     床面積:1階 □□.□□㎡
                         2階 □□.□□㎡(公簿)

画像1(甲及び乙所有の建築物,甲及び乙地の北側より撮影)
  

以上

 

 

いかがでしょうか?

これは、私が実際に弁護士さんに作ってもらったものを公開用に修正したものです。
そしてこの雛形は、越境物については現状維持のみを認め、それ以外の場合は越境の解消を義務付けた内容です。
従前はお互いにグレーとしてきたことを一度白黒明確にし、将来は、お互いがお互いを侵すことのない良好な関係を築きましょうとする趣旨です。

越境の即時解消を強く望むのであれば、このような覚書は不要であり、相手方への通告と、話がまとまらない場合には裁判による決着しか方法はないと思います。
しかし、隣地との良好な関係を築きながら、一方で、将来のトラブルの芽は今のうちに処理しておこうとするには非常に役立つ取り決めであると私は考えます。


(2)テクニック

さて、次にテクニック的なことをご紹介いたします。

まず、越境物が多い場合には、雛型の「1」の内容に(3)(4)・・・と項目を追加していけば問題ありません。
ただし、越境の可能性があるもの全てを記すことは大変危険で、これは重要なポイントとお考えください。
つまり、覚書に記されたものは、相手側が現状維持を行う限りにおいては、永久的にその越境を認めるか、または、こちらの出費で越境を解決するしか方法がないということです。
一方で、現在は自己の所有であるが、将来的には責任を回避したい越境物があるならば、その記載を敢えて避けることも戦略です。

例えば、上記の左図のように、水道管が相手の敷地内(地中)に越境していたとします。
しかし、近い将来、これを新たなものに取り換え、その際、自己の敷地内で配管を完結できるならば、この不要となった水道管(右図のオレンジ色で示した線)は、越境物として覚書に明記することはせずに、工事の完了後、その所有を不明にし、相手側の敷地からの撤去の責任を回避してしまうことも可能です。
逆に言えば、このように所有権を不明にできる被越境物については、現状維持を敢えて認めても、覚書にしっかりと明記し、相手側の責任回避を予防することも戦略の1つです。

更に、越境物については、文言だけでその対象を特定化することは難しく、後々「何を指しているのかが不明」というトラブルにも発展しかねません。
ゆえに、越境物は、それと周囲との位置関係が分かる程度の遠方より撮影し、その画像を覚書に掲載の上、越境箇所を枠線で囲み、符号で示すことが特定化には非常に重要です。
先の雛形では、「1」で言及する越境物につき、その文言の最後に「(画像1の①に示すもの)」と付記し、それを覚書の末尾に示す画像とリンクさせたことで越境物の確実な特定化が図られています。

また、画像の明示は、その画像と将来の状況とに相違が見受けられるならば、それを証拠に工事等が行われたか否かを相手側に強く確認し、越境の解消を請求できる大切な資料にもなります。

 

4.「遠くの親戚より近くの他人」が不動産投資を良好にする
以上が、越境および被越境が発生している物件を購入する際に、私が実践している越境解決の方法です。

遠くの親戚より近くの他人」という言葉があります。
本来、覚書は、作ろうと思えば支配的なもの、攻撃的なものも作成できます。
しかし、それでは隣地との合意は一向に成立せず、むしろ、こちらが困った際にも一瞬たりとも越境を許されないような関係になるのではないでしょうか。
隣人とはできる限り仲良くすることが、不動産投資の収益や売却にも良い影響をもたらすと私は信じており、ゆえに、争う姿勢はできる限り排除し、現状の維持は認め、将来のトラブルになりかねない芽だけを今のうちにお互いに解決していこうとする姿勢が大切で、今回ご紹介した雛形は、そうした思いを込めた内容となっております。

最後に、先の雛形を利用しても、作成した覚書に不安が残るという意見もあるかと思います。
その際は弁護士に相談してみてください。
「結局、そこに行きつくのか」と思われるかも知れませんが、今回ご紹介した内容で覚書を作成すれば、書面は既にできあがっております。
よって、30分間5000円の費用で十分にチェックいただけるものと思います。
また、地域によっては無料の弁護士相談が開催されている場所もありますので、最寄りの役所や弁護士会に確認されてみてください。

物件の運用と売却が最もうまくいくような覚書の締結に、この度のコラムがお役に立てば幸いです。