こんにちは、元資産税課職員KSです。

家屋の固定資産税評価額を決めるプロセスとして、建てるのに費用がいくらかかったかではなく使っている資材で決まるというのは以前に他のコラムでも言ってきましたが、今回はその具体的な評価手法の違いについて紹介したいと思います。

結論を先にいうと、評価手法は構造、地域、面積などによって変わります。

今回も中古を買うスタンスの人には建て替える時以外はあまり関係ない雑学的な話ですが、トリビアとして楽しんでいただけますと幸いです。

家屋の評価額の決め方

前回、前々回のおさらいになりますが、固定資産税における家屋の評価額の決め方は現状においては再建築価格方式という方法で評価をしています。

評価する家屋と同一のものを評価時点で再度建築するとした場合の建築費を求め、それに建築後の経過によって生じる減価率(経年減点補正率)を乗じて評価額を求める方法です。

その「再度建築する」というのが、資材を積算して再建築費を出すことなのですが、その方法も明確計算、不明確計算、比準評価とやり方が変わってきます。

ざっくりいうと、本来のやり方に近い順で、明確計算、不明確計算、比準評価という順番になり、評価の難易度が高い順としても明確計算、不明確計算、比準評価です。

明確計算とは

この評価方法が一番あるべきやり方なのですが、一番難しいです。

この手法は施工された資材量などが正確に積算できるだけの情報がそろった場合に使います。
自治体の実力によっては明確計算を行うノウハウを持っておらず、明確計算じゃないと評価がきつい物件などで市町村から都道府県に評価を依頼している場合もあります。

明確計算では建築するのに使った資材を工事請負契約書や竣工図から、評価対象となる資材や設備を全て拾い出し、資材ごとの評点数(最終的に評点数の合計=再建築費となる)と使用量を乗じて評価額を算出していきます。

例えば主体構造として鉄筋(並)という評点に当てはあるものが何トン、基礎工事として根切り工事という評点に当てはまるものが何立米などなど、工事請負契約書の見積の中から全て拾い出していきます。
また設備関係だと電灯コンセント配線設備という評点のために、竣工図でよくE図面と言われるような部分から照明やコンセントの数をひたすら数えたりもします。

この説明だけだと難しさがまだよくわからないとは思いますが、評点として何があるのかとともに工事請負契約書などで書かれた資材が評点の何に相当するかをわかっている必要があり、慣れるまでは非常に難しいです。

評価の流れとして評価の主担当が評価を終えた後に検算者が確認して修正事項を指摘し、なおして検算をしてのサイクルをミスがなくなるまで続けていったりするのですが、最初の1年は評価しても検算者から直しの指摘をかなり受けることとなり、ちゃんと検算できる立場となれるのは2、3年目になるかと思います。
家屋の評価者として脂がのってくるのは3、4年目になってからでしょうか。

それなのに地方自治体の職員はたいてい5年などで異動が発生してしまいます・・・。

不明確計算とは

この評価方法は明確計算ができなかった場合の手法で、明確計算よりも簡単ですが少し本来的なやり方ではありません。

不明確計算では評価のために間取図面を書いて、天井・床・壁・外壁・屋根などなど、各種仕上が図面のどこに施工されているかや設備などの情報を埋めることで評価します。
各種施工量は施工された部分の床面積や天高(いわば床仕上から天井仕上までの高さ)・階高(いわば階と階の構造間の高さ)などを元にシステムが計算します。

ただし、図面を書けば例えばフローリングの施工量などは施工された部分の床面積からわかるにしても、どうしてもわかってこない部分が出てしまいます。
そこは単位面積あたりの標準量というのが決まっていて、床面積と標準量の関係で資材量が決まっていきます。

ちなみに私は明確計算の方が数をこなしていたので得意でしたが、家屋の評価者には不明確計算と比準評価しかやり方がわからないまま異動してしまう人は結構います。

比準評価とは

この評価手法が一番簡単で、一番現実からはかけ離れてしまう可能性があります。

この方法では、パターンごとにこのタイプの家屋であれば単位面積あたりどの資材が何平米分使われているかなどの設定を事前に行っておき、どのパターンに該当するかを決めたらパターンごとの単位施工量に床面積をかけて評価完了です。

評価自体は簡単ですが、パターンを作ってその標準量を定めていく作業が大変です。

物件ごとにどの評価手法が使われるのか

どの評価手法が使われていたのかは、家屋がある自治体と構造と面積などによってきます。

まず一番簡単な比準評価については、多くの自治体ではあまり使われていません。
とあるところでは何平米以下はすべてこの手法という大胆なことをやってますが、たくさんのパターンを作る作業も大変であり、多くの自治体はパターン化が簡単なもの(例えば附属家としての簡易的な物置)の評価に限られます。

明確計算と不明確計算の分かれめとしては、比準評価とはならず、明確計算ができない物件が不明確計算となります。

まずは構造が木造の家屋はほぼ不明確計算です。
なぜなら木造家屋で詳細な工事請負契約書をもらっているという場合は少なく、正確な資材量を見積もることがほぼできないからです。

そして非木造家屋の場合ですが、工事請負契約書などで正確な施工量がかかれていないと明確計算ができないです。
例えば「システム鉄骨一式」などと書かれていたら、具体的に鉄骨が何トンなのかと問い合わせ、わからないとか言われてしまったら明確計算はできません。
わからないってなんだよとは思いますが、外注先とかに問い合わせようともせずそう言い切っていると思えるような業者もいます。
それによって納税者たるお客様がどういう影響を受けるか考えているのかどうかは知りませんが・・・。

後は自治体の実力として、明確計算の評価ノウハウがない自治体は非木造家屋でも不明確計算でやりきってしまうか、都道府県などに評価を依頼します。
固定資産税評価額を決定するのは市町村長と決まっていますが、評価自体は市町村から依頼された都道府県が行っていることもあります。

ちなみに私は非木造担当で明確計算、不明確計算、比準評価の順番に評価件数が多かったと思うのですが、手間として延床面積が1,000平米を超えるような家屋であれば明確計算が体感的には効率的でした。
不明確計算は小さめの家屋であればシステムに図面を書いていくのもそんなに手間ではないですが、延床面積が10,000平米とかとなると図面を書くよりは壁クロス何平米などと工事請負契約書などから拾い出していった方が楽でした。

どの評価手法の評価額が高くなりがちか

どの評価手法も認められている手法なので、中古の場合はそれがわかったからといって評価額を安くできるということはありません。
しかし新築として評価を行う場合は、どうだったら明確計算の方が評価額が高くなりがちとかの条件が出てきます。

不明確計算だと標準量として延床面積に平均的な資材量を乗じてしまう部分があるので、整った四角い構造などの効率的な建て方ができていた場合は、明確計算で評価した方が評価額が安くなる可能性はあります。
逆に特殊な形をしたりとかで、使っている資材的に効率的ではないと思われるような建て方だと、不明確計算で評価した方が評価額が安くなる場合があります

私の勤めていた自治体の基準だと不明確計算の方が評価額が安くなりがちではありましたが、趣味で昼休みを何日も使って検証してみたところ、かなり効率的に建てられた物件であれば明確計算の方が安かったということもありました。

ちなみに少し前に友人が建て替えで賃貸マンションを新築した際に固定資産税の相談受けたので、その自治体についての基準をいろいろ確認するためにこういう条件で建てたら明確計算かと電話で問い合わせてみたら、明確計算になるだろうという回答をくれました。

ダメ元で自治体に質問してみると、教えてくれることは意外に多いです。