元気な高齢のベテラン大家Oさんが、年を取って欲しい物件に出会います。と言っても、年を取ったときには、若い時と異なり、頭も体も動かなくなり、身の回りの世話をする関係もあるので、家族の影響力もかなり大きくなって思うようにいかないんですね。今回は、そんなOさんのお話の続きです。

 

お気に入りの物件

 元気なOさんと一緒に見に行った物件の敷地は150坪ほど。確かに思っていたより広い。家の裏にまわってみると、家から数メートル離れたところが傾斜面がありました。その傾斜面の上側は竹やぶになっており、家の正面となる東側を除いて、その竹やぶがぐるりと家を囲んでいます。

 

 一方、家自体は築古と言っても構造がしっかりしており、水道、ガス、電気関連についても数年前に見直して修繕したそうです。その時にWさんが不便を感じていたため、お風呂も交換しているので、そこは安心できそうです。

 

 屋根や外壁については一部破損しているので、業者に見て見積もりを取ってもよさそうと思いながら、Wさんから自宅を売る経緯を確認して、予め聞いた話と食い違いがないことを確認しました。

 

 さらに、自宅関連の書類を見せてもらうことに。Wさんは書類のことはよく分からないと言うので、登記は後で取るとして、「税金関係の書面はありますか?」と尋ねて固定資産評価書を確認しました。

 

 固定資産評価額はOさんから聞いたその物件価格の3分の1程度。あれ?Oさんは本当に交渉したのか?これは、どうしたものかなと考えながらチェックをしていくと、敷地が分筆されており、その一つの地目に畑と記載しています。

 

 改めて、Oさんに「ここを購入したら、どうする気ですか。」と尋ねると、Oさんは「いつも通り賃貸に出すつもりだ。」と言います。「うーん、ここまで町から離れていると難しくないですか?」とさらに聞くと、Oさんから、「大丈夫。買ってから数年間はWさんが住む約束だし、空き地には太陽光発電を設置するつもりだから。」と言う、全然大丈夫じゃない答えが返ってきました。どうするのがいいんだろうと思いながら、それからしばらく、CさんやWさんとちょっと雑談をした後、帰ることにしました。

 

 雑談の途中に、CさんとWさんとの関係を確認してみると、Wさんも、Oさんと同様、お惣菜屋さんで出会ったそうです。WさんはCさんを頼りにしているようで、今回の件をすべてCさんに任せてると言います。Cさんって何してる人かな?じゃあ、取引はどう進めるのだろう?

 

不動産コンサルタント

 Cさんに、「Cさん、WさんはCさんに任せるって言ってますよね。つまり、Wさんの代理ってことですよね。宅建業者さんですか?」と尋ねると、「以前は不動産屋を経営したこともあって、今は時々、不動産コンサルタントをしている。」と言っています。「宅建業者の免許あります?」と聞くと、ちょっと表情が硬くなって「ない。」との回答。え~!それは宅建業法に違反・・・。

 

 ちなみに、宅地建物取引士の上位資格として公認不動産コンサルティングマスターは存在しますが、不動産コンサルタントと言う資格はありません(経営コンサルタントは、中小企業診断士がよく使ってます。)。全て自称です。

 

 こういった場合、その相手の知識や経験、経歴、保有資格や業者免許、専門系のネットワークなどは確認しときたいですね。少なくとも、資格や免許によって認められている範囲を逸脱した行為は法律上、問題があるので、後々、何かあった時に対応のとっかかりになります。

 

 でも、どうするのだろう?もし、Cさんがこういったことを続けてきたなら、自分の名前を出すのだろうか?もしかして委任状にコツが?

 

 Cさんに「もし宅地建物取引で代理をするなら、免許が要りますが?」と聞くと、Cさんが「大丈夫。委任状を作って、OさんがWさんに取引行為について進めればいい。好意だから、手数料もいらないよ。」。え?買主が売主に委任?無茶苦茶だな。これは、自分の手数料も含めて物件価格を設定してそう。

 

不動産の確認

 帰ってから、物件について調べると敷地は市街化調整区域内です。まあ調整区域内と言っても建て替えや増築をしなければ開発許可も不要ですが、街中とは勝手が違うことは明らか。さらに不安になりました。

 

 一応、調整区域でも市街化区域に接しているケースでは住宅も結構あったりして、価格との折り合いでそれなりに需要がありそうですが、この物件は調整区域のど真ん中で売却はかなり厳しそう。ましてや、相続ともなれば、家族は困りそうです。

 

 また、太陽光発電については、そもそも南側は竹やぶに囲まれて、どう見ても不向きな場所である上に、調整区域内なので開発許可、地目が畑であるため農業法の届け出も必要です。加えて、2m以上の傾斜面もあります。太陽光発電は止めるように伝えることを決めました。

 

家族の結論

 Oさんにはもちろん、Oさんの家族にもその旨(Cさんの素性の怪しさも含めて)を詳細に説明しました。Oさんはある程度分かっていたのか分かっていなかったのか、無表情。でも、Oさんの家族は違います。やっぱり問題があると大反対でした(やはり、Oさんも高齢なため、その判断に不安があるし、実際、Cさんは怪しいし、物件はいずれ負動産になりそう。普通、家族は反対します。)。

 

 その後、Oさんは言うには、「自分が買ったらWさんは街中にマンションを購入できるし、山が好きな自分にとってはそれ程高い買い物でもないし、Wさんもマンションが買える。Wさんに約束したんだよ。」とのこと。実はこれも家族(奥さん)にとってマイナスポイントでした。奥さんは感づいていたようです。

 

 結局、家族からの強烈なダメ出しをくらって、Oさんがその物件を購入することはありませんでした。Oさんはかなり未練たらたらでしたが。

 

 長年、頑張って堅実にやってきたベテランの大家さんにしたら、時には、損得抜きで、自分の好みで買いたい時もあってもおかしくないような。確かに、資産全体からすれば、微々たるもの。でも、今回は不味過ぎかなと思います。高齢ゆえの判断力の低下を疑われる結果に。もうちょっと、マシな物件ならよかったのに。自分が高齢になれば、もう子供も成長しています。長年連れ添った奥さんも、身の回りの世話を任せる関係で強力になっています。彼らに判断力を疑われたり、強固に反対され出したら・・・。

 

 人生はいろいろ、経済的に成功してもやはり難しいものだと思った一幕でした。

 

 次回もよろしくお願いします。