こんばんわ、サラリーマン大家のTAKAです。

昨日のつづきで本日も1物件1法人スキームについてコラムを書いていきたいと思います。本日は、金融機関側の視点からわかりやすく書ければと思っています。

1.期限の利益喪失条項(銀行取引約定書)

前回のコラムで指摘した「融資対象者が連帯保証債務を申告しない(または虚偽に申告)ということより、通常であれば融資審査が通らないケースで融資を通せてしまった」という問題点が具体的にどのような条項に抵触するのかを少し見ていきたいと思います。

法人融資の際に銀行-法人間で締結されることが多い銀行取引約定書の期限の利益喪失の条項を見ていきたいと思います。

なお、銀行取引約定書の条項は必ずしもすべての銀行で統一されたものではないので若干の違いはありえますが、ほとんど同じ条項が設けられています。

また、銀行取引約定書の締結を前提としないアパートローンの金銭消費貸借契約証書にも同様の条項が設けられていることが多いと認識しています。

★期限の利益喪失条項(請求喪失)

甲(債務者)について次の各号の事由が一つでも生じ、乙(銀行)が債権保全を必要とするに至った場合には、乙(銀行)からの請求により、甲(債務者)は乙(銀行)に対するいっさいの債務についての期限の利益を失い、ただちに債務を弁済するものとします

①乙(銀行)に対する債務の一部でも履行を遅延したとき

②担保の目的物について差押または競売手続の開始があったとき

③乙(銀行)との約定に違反したときまたは第14条(債務者の財務状況の調査)に基づく乙(銀行)への報告もしくは乙(銀行)へ提出する財務状況を示す書類に重大な虚偽の内容がある等の事由が生じたとき

④甲(債務者)の保証人が前項または本項の各号の一つでも該当したとき

⑤前各号のほか甲の債務の弁済に支障をきたす相当の事由が生じたとき

今回関連しうる部分に下線を引いています。

2.例えば①

金融機関から、法人の実質オーナーである連帯保証人に対して、他の保証債務の額を明確に確認しており、そのオーナーが正確に保証債務を申告しなかった場合を考えてみます。

この場合には、上記の④のとおり、保証人もこの条項を守る義務を負っており、保証人が③のとおり金融機関に虚偽の申告をしていることを考えると期限の利益の喪失事由に該当する可能性が高いといえます。

3.例えば②

金融機関から、法人の実質オーナーである連帯保証人に対して、明確に保証債務の額まで聞かれていない(聞かれていないので言わなかっただけ)という場合を考えてみます。

この場合には、③の虚偽申告があるとまでいうのは難しいように思われ、規定の適用範囲の抜け漏れを防ぐ役割のバスケット条項である⑤に該当する可能性があるとはいえる程度かなと思います。

4.期限の利益を喪失させる際のネック

例えば形式的にこの機変の利益の喪失条項に抵触した場合でも、「乙(銀行)が債権保全を必要とするに至った場合」という部分が、ネックとなる場合もありえるかと思われます。

仮に一部で虚偽の申告があったとしても、債務の弁済にまったく問題がない場合いは、形式的に条項に抵触したとしても、文字どおり適用できるかはかなり微妙だといえます。

5.これまでのまとめ

以上を踏まえると、期限の利益の喪失条項を金融機関が使えるかどうかはこう整理できるのではないでしょうか。

軸としては、規定に抵触したといいやすいか、と債権保全の必要性がどの程度あるかの2軸で考えるとわかりやすいかと思います。

①金融機関が連帯保証人に保証債務の有無を確認した+債権保全の必要はある

←使える可能性が大きい

②金融機関が連帯保証人に保証債務の有無を確認した+債権保全の必要があるか微妙

←使える可能性があるが、認められない可能性もある

③金融機関が連帯保証人に保証債務の有無を明確に確認していない+債権保全の必要がある

←使える可能性があるが、認められない可能性もある

④金融機関が連帯保証人に保証債務の有無を明確に確認していない+債権保全の必要があるか微妙

←使える余地はあるが、認められない可能性がそれなりにある

金融機関の立場からすれば、「今回問題となっている1物件1法人スキーム」の債務の回収を図ることを考えると、まず①から回収を図るかと思います。

そして②と③については、債権保全の必要がどれくらいあるか(債務額と未回収リスクの多寡)によって個別に対応を検討していくことになるかと思います。

そして④については場合によっては不問もありえるかと思いますが、状況(金融庁などの当局からの指摘の有無など)によると思われます。

6.り〇な銀行が「今回問題となっている1物件1法人スキーム」の解消に動いている理由

り〇な銀行がどの程度の本気度をもってやっているのかは定かではありませんが、例えばり〇な銀行では明確に融資の際に明確に保証人に保証債務の額の申告を求めており、①のケースの解消を図っているのであれば、それは銀行の通常営業の範囲であるといえます。

しかし、②~④のケースにまで、期限の利益の喪失を楯に、債務の回収を図っているとするのであれば、少し事情が異なっているのかなと思います。

例えば、金融庁などの当局からの指摘があったということがあれば、期限の利益喪失が認められずにトラブルとなるリスクを負ってまでやるということに理屈がつきそうであり、そういうことであれば、この動きは他の金融機関にも広がっていく可能性があります。

ただ、り〇な銀行は、過去にかづみさんのコラムで指摘のあったようなエグめのことをやる銀行であり、個人的にも債権回収のスタンスは厳しめの印象があるので、貸倒れリスクの顕在化を未然に防ぐために早めにリスクをつぶしにいっているだけという可能性もあるかと思います(債権回収は、早めに動けば動くほど有利に債権が回収できることが多いため)。

個人的には今のところは後者かなと思うとともに本当に②~④まで積極的につぶしにいっているのかは少し疑問です。

7.おわりに

なるべく平易に書こうとはしたもの、なかなか難しいのでその辺はご容赦いただければと。前に同様のテーマを取り上げた時よりは多少深堀ができたのかなと思います。

特に後半部分は個人的な見解かつ推測の部分も多分にあるのでその点を踏まえて一意見として読んでいただければと思います。

金融機関からすれば②~④のようなケースをつぶしにいくのはリスクを負ううえで労力がかかり、なおかつ下手をすると銀行の損失にもつながるので相当な覚悟が必要であり、現場の担当レベルで判断できる話ではなく経営判断としてやるような事項かと思います。

どんな経営判断はさまざまな要因を考慮して行うものであり、特集記事でそのあたりの背景まで切り込んだ記事が書けるのであれば、お侍様も認めてくださるのではないでしょうか。蛇足ですが。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

(ご質問等あればお気軽にコメントください)。