みなさん、こんにちは

 

先日、寝不足で意識もうろうとしながら書いたコラムになぜか好評価を頂き、「ぼーっとした頭で書いたコラムのほうがいいものになるのだろうか」と複雑な思いのものぐさ大家です

 

ここしばらく、いくつかのコラムの中で、耐震性に劣る築古物件を住まいとして提供することの是非が論じられていました

築古物件を持っているオーナーはもちろんですが、今後購入を検討している人や、現在の所有物件を長期にわたって運営するつもりのオーナーにも関心は高いテーマだと思うので基礎的な築古物件のリスクについてちょっとコラムで取り上げようと思います

1年以上前にも一度書いたテーマではありますが、ずいぶん前のものですし、関心が高いタイミングなので改めて

 

 

大家が責任を問われる法的根拠

 

そもそも、大家が入居者の被害について責任を負うことには、明確な法的な根拠があります

民法717条(工作物責任)は「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」としています

瑕疵、つまり欠陥があった場合、損害賠償する責任があるということです

そして、この「欠陥」の有無については判断する際にポイントとなるのが、耐震基準に適合しているかどうかです

 

 

耐震基準と既存不適格

 

耐震基準は建築基準法で定められています

1971年、1981年、2000年に建築基準法の改正が行われ、そのたびに耐震性も含めて、規制が強化されてきました

特に71年と81年の改正は大幅で、2000年改正はそこまで大きな改正ではなかったため、今でも81年改正の基準に適合している建物を新耐震、それ以前のものを旧耐震と呼んでいます(2000年改正も重要な部分が規制強化されており、特に木造住宅を選ぶならば、2000年以降の建物のほうがベターです)

 

しかし、耐震基準が改正されたからといって、建物を新たな基準に合わせて強化(耐震補強)するというのは、現実的ではありません

公共建築物や大型施設と違って、一般的な住宅で耐震補強が行われることのほうがまれです

このため、合法的に建設した後、法改正によって基準に適合しなくなった建物は「既存不適格」と呼ばれ、現在の基準に合わせなくても存続は認められています

もちろん、建て替える際には現在の基準に沿った形で行わなければなりませんが、

旧耐震だから違法というわけではないのです

 

 

築古物件での被災に関する過去の損害賠償判例

 

旧耐震建物であっても違法ではないということになると、貸している建物が地震に遭って入居者に死傷者が出ても、違法でないのならば大家の責任ではないーーという理屈が立ちそうなものですが、そうとばかりは限りません

 

地震で建物が倒壊するなどして死傷者が出たケースで、建物のオーナーらの責任を問う裁判は、過去にいくつかあります

 

たとえば、1995年の阪神大震災で4人が死亡した賃貸マンションを巡る裁判では、家主側に損害賠償として計約1億3000万円を遺族らに支払う判決が出ています

当時の新聞記事を引用します

 

「阪神大震災で倒壊、圧死 欠陥マンションと認定 所有者らに賠償命令」

 

 阪神大震災で神戸市東灘区住吉宮町の賃貸マンション(三階建て)が損壊、三世帯四人が圧死したのは建物に欠陥があったためとして、遺族七人が同区内のマンション所有者と仲介した同市中央区内の不動産会社を相手取り、逸失利益など総額約三億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、二十日、神戸地裁であった。水野武裁判長は「設計と施工に不備があった」と欠陥を認め、所有者に計約一億三千万円の支払いを命じた。  判決によると、マンションは一階がつぶれて二十二―三十歳の四人が死亡した。遺族らが調べた結果、一九六四年の建築で、壁に鉄筋がない部分が多く、鉄筋も柱や梁(はり)に十分溶接されていなかったことなどが分かり、一九九六年八月に提訴。所有者側は「建物の崩壊は常識を超える激しい地震によるもの」と主張していた。  判決で、水野裁判長は▽壁の厚さや長さが当時の設計基準以下▽鉄筋の量が不十分だった――などと欠陥を認定。「基準を満たしていても倒壊したと考えられるが、一階が完全につぶれなかった可能性もあり、地震による不可抗力とは言えない」と述べ、建物の不備と想定外の揺れの両方が原因として、所有者に損害の五割を支払うよう命じた。  一方、不動産会社に対する訴えは「建物が安全ではないことを知らなかった」として棄却した。

(1999年9月21日付 読売新聞より)

 

 

建築に関わっていなくても損害賠償を求められる

 

上の記事を見て頂くとわかりますが、判決のポイントは、壁の厚さなどが当時の基準以下で、鉄筋の量も不十分だとした上で、基準を満たしていれば被害が軽減されていたと判断し、請求額の半額の支払いを命じています

 

この建物のオーナーは、築24年ぐらいの段階で購入し、その後家族間で相続があったと記憶しています。購入時点で四半世紀経過しており、さらに購入者自身は鬼籍に入っているとなると、建築時に当時の建築基準法を守っていたかどうかは、建物を詳しく調べる以外に分からないでしょう

それでも、この判決では、所有者の瑕疵を認めて、損害賠償を命じました

 

 

築古物件はリスキーなのか?

 

阪神大震災では、これ以外にも、ビルが横倒しになって隣家の住人が死亡したケースで、ビル所有者が遺族に和解金を支払う和解事案もありました

これらの判決だけを見ると、築古物件の所有はリスクが高いと感じるのが普通だと思います。

地震保険の保険額は低く抑えられていますし、厳しい判決を受ければ下手をすれば破綻しかねません

ただ、阪神大震災の時の判決をよく読むと、古くて現在の耐震基準には適合していない建物であっても、建設当時の建築基準を満たしており、かつ、予見できないほどの激しい揺れが倒壊の原因だった場合は、損害賠償責任は問いにくいとも書かれています

他の同種判決も含めて見ると、大家の責任が問われるかどうかは▽通常予測される範囲の地震に対し耐えうる構造を有しているか▽建設当時の耐震基準を満たしているかーーという2点に尽きるようです

 

 

築古物件を買う時に気をつけるべき点

 

これら過去の判例を踏まえると、少なくとも建設当時の耐震基準(建築基準)を満たしていない建物というのは、買うことを避けたほうがよいと言えます

とはいえ、耐震基準をきちんと満たしているかどうかなんて、素人にはなかなかわかりません

法的責任を回避するには、建設に知識のある人に見てもらい、きちんとした大工仕事がなされているか、木造物件であれば筋交いや金物がきちんと入っているかをチェックしてもらうことが重要です

明らかな手抜き工事や、過剰なコストダウンが透けて見えるような物件は、耐震性だけでなく、他にも様々な問題が出てきそうなので、判例うんぬん以前に避けたほうが賢明でしょう

また、建設当時にその頃の耐震基準を満たしても、その後の保守管理がずさんであれば、建物の強さが極端に落ちていることもありえます

メンテを長く怠っていた物件も、建物強度の問題から避けたほうがよさそうです

 

 

古い建物を貸すこと自体も大きなリスク

 

私自身、築40年超の築古物件を複数所有しています

他のコラムのコメントでは、古い粗悪な建物を貸して利益を得るのは倫理的にどうだろうかという問いかけもありましたが、私個人としては、古い建物であることを入居者が理解し、相応の家賃で貸しているのであれば、貸すこと自体に問題はないと考えています

安い賃料をとるか、災害リスク回避をとるかは、借り手それぞれの考え方だと思います

それを貧困ビジネスなので言語道断、とまで言ってしまうと、すべてを国が面倒をみて平等な社会を目指す社会主義国家の道を歩むしかないのではと思ってしまいます(ちょっと極端かもしれませんが)

とはいえ、家賃を安くすれば、どんなにボロでも、危険な建物でも貸してOKとは思いません

あまりに危険そうな物件にはそもそも手を出しませんし、重い本瓦の場合は軽量瓦にできないか、他の修繕と一緒にやることでコストダウンできるタイミングを見計らいます

 

 

リスクを正しく見た上で判断を

 

前回コラムにも書きましたが、投資はなんらかのリスクをとることで、それに応じたリターンを得られる可能性を手にする、というものだと理解しています

その意味では、築古投資家というのは、古い建物を貸すことで批難されることも含めてリスクをとることで、築浅物件より高い利回り(リターン)を得ているとも言えると思います

突き放した言い方のようですが、そのリスクをとるもとらないも、投資家それぞれの判断だと思います

リスクを正しくしっかり知った上で、判断を下せば良いのではと考えています

 

本日も駄文、長文におつきあい頂き、ありがとうございました