こんにちは

実践大家のメッシといいます。私は自分で不動産投資を行いながら、賃貸管理会社で10年以上実務を担当していたサラリーマンでもあります。私は大家でもありながら、管理会社の内情、不動産業界の内情を知る立場でもあります。そんな立場から、不動産投資に少しでも役に立てればとコラムを書いています。

高入居率が怪しいその他の理由

前回、管理会社が宣伝する高い入居率が怪しい理由として、入居率を計算する方法に決まりがないことを説明させていただきましたが、高い入居率がウソくさい理由は他にもあるのです。

根拠2

実務を行っていた人間からすると、入居率98%は信じられないくらい高い数字である!

 

10,000室管理を行っている管理会社があり、入居率が98%だとします。入居率98%ということは、空室率が2%ということになります。

10,000室 × 空室率2% = 空室200室

 

ワンルームとファミリータイプで差がありますが、私が勤めていた管理会社では、平均すると、賃貸物件の入居期間は4年程度でした。毎月発生する解約件数を管理戸数で割ると、平均の入居期間が計算できるのです。これは正確な数字でした。

仮に上記の10,000戸管理している管理会社で平均入居期間が4年程度だとすると、毎月200室程度の新たな解約が発生することになるのです

管理戸数10,000室/平均入居期間4年/12カ月 = 毎月発生解約数208室

 

※現実には、3月には400室解約が発生し、8月には100室解約が発生するというかんじでした

入居率98%ということは、空室の数(200室)と、毎月発生する解約数(208室)がほぼ同じ数になります。つまり、全管理物件について、平均で1カ月以内には空室が成約している計算になるのです

テナントリテンションの話もウソくさい!

ちなみに、「弊社はテナントリテンション(入居者つなぎ止め)により、解約を防止しています。他社よりも入居期間を長くできます。」というような宣伝を見ることもありますが、入居者は、転勤・結婚・持家購入などの理由により賃貸物件を解約するのです。

管理会社の対応が悪く、平均入居期間が短くなることはあっても、管理会社の対応が優れていることにより、管理物件全体の入居期間が延びる話は、これまた、にわかには信じられない話です

私が勤めていた管理会社の対応が特別悪いとは思えず、他管理会社物件の平均入居期間が4年より極端に長いことも考えられないと思います。

経験者にしか分からない、管理会社担当者の苦労

オーナーの中には、前回紹介したような入居率50%でも困らない方や、物件売却をにらみ空室が延びても高い賃料で成約したいと考えている方、原状回復工事でいつも管理会社と金額で折り合いがつかず工事開始までに時間がかかる方など様々です。

原状回復工事を行う工事業者も繁忙期などでは、なかなか、すぐに工事に入れなかったりします

空室募集には、新規募集条件を大家さんと打ち合わせ、図面作成、ポータルサイト登録、仲介業者訪問などのリーシング活動を行います。反響が全く取れずに、募集家賃を大家さんと再度打ち合わせして値下げをしたり空室に家具を置いてみるなどの様々な空室対策も行わなければなりません。

原状回復工事も、どの範囲の工事を行うかアクセントクロスの色をどうするか設備のグレードアップをどこまで行うか、など、大家さん、工事業者、社内他部署とすり合わせを行わなければならないこともたくさんあります。

賃貸物件は供給過剰の状態なのです。駅から徒歩15分・築古・バストイレ一緒の部屋などもあり、物件によっては、1年間空室が埋まらない物件も当然のようにありました

運よく申込をすぐに取れたとしても、申込受付、保証会社審査、社内審査、契約書作成、仲介業者打ち合わせ、大家さん打ち合わせなど、契約を締結するには早くても1週間から10日はかかるのです

審査をするには、収入証明や在籍証明などの書類を申込者に用意してもらわないといけませんが、なかなか提出されない場合には、1週間くらいあっと言う間に経過してしまいます

やっと契約締結までこぎつけたら、申込者の事情が変わり、契約直前でキャンセルになることも稀なことではありません。

管理会社社員の低い定着率

管理会社の担当者はベテランばかりではありません。労働条件が良い業界ではありませんので、会社によりますが社員の定着率は決して高くはありません

他業界から入社したばかりで、右も左も分からない新入社員もいれば、社員の採用活動に時間を取られているベテラン社員もいるのです。そんな状況の中、何とか人のやりくりを続けている会社もあるのです。

現場にいた人間から見ると、98%!の(信じがたい)高い入居率を堂々と宣伝している会社に限って、ブラック度合いが高い会社ではないかと、勘繰りたくなってしまいます。

そんなこんなで、全管理物件について、平均1カ月で契約締結できている話(入居率98%!)は、実務を行っていた人間には信じがたいのです

まだまだある、高入居率がウソくさいわけ

管理会社が宣伝する高い入居率が怪しいのは、計算ルールがない、契約締結までには長い道のりがある、ことだけではありません。まだまだ、思い当たる理由があるのです。

その理由の説明は次回へと続きます。