楽待実践大家コラムをご覧の皆様、元ポスドク理系大家です。

 

本日は、不動産投資の出口戦略として売却まで見据えている場合に必要な売却シミュレーションについて、紹介したいと思います。私の場合は、物件規模が小さく当面は持ち続けることを考えていますので、所有していない架空の物件を対象に趣味・遊びのシミュレーションを紹介します。

 

シミュレーションならぬ趣味レクレーション(笑)ですが、お付き合いいただければと思います。

 

内容は、

 

# 売却シミュレーションに必要なもの

# 想定されるケース

# 架空の物件で計算してみる

# 終わりに

 

です。

 

売却シミュレーションに必要なもの

 

売却シミュレーションに必要なものは、売却益の計算式を考えれば分かります。ここでは、簡単のために税引き前の課税対象の売却益を考えます。計算式は、

 

「売却益」=「売却額」―「簿価」

 

となります。取得時の価格(取得資産価格)ではなく、売却時点での簿価(取得資産簿価)であることに注意が必要です。つまり、これは時間の関数ですので、どの時点で売却するかで売却益は変わってきます。また、ローンによる残債がある場合を考えます。よって、売却シミュレーションに必要なものは、次の 3 つです。

 

「売却額」

「簿価」

「残債」

 

想定されるケース

 

これら 3 つの大小関係を考えれば良いです。不等式で表すと以下の 6 通りになります。

 

売却額 > 簿価 > 残債

売却額 > 残債 > 簿価

簿価 > 売却額 > 残債

簿価 > 残債 > 売却額

残債 > 売却額 > 簿価

残債 > 簿価 > 売却額

 

ここで、売却額が簿価よりも小さい場合は、キャピタルロス(売却損)が出てしまいます。さらに、売却額が残債より小さい場合は、残債を精算するためにキャッシュアウトが発生することになります。逆に売却額が大きい場合は、キャピタルゲインを得ることができますが、実際の売却益がどのくらいになるかは簿価との関係で決まります。また、簿価ですので実際に手残りの売却益ではないことにも注意が必要です。

 

架空の物件で計算してみる

 

話を簡単にするために、以下の共通シナリオで計算してみることにします。

 

 取得価格:1 億円
表面利回り:10%
  経費率:20%
  空室率:5%
家賃下落率:1%
 売却想定:取得10年後
 返済方法:元利均等(繰り上げ返済はしない)
  売却額:1.2億円、1.0億円、0.8億円、0.6億円の 4 通り

 

出口戦略まで含めた売却シミュレーションですので、このシナリオには賃貸運営によるキャッシュフロー (CF) の計算に必要な条件も設定してあります。

 

ただし、大規模修繕は無視していますし、物件力や大家力にもよりますが、期待値としては少し甘めの想定かもしれません。

 

借入期間と金利の影響を見る

 

以下の 5 ケースを考えてみます。

 

① LTV 90% 期間 35 年 金利 4.5%

② LTV 90% 期間 30 年 金利 3.0%

③ LTV 90% 期間 30 年 金利 2.0%

④ LTV 90% 期間 25 年 金利 2.0%

⑤ LTV 90% 期間 20 年 金利 2.0%

 

ここで LTV 90% とは借入比率のことです。借入額が取得価格の 90% つまり、9000 万円の借入をすることを想定します。また、売却時点での簿価を求める必要があるので、減価償却費を与える必要があります。

 

例えば、建物価格が取得価格の 75% で残耐用年数が 30 年だとすれば、均等償却なら、年間 250 万円となります。

 

まず、共通部分から、10 年間の運営による累計 CF を計算しましょう。1 年目の CF は表面利回りから満室時の家賃収入が 1000 万円ですので、

 

1000 x (100-空室率) x (100-経費率) = 760 万円

 

と計算できます。次に年 1% の家賃下落率を考慮して 10 年分の累積 CF を求めると 7258 万円となります。なお、課税対象の税引き前 CF を計算した場合は、利息を経費にできることも考慮する必要がありますが、ここでは無視します。

 

また、10 年分の減価償却費が 2500 万円となりますので、簿価は 7500 万円です。

 

① のケース

 

10 年後の残債は 7663 万円となります。よって、残債 > 簿価となりました。4 通りの売却額でそれぞれ計算してみます。まずは、課税対象になる売却益を計算します。計算式は「売却額」-「簿価」です。

 

1.2億で売却: 4500 万円
1.0億で売却: 2500 万円
0.8億で売却:   500 万円
0.6億で売却:-1500 万円

 

次に実際の手残りである「売却額」-「残債」です。

 

1.2億で売却: 4337 万円
1.0億で売却: 2337 万円
0.8億で売却:   337 万円
0.6億で売却:-1663 万円

 

0.6 億で売却の場合は、残債 > 売却額となってしまいました。また、① のケースは、実際の手残りよりも課税対象となる売却益の方が大きいので、余分に税金を払う必要があります。これは

 

売却額 > 残債 > 簿価

 

の場合に相当します。売却損が出る場合を除きます。

 

出口戦略まで含めた売却シミュレーションですので、10 年分の累積 CF と 10 年分の返済総額 5111 万円を加味すると、

 

1.2億で売却: 4337 + 7258 – 5111 = 6484 万円 (6.5%)

1.0億で売却: 2337 + 7258 – 5111 = 4484 万円 (4.5%)

0.8億で売却:   337 + 7258 – 5111 = 2484 万円 (2.5%)

0.6億で売却:-1663 + 7258 – 5111 =  484 万円 (0.05%)

 

となりました。() は、取得価格から計算した年利回りです。四捨五入しています。

 

② のケース

 

同様に計算すると、残債は 6842 万円になります。簿価は同じなので、実際の手残りである「売却額」-「残債」を計算します。

 

1.2億で売却: 5158 万円
1.0億で売却: 3158 万円
0.8億で売却: 1158 万円
0.6億で売却:  -842 万円

 

② のケースでは、

 

売却額 > 簿価 > 残債

 

なので、課税対象の売却益の方が実際の手残りの売却益よりも小さいので、税金面では ① よりも良いです。同様に売却損を除きます。

 

また、10 年分の累積 CF と 10 年分の返済総額 4553 万円を加味する

 

1.2億で売却: 5158 + 7258 – 4553 = 7863 万円 (7.9%)

1.0億で売却: 3158 + 7258 – 4553 = 5863 万円 (5.9%)

0.8億で売却: 1158 + 7258 – 4553 = 3863 万円 (3.9%)

0.6億で売却: -842 + 7258 – 4553 = 1863 万円 (1.9%)

 

となります。

 

③ ④ ⑤ のケース

 

それぞれ、残債は 6576 万円5928 万円4948 万円となり、返済総額は 3991 万円4578 万円5464 万円となるので、どの条件でも

 

簿価 > 残債

 

となります。最終的な計算結果は、

 

1.2億で売却: 5424 + 7258 – 3991 = 8691 万円 (8.7%)

1.0億で売却: 3424 + 7258 – 3991 = 6691 万円 (6.7%)

0.8億で売却: 1424 + 7258 – 3991 = 4691 万円 (4.7%)

0.6億で売却: -576 + 7258 – 3991 = 2691 万円 (2.7%)

 

1.2億で売却: 6072 + 7258 – 4578 = 8752 万円 (8.8%)

1.0億で売却: 4072 + 7258 – 4578 = 6752 万円 (6.8%)

0.8億で売却: 2072 + 7258 – 4578 = 4752 万円 (4.8%)

0.6億で売却:     72 + 7258 – 4578 = 2752 万円 (2.8%)

 

1.2億で売却: 7052 + 7258 – 5464 = 8846 万円 (8.8%)

1.0億で売却: 5052 + 7258 – 5464 = 6846 万円 (6.8%)

0.8億で売却: 3052 + 7258 – 5464 = 4846 万円 (4.8%)

0.6億で売却: 1052 + 7258 – 5464 = 2846 万円 (2.8%)

 

となります。これらの検討から、取得額以下でしか売却できない可能性を考えれば、長期の高金利ローンでは利回りが悪くなることが分かりますね。

 

残耐用年数の影響

 

以下の 4 ケースを考えてみます。

 

⑥ 残耐用年数 25年

⑦ 残耐用年数 20年

⑧ 残耐用年数 15年

⑨ 残耐用年数 10年

 

このとき、借入期間と金利については、先ほどの ① と ⑤ のケースで計算してみます。まず、簿価を計算します。年間の減価償却費はそれぞれ 300 万円、350 万円、500 万円、700 万円となります。よって、10 年後の簿価

 

⑥ 7000 万円

⑦ 6500 万円

⑧ 5000 万円

⑨ 3000 万円

 

となります。

 

① のケース

 

課税対象になる売却益は、それぞれ

 

1.2億で売却: ⑥ 5000 万円

       ⑦ 5500 万円

       ⑧ 7000 万円

       ⑨ 9000 万円

 

1.0億で売却: ⑥ 3000 万円

                    ⑦ 3500 万円

                    ⑧ 5000 万円

                    ⑨ 7000 万円

 

0.8億で売却: ⑥ 1000 万円

                    ⑦ 1500 万円

                    ⑧ 3000 万円

                    ⑨ 5000 万円

 

0.6億で売却:⑥ -1000 万円

                   ⑦ -500 万円

                   ⑧ 1000 万円

                   ⑨ 3000 万円

 

となります。一方、実際の手残りの売却益は、

 

1.2億で売却: 4337 万円
1.0億で売却: 2337 万円
0.8億で売却:   337 万円
0.6億で売却:-1663 万円

 

ですので、用年数が短い場合は、残債以上で売れても課税対象の売却益が大きく出てしまって、たっぷり税金を取られることになります。

 

築古 RC をス〇ガ銀行またはト〇ストの高金利、長期融資のときは注意する必要がありますね。

 

⑤ のケース

 

実際の手残りの売却益は、

 

1.2億で売却: 7052 万円
1.0億で売却: 5052 万円
0.8億で売却: 3052 万円
0.6億で売却: 1052 万円

 

ですので、耐用年数 15 年までなら簿価での売却益に近い値になります。

 

理想の売却不等式と最悪の売却不等式

 

理想は、これまで見てきたように

 

売却額 > 簿価 > 残債

 

ですが、

 

売却額 > 残債 > 簿価

 

になってしまうケースは多いと思います。

 

一方、最悪なのが、残債割れで売却損なのに、課税される

 

残債 > 売却額 > 簿価

 

です。

 

終わりに

 

今回は、売却シミュレーションなので経費率、空室率、家賃下落率を固定して計算しましたが、この部分に楽待の収支(CF)シミュレーションを持ってくるとかするともっといろんなケースを計算できて面白いと思います。

 

あれ、売却時累計 CF も計算できるんですね。あまり役に立たないコラムを書いてしまったかも。

 

相変わらずのオタクなコラムを書いてしまった💦

 

皆さんはどんな売却シミュレーションをしていますか?

 

コメントいただけると嬉しいです。