楽待実践大家コラムをご覧の皆様、元ポスドク理系大家です。

 

前回のコラムの終わりにシミュレーションという手法そのものについて次回のコラムに書くことを予告していましたが、まだ原稿の準備ができていません💦

 

そこで、今回のコラムでは先日、客付けの会社の紹介で法人契約での入居が決まった部屋の重要事項説明書をネタに賃借権と抵当権についてコラムに書きたいと思います。

 

「感謝祭」の前だからなのか、皆さんコラムを続々とアップされていらっしゃるので、やっつけで自分ももう 1 本書いておきたくなりました。

 

重要事項説明書の記述

 

抵当権に関する記述として、以下のように書かれていました。

 

本物件は抵当権が設定登記されていますので、借主はその抵当権が実行され競売になり買受人から明け渡しを求められた時には、6ヶ月までの間に明け渡さなければならない事になります。なおこの場合には貸主に預けた敷金についての精算も買受人に求める事が出来ません。

 

とありました。普通、自身が破綻することを意識することはほとんどないため、これまで全く意識していませんでしたが、良い機会なので実際どうなのか調べてみました。まあ、既にご存知の方もいると思いますが、紹介します。

 

契約書では

 

例えば、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」に抵当権に関する記載はないです。他の契約書の雛形もいくつか見てみましたが、調べた範囲では抵当権の説明はありませんでした。抵当権については、重要事項説明書で説明されるようです。宅建協会の重要事項説明書には、「貸主の表示」の次に「登記簿に記載された事項」を説明する欄があり、抵当権が設定されているかどうかのチェック欄があります。しかし、抵当権が実行された場合に関する記載はありませんでした。

 

普通に考えると、抵当権が設定されている物件の重要事項説明では、将来において抵当権が実行されて明け渡しを求められる可能性がある旨を伝える必要があると思いますが、私は賃貸に長く住んでいるものの、抵当権が設定されている物件を借りたことがないので、口頭でちゃんと説明されているのか分かりません。やはり、抵当権が実行されたらどうなるのか重要事項説明書に記載された方が良いような気がします。

 

どちらが優先されるか

 

これは、対抗要件によって違います。対抗要件とは、対抗するための法律要件のことです。今回の場合は、例えば抵当権から見ると、対象となる不動産の所有権や賃借権に対抗するための法律要件ということになります。

 

法律要件とありますが、ものすごく乱暴に言えば「早い者勝ち」のことです。賃借権と抵当権のどちらが先に設定されたかで、どちらが優先されるか決まります。

 

賃借権が先の場合

 

民法「賃借権の登記」
借地借家法「建物の引渡し」

 

が法律要件となります。この場合、抵当権が実行されて任意売却または競売になって不動産の所有者が変わっても、賃借権を主張できます。つまり、建物を明け渡す必要はありません。

 

敷金については、新しい所有者に承継されますので、退去時は敷金の返還を受けることが可能です。ちなみに、滞納がある場合は、所有者が変更になった時点で精算を行うことになるようです。精算できなかったり残額が残った場合は、新しい所有者に承継されます。

 

抵当権が先の場合

 

対抗要件は、「任意売却」と「競売」によって異なります。先ほど挙げた例では任意売却について記載されていませんが、抵当権が先に設定されていたとしても任意売却の場合は、任意売却より前に賃借権が登記されているか、建物の引渡しを受けていれば、賃借権を主張することができます。「早い者勝ち」なのは同じですね。

 

競売によって抵当権が実行された場合は、例に挙げた重要事項説明書の通りではあるのです。以前は、民法上、短期賃貸借保護制度というものがあって、3 年を越えない期間の賃貸借であれば、抵当権の設定登記後に設定された賃借権であっても、対抗できることになっていましたが、今はありません。ちなみに敷金については、以前の所有者に返還を求めることはできます。まあ、資力はないでしょうから難しいと思いますが。

 

実際の判例も気になる方は、「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」の最高裁判例一覧の「担保権に関する判例 – 抵当権の実行と賃借人との関係」をご覧ください。

 

終わりに

 

今回は、抵当権と賃借権の関係について紹介しました。大家の立場では、自身が破綻するとは全く考えていませんが、賃貸人の立場では、不安に思うかもしれません。そのような不安を抱かせないためにも健全な賃貸経営を心掛けたいと改めて思いました。

 

次回は、ちゃんと予告通りにシミュレーションのコラムを書きます。