すばる天文台
ハワイ島マウナケア山山頂 1999

コンサルタントの収支表

「A君、コンサルタントはこの収支表の君に見せて、回っているから大丈夫と言ったんだよね」

「はい、税引き後のCFがプラスだから回っているといっていました」

「A君、でも、もう今の君ならこの収支表の何がいけないかはわかるよね」

「うーん、なんだろう?先輩、税金がおかしいって言っていましたよね」

「そう、所得税と住民税は、課税所得から計算すると教えたよね。この収支表はどうやら、税引き前のCFから計算しているみたいだけど、それって根本的に間違っているよね。それにA君のサラリーマンの給与のCFはなんにも考慮していないよね」

「くそー!あのコンサルタント、僕をだまそうとしたんだな!!(怒)」

「A君、でもコンサルタントさんが悪いとは限らないよ」

「えっ、先輩、どういうことですか?」

「A君、実はコンサルタントもよくわかっていないのかもしれないよ。あの収支表も誰が作ったのかわからないし」

「T先輩、それってどういうことですか?あのコンサルタント、FPや宅建の資格ももっているって名刺に書いてありましたよ」

T先輩の言いたかったことは、以下のようなことです

不動産会社のコンサルタントといっても、実際は、アパートやマンションの営業マンです。毎月のノルマを達成するには、1件でも多くの商談を成立しないといけません

これに対し、不動産投資に興味がある初心者サラリーマンの一番の関心は

物件がどれぐらいで回っているか?

でしょう

であれば、商談を成立させるための効率的なツールが必要です。それがあの収支表だったのです。会社が大きくなればなるほど、一人の営業マンが、それぞれの物件の収支表を作ることは少ないでしょう。建築会社か、社内の誰かがそれを作り、複数の営業マンがそれを共有するのがあたりまえです

前回のコラムで説明したように、一人一人のサラリーマンの給与のCFによって、収益不動産のCFは変わってきますが、それをいちいち説明する前に、お客様に興味を引いてもらうには、物件単体の収支表を見せないと始まらないわけです

すべてのコンサルタントや営業マンがこのような人たちとは言いませんが、私の経験からすれば、物件の紹介のときに、サラリーマンの給与のCFを確認されたことは一度もなく、いきなり、この物件の税引き後のCFは年〇〇万円ですと収支表を見せられたことは何度もあります

お客様のサラリーマンの給与のCFを確認せずに

この物件のCFは
回っているから大丈夫です!

といってきた営業マンはまず信用しないほうがいいです

この物件の税引き前CFは
これぐらいです

なら合格ですが、それではお客様は納得しないでしょうし、コンサルタントのプライドも許さないのでしょう。しかし、結局、そうなってしまうのは、我々、お客の方が無知であることに責任があるのだと思います

また、不動産投資の収益計算についてFP宅建でここまで詳しく解説しているパートはなく、その上、FPや宅建の資格を持っている営業マンでも、自分で1棟アパートに投資している人も少数です。そういった営業マンが、こういった間違った収支表を営業ツールとして使うとこは少なくありません

とは言っても、すべてをコンサルタントのせいにできるほど世の中は甘くないです。自分で自分の不動産投資シミュレーションをしなかった人のその責任は、その人が取るしかありません

「T先輩、実はもう一つネットで物件の問い合わせをしたんです。こっちの収支表も見てくれませんか?これなんですけど・・・」

「A君、これはまた細かい表だね」

「数字もそうなんですけど、なんか英語3文字の専門用語がたくさん出てくるんです。細かすぎでチンプンカンプンです」

「でもこっちの表はなんとか課税所得を求めてから、所得税・住民税を計算してCFを求めているね。でも、課税所得を求めるときに、給与控除や基礎控除・社会保険料を考慮していないし、税率も所得税+住民税で33%として、これが物件単体のCFだと言っているようなところは問題だね。あー固定資産税も引いていないみたいだ」

「T先輩、この収支の計算が10年で終わっているのはなんでですか?」

「A君、それは、10年目に物件を売ることが前提だからだよ」

「えっ!せっかく買ったのに、たった10年で売らないといけないんですか?」

「その通り、10年後に売らないとトータルで収支がマイナスになる恐れがあるということだよ」

「そんなぁ!それじゃ、年金代わりにならないじゃないですか!10年後に上手く売れなかたら、赤字が積み上がってしまうってことですか?!」

「その通り!ともかく、不動産投資シミュレーションは、営業マンやコンサルタントに言われるがままに信じてはいけないこと、正確に求めるにはそれぞれ、自分で計算できるようにならなくてはいけないということなんだ。じゃあ、その方法について順番に説明していこうかな」

分離課税と総合課税

「A君はたしか、株式投資はやっていたから、分離課税についてはよく知っているよね。じゃぁ、不動産投資は総合課税ってことは知っていた?」

「 株式投資は源泉徴収にしているから実質なにもやってないですし、不動産投資は総合課税ということもよく知りませんでした」

「僕の考えた言葉だけど

足しの株式、引きの不動産

とイメージすればいいと思うよ。まずは、株式投資のCFを図で表してみよう。単純に足せばいいだけだね」

「これが分離課税だよ。株式とか分離課税のCFは簡単だね。そういえば、預貯金や定期の利息なんかも源泉分離だよね」

足しの株式(分離課税)

「CFを足せばいいだけだよ。この意味はわかったかな?」

総合課税(給与+不動産)

「次は不動産投資のCFだけど、僕たちサラリーマンの給与のCFの求め方は勉強したよね。この図のように2ステップで考えるとわかりやすいよ」

 まずは、給与から2段階の控除をひいいて課税所得を求めます。そして、所得税と住民税を求めて、社会保険とともに給与から引くとCF=手取りが求まります。(実際に貰った給与から、実際に支払った税金と社会保険料を引けば、CF=手取りが求まるということです)

では、ここに不動産投資を加えて総合課税でCFを求めるのにはどうしたらいいのか、まず課税所得の計算の仕方を下図で説明しましょう

頭がこんがらがりそうだけど、2ステップで考えてみてください。

ステップ1(所得合計を求める)
①給与の所得 =給与-給与所得控除
②不動産の所得=家賃-経費
③所得合計  =①+②
給与所得控除は給与の額から自動的に計算される額

ステップ2(課税所得を求める)
④課税所得=③所得合計-所得控除

所得控除は扶養控除や社会保険料(年金+健康保険)

「T先輩、課税所得の計算は、2ステップで考えるとわかりやすいですね。要は、給与所得と不動産所得を別々に計算し、足し算して所得合計を求める。そこから扶養控除や社会保険料などを引くと、サラリーマンと不動産の合計の課税所得が求まると言うことですね」

「A君、たしかに総合課税は複雑だよね。でも、1度でも確定申告すればわかると思うんだ。この図は、第1票そのものなんだよ」

「なんで、不動産は、株みたいに分離課税じゃないんですか?」

「おそらくそれは、2つの理由があると思うんだよね。1つ目は、株式投資は売り買いの回数は多いからシンプルな分離課税にして投資を促進したいから、2つ目は、不動産投資は事業として捉えられていて、お給料など一緒にして累進課税で税収を大きくしたいからじゃないかな?」

「うーーん、給料と不動産を一緒に計算しないといけないなんて複雑ですね」

これで、総合課税の課税所得が求まりました。所得税と住民税はこの課税所得から計算します

所得税は、推進課税であることをくれぐれもお忘れなく!

物件単体の所得税とCF

課税所得が求まったので、そこからCF計算をしたいと思います。給与&不動産のCFの計算は、給与のCFの計算と全く同じです。問題は、物件のCFをどのように計算するかです

よく、こういう間違いを見つけます

Aさんの所得税は20万円でしたが、アパートを買ったら所得税が30万円に増えました。よって、このアパートにかかる所得税は10万円です

これが間違いなのは、上図から明らかです。何がいけないかというと、同じアパートを買っても、Bさんの所得税増加は20万円、Cさんの所得税増加は30万円かもしれないからです

要するに、Aさん、Bさん、Cさんのそれぞれの

・サラリーマンの所得額(すなわち税率)
・所得控除額(家族構成や社会保険)

が違うので、当然、あるアパートを買ったときの所得税・住民税の額も違い、物件単体の税金はいくらなどということは出来ないのです。結局、最終的に税金を引いたあとのCFもその人によって違うのため、その物件単体のCFが出せるわけはないです

その物件を買ったときの税金の増加、CFの増加を知ることは大変重要ですが、それは人それぞれ違うということを理解しておく必要があります。これこそが、不動産投資シミュレーションが大切だという一番の理由です

「でも先輩、それじゃ、その物件に投資していいのか?悪いかのか?どうやって判断すればいいんですか?」

引きの不動産

「良い質問だね。答えは」

引きの不動産

「これは、僕が考えた言葉だけど、簡単に説明するね。まずは、の場合の復習をしてみよう。分離課税だからこれで良かったよね

図:株式のCFの捉え方(分離課税)

不動産の場合、総合課税だから、この図のように考えないといけないんだ」

図:不動産投資のCFの捉え方(総合課税)

まず、不動産&給与の統合したCFを求めます。同時に給与のCFも求めます。両者の差が、不動産投資をしたことによるCF=手取りの増加分と考えるの正しい見方です

物件のCF=
不動産&給与の統合CF-給与のCF

これが

引きの不動産

私が推奨する正しい不動産投資のCFの見方です

「この図の左も右もCFの増加も、A君のサラリーマンの給与を使って計算しているから、これはAくんだけの数字で、僕の場合は全く違う数字になることが想像できるかな?A君が、ある不動産がいい物件か悪い物件が判断するには自分でこの計算をすればいいんだと思うよ。税引き前のCFだけで評価をする方法もあるけど、やっぱり累進課税を使った税引き後のCFがどれぐらいになるか知りたいんじゃない?」

「T先輩、やっぱり、税金のことは気になります。せっかく頑張ってアパートを買っても、税金を引かれたらほとんどお金が残らないなら、何でやっているか意味がわかりません」

「A君、その通りだね。次回は、不動産投資の家賃経費から、不動産の所得を求める所得計算について教えるね。これが求まれば、サラリーマンの給与所得と合わせて、所得税や住民税の計算に必要な課税所得が計算できるんだよ。でも、安心してね。僕のやり方はとってもシンプルなやり方だから」

「T先輩、よろしくおねがいします!」

まとめ(次回の予習)

次回以降、Excelを使ったCFの計算の仕方を説明していきますが、そのための計算の流れを説明しておきます。ゴールはA君にとっての物件のCFを求めることです。行うのは、所得計算CF計算の2つです

1 所得計算
 ・不動産所得
 ・課税所得
 ・所得税と住民税
2 CF計算
 ・総合課税のCF
 ・物件のCF=総合課税CF-給与CF

投資は自己責任

という言葉を知らない人はいないと思いますが、この物件にどれぐらいのリスクがあるか正確に知らずに、物件に投資するのでは、最悪、どれぐらいの責任を取ればいいのかわからないのではないでしょうか?

シミュレーション日記、まだまだ続きます

最後までお読みただき、誠にありがとうございました