読者の皆様、あけましておめでとうございます

本年もよろしくお願いいたします

さて、新春企画コラムということで編集部から依頼を受けました。日頃から、数字で見ることの重要性を説いている関係上、単なる感覚的な予測だけではなく、数字に裏打ちされた予測をしてみたいと思います

言うまでもなく、昨年の新型コロナの影響は、人々の生活や働き方に大きな影響を与えました

私の場合、すべての不動産を東京23区内に所有しているため、東京の賃貸市場が、新型コロナによってどのように変化していくかは非常に気になっています

総務省統計局

総務省統計局では、毎月の都道府県別人口の転入と転出の数値を公表しています。2020年は11月まで掲載されていましたので、新型コロナの影響が出だした4月から11月のデータを取り出してまとめてみました

比較のためにまずは2019年のデータを示します

東京都の2019年人口の転入・転出

東京への一極集中のため、ここ十年以上、東京への人口流入が続いていました。次に2020年のデータです

東京都の2020年人口の転入・転出

この情報は、いくつかのマスコミで大きく取り上げられていましたが、たしかに東京からの転出が、転入を上回って、人口が減少しているのが確認できました

もう少し細かく見ると、前半の4ー5月は、毎年人が大きく動く時期ですが、新型コロナ影響で人の移動が制限され、転入も転出も大きく減少しました

その後、6月から転入が減少傾向になるとともに、転出が増加傾向になり、東京の人口が減少傾向になったわけです

東京都人口推移統計

次に別の角度から、東京都の人口の変化を見てみましょう。東京都のHPに月次の人口の推移が公表されていました

東京都全体の人口の推移ですが、縦軸が相当拡大されていて、このグラフを見る限り、人口の増減はあまり大きくないことがわかります

概算ですが、人口の増減率は

・2018年(平成30年) 年+0.6%
・2019年(令和元年) 年+0.7%
・2020年(令和 2年) 年±0.0%

2019年まで、東京都の人口は、年間10万人ぐらいずつ増えていました。年間+0.6~0.7%の増加です。2020年は、グラフの赤線のように減少傾向になりましたが、年の前半の貯金があり、年度では±0ぐらいになりそうです

ただ、この統計は、出生と死亡の人数も入っています。統計では、東京の死亡から出生を引いた数字は約1.2万人だそうです。だいたい、年に1.2万人が自然に減少しています

しかし、人口約1400万人の東京都全体からすると、どの数字も非常に小さいものです

東京都への人の転出が転入を上回ったという報道が、マスコミで大きく取り上げられ、新型コロナによって、あたかも東京から地方へ人が逃避しているような報道がされましたが実際のところは

・一時的に人の移動が抑制された
・それほど大きな人の移動のトレンドにはなっていない

ということが言えます

東京23区と市部の人口増減

次に、同じく、東京都のHPで見つけた、東京都の地域ごとの人口増減数を示します

 

11月、単月のデータではありますが、非常に興味深いのは、

1.大田、世田谷、板橋、葛飾など東京23区の周辺区の人口が減少
2.中央、台東、新宿など都心の中心区の人口が増加
3.多摩東部の人口が増加

これは一体、何が起こっているのでしょうか?

<2020年12月25日のNHKの報道から引用>
人口問題に詳しいみずほ総合研究所の岡田豊主任研究員は「リモートワークによって、仕事と住まいの場所を切り離し、23区から都外に移住する人が増えている。まだ一部の人たちの動きだが、リモートワークが進めばさらに大きな流れになると考えられる」と話しています。

上記の1と3はこの報道のと通りだと思いますが、2が説明できません。 新型コロナの影響により、都外ではなく、明らかに都心を目指す人達がいます

理由は、おそらく、 仕事的にリモートワークができない人たちが、電車通勤による感染を避けて、職場に近いところに引越しをしているのではないかと思われます

とはいえ、絶対数としては1%以下の変動値であり、これがトレンドと言えるかは少し疑問があります

2021年不動産投資市場はどうなる!?

編集部からいただいたお題について考えてみたいと思います。主に東京の話になります

新型コロナの影響によって、東京都の人口が減少するとともに賃貸需要が減少すると言うトレンドは、じわじわと浸透してくると思いますが、世界的な大都市である東京が持つ機能と役割が変わることはなく、賃貸住宅の需要面で大きな変化はないと思います

東京の人口の推移も継続して見ていきたいと思いますが、マスコミの報道は若干オーバーな印象を受けます

要するに、東京の家賃相場が急激に大きく崩れるほどの変化が生じるとは思えません

一方、供給面はどうでしょうか?私の持論ですが、景気の悪いときに、いい不動産投資物件は市場に出てきません。全体的に表面的な値段は下がって来ますが投資適格な物件は少ないでしょう

特に東京は、外国人も注目する競争の激しい市場で、いい物件を購入するのは至難の技です

その上、景気の悪い時は、銀行も頭金を2割3割要求するなど融資の環境はあまり良くなくありません。2018年のかぼちゃの馬車の事件以降、銀行はすっかり不動産投資に消極的になってしまいました

以上のことから、2021年は、物件を買い進めて拡大するには2020年より厳しい年になると思います

ただ、だからと言って絶対に無理と言っているわけではありません。私が好きな言葉に

チャンスは準備をした人だけにやってくる

というものがあります。普段から勉強をして、いろいろな準備を怠らない人のところにはきっとチャンスがやってくるはずです

今年は皆様にいいことがありますように
お祈りしています

本年もよろしくお願いいたします