ドーモ、投資侍です。
全7回連載コラムの第三弾です。第一回のコラムでは不動産投資で何を得るのか目的によって物件の価値が変わるというお話をしました。第二回のコラムでは物件の良し悪しは物件本位ではなく投資者によって相対的なものであるというお話をしました。
本日の第三回のコラムでは物件は進化するというお話をしたいと思います。前二回のコラムでは以下のように投資対象が変遷してきました。
「救いようのないダメ物件」
↓
「都心2億円の60坪角地を20年分割払い6,000万円で購入する権利」
↓
「手出しなく7年後に都心2億円の60坪角地の地主になる権利」
これでもまだ「買い」の投資判断はできません。買いの判断ができるか否かは「地主になる権利」が更なる進化をする見込みがあるのかに注目します。
1. 新築投資の利回りは2つある
<利回り計算例①>
土地:2億円
建物:1億3,000万円
家賃収入:2,000万円
利回り:6.06%
これは一般的な表面利回りの計算方法です。ですが新築投資においてはもう1つ見るべき利回りがあります。
<利回り計算例②>
建物:1億3,000万円
家賃収入:2,000万円
利回り:15.4%
呼び方は色々ありますがワタクシは端的に分かりやすく「建物利回り」と呼称しています。
不動産投資は原則として建物で稼ぐ装置ビジネスです。製造業で言えば建物は製造設備に該当します。逆に言えば、土地は建物がなければただの土です。土は売却か駐車場にしなければ収益を生みません。
他方、建物は装置である以上、必ず劣化します。つまり、建物利回りは劣化資産に対する収益力・資金回収力を見るための指標です。
<利回り比較例>
(都心新築)
土地:2億円
建物:1億3,000万円
家賃収入:2,000万円
利回り:6.06%
(地方新築)
土地:500万円
建物:5,000万円
家賃収入:550万円
利回り:10.0%
いずれの投資が優れているでしょうか。両者の投資はそれぞれ何を得ることができるのでしょうか。
表面利回りだけ見れば地方新築の方が優れています。もっとも、地方新築投資で最終的に得られるものはなんでしょうか。
都心と地方は規模が違うのでグロスの差異を除外し、割合で比較をしても概ね以下のような違いがあります。
<地方新築で得られる物>
・建物建築費の資金回収に17年程度
・残債完済後に得られるのは再利用可能性が低い土地
<都心新築で得られる物>
・建物建築費の資金回収に10年程度
・残債完済後に得られるのは再利用可能性が高い土地
このように表面利回りという視点を外すと異なる投資の側面が見えてきます。
この建物利回りは「お土地様の力」と言い換えることも可能です。同じ建築費用をかけて建物を建てたとしても都心と地方では収益力が全く異なるのはお土地様が力を貸してくれるからでしょう。
ワタクシはこの「お土地様の力」を授かることこそが不動産投資の主眼としており、「お土地様」の中でも長年に渡って力の衰えることのない「スーパーお土地様」を求めて不動産投資を行っています。
2.「地主になる権利」の進化
「手出しなく7年後に都心2億円の60坪角地の地主になる権利」
再利用可能な土地は建て替えにより進化することが可能です。
つまり、7年後に地主になった後に建て替えを行えば建替期間を考慮しても10年後には都心RC利回り15.4%の物件を建築することが可能になります。
再利用可能な土地においては「地主になる権利」は進化して以下のように変貌します。
「手出しなく10年後に都心60坪角地にRC利回り15.4%の地主になる権利」
もちろんこれは「権利」であるため、10年後に必ず行使しなければならないというものではありません。築古のまま持ち続けても構いませんし、売却しても構いませんし、建て替えを行っても構いません。
更には、RCにこだわる必要もなく、木造でもS造でも構いませんし、何より10年後の不動産市況に合わせて最適な構造と間取りを選択することも可能です。10年後の市況によっては利回りを落としてもファミリー物件を建築した方が良い場合もあるでしょう。
言い換えれば、この投資で追加的に得られるのは「将来における多様な選択肢」です。
3.「買い」の投資判断はできるのか
「手出しなく10年後に都心60坪角地にRC利回り15.4%の地主になる権利」
+
「将来における多様な選択肢」
この権利を皆さんは購入するでしょうか。ここまで自分の投資対象を組み上げた上で最終的に購入するかは個々人の判断です。
ちなみにワタクシの結論は
「どっちでもいい」
でした。
今回の投資で得られる「RC利回り15.4%の地主になる権利」と「将来における多様な選択肢」は魅力的ではあります。ただ、以下の点は気になりました。
・負債が大きく増えるので管理が面倒になる。
・地主と言っても車で20分くらい離れているので遠い。地主になるなら犬の散歩コースが自分の土地とか言いたい。
・これくらいの物件であれば遭遇率はそれなりにある。
今回は結果的に購入してしまいましたが、買って正解だったかは市況の変化によって気持ちの変遷があります。
購入当時:どっちでもいいけど買えたならまあいっか
コロナ襲来期:買って失敗だったかもしれない
金融じゃぶじゃぶ現在:どっちでもいいけどどちらかというと買えて良かった(もう2年経つし)
つまり、物件を購入して良かったか否かはその時々によって変化する結果論的な側面もあるということです。
現在購入して良かったと思う理由の1つとして、この「RC利回り15.4%の地主になる権利」は更にあと2段階進化します。更に2段階進化できるなら特にリスクもないし良かったかなと思います。
今後の進化の詳細は本論からずれるためコラムには書きませんが、皆さんで考えてみると面白いでしょう。
以前ワタクシに株式投資の方がリスクも低くて儲かるのであれば、なぜ不動産投資をするのかという質問をした方がいましたが、これが数ある答えのうちの1つです。
このように投資家の属性・知識・経験・能力に応じて求める物も性質も進化・変貌するのが不動産投資のメリットだと思います。
4.なぜ建物利回りを語る人がいないのか
都心の不動産投資ビジネスや金融ビジネスに関与している人であれば建物利回りは馴染みの指標です。内部収益率や期待収益率を見る際には間接的に建物利回りも考慮に入れることになるでしょう。
ですが巷の不動産投資家のコラムなどの書き物で建物利回りについて触れているものをワタクシはほぼ見たことがありません。それは何故でしょうか。
「利回りが低いから都心・新築はやってはいけない投資である」
「地方は利回りが高く儲かる、都心は利回りが低く儲からない」
良く聞く言葉ですが、そのような人は都心デベロッパーが順調に純資産を積み上げ成長を続け、地方デベロッパーの多くが低迷していることの理由を理解できているのでしょうか。
不動産業は既に50年以上の歴史がある学問的には研究し尽された事業です。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とはよく言ったもので、10年やそこらの不動産投資の経験者から学ぶのであれば、歴史から不動産投資を学ぶことも選択肢として考えた方がいいでしょう。
建物利回りの重要性は自分で新築物件を持って決算書を作れば誰でも気づくはずです。では翻ってなぜ巷のコラムニストは不動産投資で当然考慮されるべき建物利回りについて語らないのでしょうか。理由は推して知るべし。
もっとも、ワタクシは地方の新築投資が必ず失敗すると言っている訳ではありません。建物利回りが低くても成功する投資はあると思っています。ただし、建物利回りが低い投資は、既に見えている将来のリスクを必ず回避した上で投資を行わなければなりません。
皆様が成功者と認識している巷の投資家は本当に成功者なのか。表面利回りだけを強調し、純資産の積み上げは薄く、将来のリスクに対応できていない投資家が実は皆さんの周りにいらっしゃるかもしれません。
今一度ご自身の投資判断と周りの投資家のことを見直してみると良い学びになるかと思います。
そしてワタクシは声を大にして言いたいです。
「都心はコロナでオワコン!これからの時代は郊外でリモートワークだからみんな都心の物件なんて売って郊外に引っ越そう!!」
投資侍より
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