ドーモ、投資侍です。
全7回連載コラムの第5回です。折り返しが来ました。
最近不動産も株もやることがなくなって投資活動が停滞気味です。株式市場も不動産市場もコロナ禍の金融緩和によるバブル感が半端ないですが不動産バブルは実需と一部都市部のみに留まっているため実感のない方も多いかもしれません。
もっとも、各国でコロナワクチンの摂取が開始されており、ワクチンが行き渡った後の株式市場と不動産市場は正直予想ができません。
ですがワタクシの過去の投資経験からのスタンスとしては、「上がるか下がるか分からないときは動かない」「上がる時に上がる物を適切な量だけ買う」というスタンスです。
現時点では株と不動産と現金のバランスが自分なりに整い、今後市場が上がっても下がっても儲かる状態になったと思っているので、しばらく様子見をしたいと思っています。
さて様子見ができるというのは投資保有耐性の賜物だと思っており、言い換えれば「様子見ができる状態」であることだと思っています。
さて本日は投資における保有耐性のお話です。
1.投資におけるリスクは時間軸が大事
不動産投資における保有耐性とは何か、という点については人によって考え方にバラツキがあるように思います。
ある人は「CFが出る物件」こそ保有耐性があると言い、またある人は「買値以上で売れる物件」こそ保有耐性があると言います。
しかしながら、「CFが出る物件」も将来において常にCFが「出続ける」ことが保証されるものではありません。また、「買値以上で売れる物件」も将来において買値以上の価格を「維持し続ける」ことが保証されるものではありません。
それは過去の歴史が証明しています。
つまり、保有耐性とはある一時点ではなく将来における継続性を見なければなりません。ワタクシはこれを「時間リスク」と考えています。
投資の保有耐性は時間リスクが全てと考えています。特に不動産投資は現物投資の特性から時間リスクの振れ幅が大きいとの持論です。
2.時間リスクと保有耐性
ワタクシは保有耐性について、短期(1-3年)・中期(5-10年)・長期(20年以上)に分けて考えることとしています。
これは時間軸によって投資物件の見るべきリスクが異なってくるからです。
<新築投資の場合>
短期リスク:建築リスク、入居付けリスク、入居開始までのCFリスク
中期リスク:賃料下落リスク、減価による価格下落リスク、修繕リスク
長期リスク:売却リスク、解体リスク、修繕リスク、流動性リスク
新築投資の場合は短期のキャッシュアウトリスクと中期の賃料下落&減価リスクが大きいと考えています。
逆に言えば、短期のCFなく潤沢な手元資金で行い、かつ、建物利回りが高い投資物件であれば減価分を回収できるのでリスクが抑えられることとなります。
このリスクを具体的な物件に落とし込んで考えてみましょう。
(例:都心木造新築物件で建物利回り25%)
短期リスク:建物建築費用は約5年で回収、6年目以降は建物が土地分の融資を返済
中期リスク:土地の価値が高い物件であれば、中期においてそれ以上の減価のリスクがない
長期リスク:土地の再利用可能性が高ければ売却でも流動性が高く、建築でも複数の選択肢を取ることが可能
他方、建物利回りが低い田舎の新築物件の場合は話が異なってきます。
(例:田舎木造新築物件で建物利回り11%)
短期リスク:キャッシュ周りが良い反面、建物利回り11%程度の新築木造物件であれば建物建築費用を回収するだけでも15年近い
中期リスク:土地の価値が低ければ中期においても減価し続けることになり将来的に減価分を土地の価値が下支えすることもない
長期リスク:土地で売却できなければ建物付きにて擦り切れる価値で売却するほかなく流動性リスクも高い
つまり、田舎の新築木造投資は短期CFを得るために中長期では都心新築木造投資とは異なるリスクを抱えているということです。
そのため、田舎で新築投資を行う場合には、減価が進む前に売却をするというのが1つのリスクヘッジと最適な投資手法の1つだとの考えに至ります。実際に有名コラムニストで田舎の新築投資を行っている人は5年程度(遅くとも大規模修繕が必要になる10年程度)で売却することを想定している人も多いでしょう。
逆に言えば、優れた投資家としては有名コラムニストの田舎新築物件の出口で絶対に買ってはいけないということです。買うなら中期と長期のリスクを割り引いた価格で買うべきですが、おそらくその価格では買えないでしょう。
・ワンルームゴリラによる新築ワンルーム投資嵌め込み
・HMによる新築サブリース投資嵌め込み
・田舎新築投資家による新築出口嵌め込み←←←NEW!!
どれも売主に利益を吸われるという点では大差ありません。
良い子の投資家は「有名なコラムニストの方の物件だから良い物件に違いない」などと考えないようにしましょう。
それは「有名なコラムニストが利益をしゃぶり尽くしてリスクを抱えた爆弾物件の可能性が高い」ということに思い至らなければなりません。
さて次はワタクシの実例を踏まえて考えてみましょう。
<投資侍の築古投資の場合>
山手線内側駅徒歩5分以内の築23年軽鉄1億9,000万円フルローン、利回り5.9%
短期リスク:低利利回りによるキャッシュアウト、修繕リスク、築古による空室リスク
→手元流動性、税務CF、他の築浅物件CFで補う
中期リスク:修繕リスク、建替リスク、6年で完済できるのでCFリスクはなし
→7-15年目が一番重い。保有し続けるにしても建て替えにしてもCFに負担がかかりやすい。建て替えの場合は最低でも3000万円以上のキャッシュアウトが出る
長期リスク:完済済みで再利用可能性が高いのであまり気にしない
→建物利回り15%以上の新築RCが建てられれば安定
ワタクシの今回の築古投資物件で一番リスクが大きいと考えているのは中-長期への移行期におけるキャッシュアウトリスクです。これはほぼ必然的に起こるものと考えています。
そのため、今回の物件に投資にするに当たり、余裕資金を3-5,000万円程度は別枠で銀行口座に保管しています。これは使わない現金です。
このように将来のリスクに対処するための貯蓄をワタクシは
「賢い貯蓄」
と呼んでいます。
この「賢い貯蓄」は投資段階で貯蓄しておく必要はありませんが、どこかの時点で必ず必要になる貯蓄です。仮に投資段階で「賢い貯蓄」ができない場合には、どの時点で「賢い貯蓄」が完了するのかも投資判断に加味しなければなりません。
この点について、現在の銀行金利はゼロ金利ですから預金口座にお金を置いておくことに金利メリットはありません。逆に不動産に投資した方が利益を得られるということを考える人も多いでしょう。
しかしながら、将来において見えているリスクに対する余裕資金を置いておくことは投資において有益なこととワタクシは考えています。
過去において投資に失敗する人は全て「賢い貯蓄」ができない人たちです。
読者の皆様が考えている以上に、人間は強欲で愚かです。
目先の利益に捉われて、適切なリスク分析ができず、「賢い貯蓄」ができないままに将来のリスクが現実化した時に損失を被るのです。
3.不動産も株もFXも同じ
このリスク分析は株式やFXでも同じです。
例えば、JT株は配当利回りが7.5%程度です。JT株に投資する人の多くは株価が下落しても配当が貰えるから長期で持てば損はないと考えます。
しかしながら、現実として過去5年で株価は半値以下になりました。
JTは短期で見ればCFを稼ぐかもしれませんが、中期的には主要事業が縮小傾向であり、機関投資家が投資を行わない銘柄であるため長期の株価下落は必然です。
JT株に投資をする人は中期-長期リスクが見えておらず、短期の配当利回りだけ見て購入した人でしょう。
次に、FXで言えばトルコリラです。金利は上下にブレながらも概ね8.00%程度で推移しています。トルコリラを買った人の多くはトルコリラが下落しても配当が高いからカバーできるだろう、5年で4割も下がるはずがないと考えていたかもしれません。
しかしながら、現実は5年で70%近く下落しています。
トルコリラも政情が安定せず、新興国経済はGDPがブレやすいという性質があるほか、トルコはイスラム金融国家であるため欧米国際金融との金利思想ギャップが大きい通貨です。また、実需がなく投機マネーが主体のため危機時に真っ先に暴落する通貨であるため数年に一度必ず暴落する性質を持っており中長期保有の通貨ではないのです。
トルコリラを購入する人は中期-長期リスクが見えておらず、短期の金利だけ見て購入した人でしょう。
株もFXも不動産も同じということです。
具体的には投資対象の中身をしっかりと見た上で短期・中期・長期の保有耐性を考えなければなりません。
投資における保有耐性とは、言い換えれば
将来のリスクを見極めリスクに対処する「賢い貯蓄」をすること
と考えています。
Twitterで素晴らしい格言を以前見かけました
「無理な投資をしていると、本来は買うべきところを売らされる。」
これが真理と心得ています。
投資侍より
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