私は気になる物件があれば売りに出されていなくとも登記をとってなんだかんだと考えるただのマニアなのですが、6年ほど前に気になる謄本がありました。

 

それが表題の「築14年RCを表面利回り21.7%で買った」謄本です。

 

私はストーカー気質のある人なので、気になると徹底的に聞き込みする癖があるのですが、この物件を買った人(以下、彼といいます)が気になり、彼のことを調べました。

まず、勘のいい人はピンとくると思いますが、この物件を彼が購入したのは最近ではありません。2013~2014年のアベノミクス発動(黒田バズーカ発動)以降ではありません。

さすがにアベノミクス以降に表面利回り20%代で築15年前後のRCを買った事例はなかなかないのではないでしょうか。あったら本当に凄いと思います。

 

彼がこの物件を購入したのは平成21年10月(2009年)です。2008年9月のリーマンショック発生により株が暴落し、やや遅れて暴落した不動産の底に近い状況で購入しました。

(ここで「あぁ、やっぱり」と思う方もいるのではないかと思います)

 

購入時(平成21年10月時)のスペックは以下の通りです。

 

【物件スペック】

構造  RC2階建て

築年数 14年

部屋数 12戸

間取り 3LDK

駐車場 各部屋に2台ずつ計24台分

家賃  1部屋65,000円(駐車場2台込み)

年間家賃収入 936万円

物件取得価額 4,300万円

表面利回り  21.7%

(フルローンで購入)

 

また、これは後日談ですが、この物件を彼は7年間保有し、平成28年(2016年)に関東の方に8,300万円、表面利回り11.2%で売却し、出口の確保に成功しました。

平成28年の売却当時のこの物件の築年数は21年、スルガショック前だったので融資もフルローンで通りました。(融資したのは都銀です)

結局彼は7年間の間21.7%でインカムゲインをとり、7年後に倍近い金額で売却し、キャピタルゲインを得たという話です。

 

今回の話は私が彼の周りを嗅ぎ回るという話です。

 

彼はこの他にも高利回りの物件を所有しており、登記マニアだった私は彼の所有する他の物件を見つけるとその経緯を聞きまわっていました。

経緯を聞きまわるといっても難しくはなく、割と簡単にできてしまうもので、

①管理会社の看板が物件に貼ってあるのでそれを見る

②その管理会社に勤めている人に聞く

というものです。

その不動産会社に知り合いがいたり、一緒に飲みに行くと経緯を聞けると思います。もし機会があれば不動産屋の飲み友達や横のつながりができるのでやってみるといいと思います。

([注]一応付け加えますがコミュ力の低い人はやらないほうがいいですよ。)

 

 さて、私は当時、彼にどうしても会いたいと思っていました。不動産マニアであった私にはどういうわけか彼はアイドルのような存在になってしまっていました。

 私は彼に会ったことがなく、すべて管理会社の営業からの又聞きだったので、彼をすごい人だと思い、会って話をしたいと願っていました。そんな折り、彼の所有する物件の管理会社主催のオーナー同士でバーベキューをするという懇親会の企画があり、

「彼もバーベキューに来るよ」

と管理会社の営業が私に言うではありませんか!

私はオーナーとして参加できるのでもちろん参加すると答えました。

 

懇親会当日になり、バーベキューが始まりました。私は彼と話してどんな人で何を考えてきたのかを知りたかったですし、質問も用意していましたのでそれとなく周りを見回してみました。しかし、

「ん?」

見回してみてもそれらしい人はわかりません。

仕方がないので管理会社の担当に聞くと、

「○○さん?あぁ、あそこに座っている人だよ」と言われました。

 

そちらを見ると・・確かにいました。

 

というよりも、さっきからずっとそこに見えていたのですが、「たぶんこの人じゃないだろう・・」と思った人でした。

そこにいたのは、一言でいうと、

パチ屋にいたら保護色になるのでいたのかどうか思い出せなくなる人

でした。

 

彼は長く伸ばした白髪を後ろで一つに結び、ちょっと派手な色の柄シャツにベージュのチノパン、サンダルという

「え?

さっきまでパチ屋にいたよね?

ここにはパチンコ打ってから来たよね?」

というファッションに身を包んだ老人でした・・・。

 

 私は若干引いてしまいましたが、それでもなかなかない機会なのと好奇心が勝り、この老人と話をしようとしました。しかし、この老人、まったくしゃべりません。

いやいや、バーベキューだしビール飲んでるんだから陽気に話そうぜーというような私のフリは終始ガン無視され、ほとんど何も話すことはできませんでした。

というか、この老人はほとんど誰ともしゃべりませんでした。

 

私は内心、

「ちょ・・・、何しにきたんだよ。何か話してくれよ・・・。」

と思いながらその場はお開きになったのですが、後日、その話を管理会社営業にすると、

「あぁ、○○さんでしょ。いつもあんな感じだし、楽しんでたと思うよ。というか、いつもより楽しそうだったよ」

と言われました。

管理会社曰く、彼は「いつも電話でもぼそぼそとしゃべるし、何考えているのかよくわからない人」だそうです・・。

 

【まとめ】

まとめてみると、

①見た目ではいくら持っているかわからない人がいるので人を見た目で判断してはいけない

②結果は超弩級でもそれが彼の実力とは限らない

ということでしょうか。

 

②についての理由は当時の話を聞き込んだ内容から判断したものですがその概要は以下のとおりです。

 当時のこのエリアは田舎なこともあり、このエリアを物色するような投資家がほとんど存在せず、地主は話が通じないか新規の物件の購入には興味のない人がほとんどという、プレイヤーが極端に限られていた状態だったようです。

よって管理会社や物上げ担当は収益物件の出物があったりすると他に行くところもなく、彼に見せに行っていたそうですが、彼は容易に首を縦にふらなかったそうです。そしてたまに「買う」と言ったいくつかの物件を買った結果、今に至るそうです。

 上記の物件の売却提案時も管理会社が「今が売り時ですよ」という提案をしたところ、「うん」と言っただけだそうです。

(その他にも後日、彼が2009年のリーマンショックが吹き荒れる当時に買えた理由や現金を多額に持っていた理由を聞いたのですが、それはここには書けません。)

 

 彼がリーマンショック時の逆風時に買い向かい、融資を引く財力も胆力もあったということは事実なので彼が凄腕の投資家であることは結果が証明しています。

 また、売り時もここが一番高値で売れるという時期に売っていますので時勢を見る目があるのは確かだと思います。

 

 しかし、私には現物の彼を見る前と後のギャップが激し過ぎました。それほど思っていたのとは違う、何のオーラもない老人でした。

私は上記を総合的に勘案して、

「彼は運が良かった」のだと結論づけました。

たぶん運(又はその時期)は最重要な要素なんだろうと思った話でした。