私の出会ったある不動産屋の話です。
【初めての邂逅】
私が初めて物件を購入した7年ほど前は安い物件が少なくなってきていましたが、それでもまだ割安な物件は存在していたと思います。
私は当時は物件数が少なく、運用実績も少ない状況だったので、物件を購入する際の銀行融資は毎回苦戦しました。
全空や築古ばかりを購入していたからということもありますが、結果的には苦戦して融資を引けたのが今の時点ではよかったと思っています。
私が彼と出会ったのはそんな7年前で、場所は2棟目の決済会場となった銀行内の一室でした。
当時の私は決済経験が少なく、段取りもよくわからないことが多く、銀行や仲介業者のハンコや伝票記入に気をとられていました。
また、任意売却だったこともあり、債権者として自治体も参加していたので総勢で10人近くがその銀行の一室に集まっていました。
売主は破産することが決まっており、委任状のみで決済会場には顔を出しませんでしたので、その場にいた人は私と司法書士の先生以外は業者か債権者という面子でした。
銀行も自治体も滞納分が滞りなくちゃんと自分のところに戻ってくるかどうかが焦点だからか、皆私にはあまり興味がないようで、私は無視されがちでした。
(私は、「こういう時って買主は脇役なんだな」と思いました)
その中に、さっきまでいなかったはずなのにいつの間にかそこにいた人物がいました。
それが今回の人物です(以下、彼といいます。)
彼はそこに静かに座っていて、着金確認が終わった頃に何もせずに帰ってしまいました。
私には何の説明もなかったですし、お金のやりとりをするわけでもなく、何をしにきたのかもわからなかったのですが、彼は印象に残りました。
なんとなく、雰囲気が3月のライオンに出てくる「喪服の死神」滑川7段に似ていたからです。
(『3月のライオン』第12巻104頁より)
彼はシャツ以外は上から下まで全て黒でした。髪型もオールバックでそのままでした。
そして、どういうわけか、アカギが「あんただろ…?俺の対戦相手…!気配がまるで違うよ… そこだけ温度が低い……」と言ったときの盲人市川っぽい感じがありました。
彼が去る際に、仲介業者が彼に向かって一礼したのも印象に残りました。
私はストーカー気質なので、彼のことが気になってそれとなく聞きまわりました。
名前もなぜ決済会場にいたかも仲介業者に聞いたのですぐにわかりました。
彼はあんこ業者の方でした。
その後、複数の不動産屋に彼の話を聞くと、彼は割と名を知られた存在で、近隣で長く不動産屋をやっている人なら皆知っているという人物でした。
【2度目の邂逅】
それから約3年後、私はもう一度彼に会いました。
場所は私が買主の決済会場で銀行の一室という、同様のシチュエーションでした。
今度はこじれた相続系の案件でした。
その時の決済では相続税の納付書を売主がその場でやりとりするという一幕がありましたが、私は黙ってそれをスルーしました・・。
さて、彼はやはり静かに部屋に入ってきた後、黙っていました。
彼は以前と同じく、全身真っ黒で髪型もオールバックで存在感がありました。
決済が進み、着金確認までのインターバルの間、よくある雑談になりました。
その時の仲介業者は私が以前彼のことを聞いた人物だったので、私が彼に興味があることを知っており、その時に私に彼を紹介していただけました。
彼と名刺を交換すると、こういう名刺をいただきました。
【まとめ】
彼は長年この○○不動産屋に勤めており、現在の待遇は自由出勤待遇だそうです。
対外的に必要なためこの肩書きの名刺をもらっているそうです。
このエリアでの経験が長く、地主との付き合いも長いため、いわくつきの案件や難易度の高い案件を円滑に取引するためには彼がいると取引しやすいことがあるそうです。
彼は宅建5点免除士ですが、周りの仲介の彼への態度や決済後に彼が接待されているという事実から、彼は相当な実力者だと判断しました。
その後も彼はいわくつきの案件に関わっており、彼の関わった取引をいくつか聞きました。いずれもごちゃごちゃした案件で高利回りの案件でした。
また、彼は話をしてみると感じのいい話し方をされる方でした。
(ただし、目の奥に黒い闇の部分があるのはずっと変わりませんが)
物腰のよい話し方で、周りの業者に聞いても彼はいい人で義理堅い人だという評価ばかりでした。
私は彼がそういう人物で長年の間、不義理を今までしてこなかったからこそ周りからの敬意を勝ち得たのだと思いました。
不動産は「縁」であるとは楽待のコラムやコメントでもよく目にするかと思いますが、私は彼を見てそう思いました。
出会いやつきあいを大切にし、不義理なことをしない人が長年生き残るのではないのかな?と思った話でした。
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