私は小さなビジネスをバーターにして生活する「7足のワラジをはく男」だが、そのうち65%の収入源はソフトウェアの受注開発である。
そして私は前々から、システム屋の仕事が、リフォーム工事と非常に近いと感じていた。
商流というか、構造がよく似ている。
イルカとサメはまったく異なる進化の歴史をたどったが、ほとんど同じように尾びれで推進力を得て、胸びれで方向を転換し、下からサカナにくらいつく。
つまり環境と構造が同じであれば、同じような習性を獲得するということだ。
というわけで(!)私はリフォームにかかわる業者さんの気持ちや、習性が理解できるということになる。
今回は、システム屋の私が日頃なにを考えているかを、身バレしたらマズいレベルで赤裸々に告白する。リフォーム業者も、似たようなことを考えているという「仮定」でご覧いただければと思います。
危険率を見積もる
はじめて取引するお客さんは、要求の難易度、コミュニケーションの相性、仕上がりに厳しいかどうか、など業者としても分からないことだらけである。
このような一見(いちげん)のお客さんに対しては、一定の「危険率」を見積もる。
追加作業が結局サービスになってしまうこともあるので、最初からその分を見越して高く出すわけだ。
「ざっくりでいいから、概算で」と言われたら、ここぞとばかりに高く見積もる。
「これからも継続して発注するから、安くしておいてね」と言われることもあるが、ほぼ無視する。
そのようなことをアテにしていては、プロの技術者としてはやっていけない。これで痛い目にあった同業者をたくさん見てきたので、そのつど採算が合うように金額をはじく。
値切り対策
お客さんに「高い」と言われたら、私はその根拠をたずねる。
その根拠が相見積もりだとしたら「安くできる業者があってよかったですね」と言う。
だって・・そうよね?
安い店があるんだから、そこで買えばいいやん。
相見積もり自体は全く問題ないが、だからといって四の五の言うメンタリティーが、業者の私としては気に入らない。
毎回イヤな思いをさせられるの確定。長く付き合う気にはなれない。
予算が少ない場合は、総額を値引くこともある(男気)。ただし、次で必ず利息分をプラスして回収する。
単価の値下げには応じない。なぜなら、単価を下げてしまうと、今後ずっと安く使われることになるからだ。
もう一つの値切り対策として「ネゴしろ」という言葉を紹介しよう。
あらかじめ高く値段を提示し、交渉(ネゴシエーション)を吸収する余裕(「のりしろ」の「しろ」)を持たせておくのだ。
たとえば300万円かかる工事に対して350万円の見積もりをぶつける。差額の50万円が「ネゴしろ」であって、これは最初から捨てるつもりだ。
頻繁に値引き交渉をするお客さんに対しては、私は必ず「ネゴしろ」を設定する。案の定値引き交渉があったとしても、被害はゼロ、もし交渉がなかったら丸儲け。
つまり、頻繁に価格交渉をするお客さんは、結果的に多く払うハメになる。
お客の性質を見定める
私はお客さんの性質を知るために、相手のフトコロ具合をざっくり試算する。
たとえば「このソフトウェア導入で人が1人減らせるとしたら、毎年500万円浮くんだね?ふ~ん」みたいな皮算用だ。
クチでは「チームが~」とか「みんなで~」とかカッコいいことを言うけど、儲けはひとりじめなんやね、値切ってくるのね、などと考える。これでケチケチ度をはかる。
業者も霧を食って生きているわけではなく、利益を出す必要がある。
その点について、あまりに無頓着な相手だと「言われたことしかやらないモード」に突入する。
逆に、こちらの都合を考慮してくれるお客さんは、モテる。
業者としても、こういうお客さんには成功してもらいたいと思うので、良好な関係になりやすい。
業者をあざむいて安く使おうと思っても、多分ムダである。
こっちは何回おなじことやってると思っとるんや?
バレないわけがない。
工事に着手したあとに価格交渉する、これは一種のだまし討ちである。
「ホトケのエンジニア」として知られる私ですら、着手後に値切られると、60兆個の細胞すべてを総動員して怒る。
攻略法
以上、私のエンジニアとしての習性をふまえた上で、リフォーム費を安くおさえ、なおかつ良好な関係を築く方法を考える。
まず、なにをどうしたいか、いつまでに仕上げたいかを決めてしまおう。見積もり依頼する時点でフワフワしていると、どうしても高く見積もられてしまう。
予算オーバーなら、実施項目をとりやめて値段を下げよう。
たとえば「和室の洋室化と洗面所交換はキャンセル」みたいなことだ。買うのをやめただけのことで、これは何の問題もない。
一番重要なことは、業者をだまそうとしないことだ。
小手先で安くしようとしても、ほとんど意味がないどころか、あなたの信用を失墜させてしまう。
逆に最も安くなる方法は、業者の男気スイッチを押すことだと思う。
「お金がないから、なんとか安くなりませんか」と正直に言われれば、いろんなオプションを引き出すことができるはずだ。
ありきたりな結論だが「知り合いに紹介してもらう」のがベストかと思う。
紹介する人とされる人、2人がかりで男気スイッチを押しているようなもので、この状況でサービスしないのは逆にむつかしい。
安くしてもらったら「損させてない?ちゃんと利益出てますか?」など相手の都合にも配慮したい。
お互いに儲けましょうという姿勢があれば、きっと良好な関係を築くことができるだろう。
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