それでは、ともに賃貸需要が見込める東京(東京23区に隣接する市)の新築アパートと地方(県庁所在地に隣接する市)の新築アパートについて、融資も含めて税引き後のCFについてテリシムライトを使って考えてみましょう

収支シミュレーションの条件

まずは、物件の仕様です

Sさんは、社宅暮らしということもあり、住居費がかからなかったため、約1500万円の貯金があります。今回の不動産投資では1000万円を頭金にして、諸経費は預金から払おうと考えています

諸経費は、販売価格の6%ぐらいがかかるので、東京で400万円、地方で300万円かかるようです

今回紹介された地方の物件も東京の物件も、提携ローンがあり、金利2%、期間22年(法定耐用年数)でローンが組めるようです

テリシムライトでは、
①購入年:1年目
②完済年:22年目=減価償却の終わる年
③完済年の翌年:23年目=スーパーCFが始まる年
と3つの年について計算してみましょう

3つの年ごとのシミュレーションの条件は、以下のようにしました

新築の1年目から22年経って、家賃は20%下落、空室率は5%発生、その他経費も15%⇒20%に変化するという条件ですが、大体このぐらいでいいと思います

もちろん、東京(東京23区に隣接する市)と地方(県庁所在地に隣接する市)で22年後の空室率や家賃下落率が同じということに異論がある方もいるかも知れませんが、私はケースバイケース、どちらがこの点で勝つのかは予想ができません。少なくとも現在は需要が確実にあり、人口も増えている場所です。よって、同じとしました

テリシムライトでは以下のシートを用意しました。面倒くさいかもしれませんが、シートコピーを使えば、すべてを入れ直さずに簡単に作成できるはずです

私のHPには、サンプル04としてこの結果が掲載されています

東京の新築アパートの場合

それでは、東京の新築アパートの場合の税引き後CFを見てみましょう

残念!東京23区隣接市の新築アパートで、表面利回り7.8%では、頭金を1000万円入れても、22年間黒字経営は難しいようです

1年目104万円でスタートした税引き後CFは18年目から赤字になってしまうようです

私がいつも言うように、くれぐれも購入年:1年目のシミュレーションで税(所得税・住民税)引き後のCF104万円だけをみてFIREを考えたりはしないでください

よく1年目のCF計算だけパパパッと計算して、CFがこれぐらい黒字だから22年目も大丈夫だろうと言う人がいますが、私であっても、22年目の税引き後CFを即座に計算することは不可能です

税引き後CFは、最初が黒字でも、だんだん悪くなり、ローン返済の後半は、CFが赤字になることはよくあります

おそらく、

表面利回りがもう少しいい=不動産価格が安いか、家賃がもう少し高ければ良かったかもしれません。あるいは、木造であっても30年の融資が受けられば、税引き後のCFはプラスをキープできたかもしれません

しかし、何度も言いますが、計算してみないと10年後、20年後の税引き後CFが黒字か赤字かなんて分かるはずがありません

ただし、23年目からはスーパーCFになり、年間282万円もの税引き後CF=手取りが得られることになります。後半の赤字を我慢できれば、長期に保有してもいいのかもしれません

ただ、頭金として1000万円を出費していることを忘れないようにしてください

地方の新築アパートの場合

それでは次に、地方の新築アパート税引き後CFも見てみましょう

22年間ずっと黒字をキープできそうですね

22年目には税引き後CFが年27万円と減少しますが、23年目からは年間231万円もの税引き後CF=手取りが得られることになります

まったく問題がない投資ができそうですね

つまり、地方のベットタウン的な都市(地方の県庁所在地に張り付いているような市)で、安い土地を見つけてアパートを建てることができれば、比較的リスクを低く抑えて、不動産投資ができそうです。ある意味、これが、地方の不動産投資の王道的なものの気がします。もちろん、結論は、収支シミュレーションを行ってから出さいないといけません

ただ、投資の採算を考えるとき、頭金として1000万円を出費していることを忘れないようにしてください

東京と地方、2つの税引き後のCFのグラフを重ねてみましょう

融資の条件が同じなので、この2つ例において税引き後のCFに違いが生じたのは

・土地の値段の違い
・表面利回りの違い

にあります

土地の値段と利回りともには地方に有利に働いています

実際、22年間の税引き後のCFの累積額は

東京:約750万円
地方:約1700万円

地方の方が1000万円も多いことがわかります。頭金1000万円を引けば東京の方はCFのトータル収支も約250万円の赤字になってしまいます

やっぱり、地方の不動産投資の方が儲かるのでしょうか?

注意:累積の税引き後CFは、グラフの面積から簡易的に求めています

さて、あなたなら、Sさんに東京と地方、どちらの新築アパートを勧めますか?

Sさんにも聞いてみましょう

「なるほど、地方の方は、22年間ずっと、税引き後のCF、つまり手取りがプラスなんだ。それに比べて、東京は18年目から赤字かあ。CF赤字はいやだよなぁ

それに、頭金1000万円を引いたら、東京の方は、累積のCFも約250万円の赤字になるのか?

せっかく不動産投資をするなら、1円でも多く稼ぎたいし、勝負あったね。ここはやっぱり地方で利回りのいい新築アパートを建てるので決まりだ。投資って、結局、安く買わないと儲けられないということなんだな」

結論が出たようですね。でも、実は、Sさんもちょっと、もやもやしているんです・・・どうしてでしょうね??

(つづく)

本コラムの収支シュミレーションのテリシムライト:Excelファイル(サンプル04)は私のHPからダウンロードすることができます。参考にしてみてください