投資用物件を取得すると同時に火災保険にも加入するのが一般的ですが、火災のリスク(規模や発生の可能性)を最小限の抑制したり入居者の安全を確保するための防災対策も大切です。
防災対策が義務付けられる条件
必要な防災対策は物件の規模や用途により変わります。
詳細情報は個別で確認する必要がありますが、最低限の知識があれば物件選びの上でも一つの判断基準になります。
一般的に延べ床面積が150㎡以上の防火対象物(一般の戸建住宅を除いた建物全般)は消防法による防火対策(消防用設備の設置、点検、報告など)の義務が定められています。延床面積150㎡ということは単純計算で4部屋の場合だと1部屋辺り40㎡弱、6部屋の場合だと1部屋辺り30㎡弱ですので、比較的小規模なアパートでも該当してしまいそうです。
防火対象物には『不特定多数の人が出入りする店舗や縮約施設、災害時の避難が困難と予想される福祉施設や幼稚園などの特定防火対象物』と『特定の決まった人しか出入りしないマンションなどの非特定防火対象物』の2種類に分類されます。
住居系不動産であるマンションやアパートなどは比較的火災のリスクが低いとされる非特定防火対象物に該当しますが、物件取得時は非特定防火対象物であったとして、増改築やリフォームにより利用用途が拡張され店舗が追加される場合は、特定防火対象物件として条件が変わる可能性があります。
必要な対応策と違反時のペナルティ
防災対策が義務付けられている建物には、一般的には以下のような義務が発生します。
(細かな条件や設備の設置基準などは物件規模や用途により変わります。)
・消化設備の設置(消化器、スプリンクラーなど)
・警報設備の設置(火災報知器、非常ベルなど)
・避難設備の設置(非常階段、避難はしご、誘導等など)
・消化活動上の設備(排煙設備など)
・消防用設備の機器点検(半年に1回)
・消防用設備の総合点検(1年に1回)
・管轄消防署への設備点検結果の報告(3年に1回)
(※特定防火対象物は1年に1回)
・所定講習を受講した防火管理者の選任(収容人数が50人以上の場合)
(※飲食店や販売店などの場合は30人以上の場合)
・消防計画の作成、届出(収容人数が一定以上の場合)
(※飲食店や販売店などの場合は30人以上の場合)
実際にはこれらの必要性を理解していない家主も多いため、消防署による立入検査などで対応不足に気付くケースも多いです。
指摘事項を迅速に対応できれば大きなペナルティを受ける可能性は低いですが、改善が見込めなければ管理責任を果たせていないとしてペナルティが課せられるてしまいます。
・点検報告義務違反(30万円以下の罰金または拘留)
・維持管理義務違反(30万円以下の罰金または拘留)
・消防設備の設置命令違反(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
・違反対象物件として消防署のHPなどで公表される
・施設利用についての禁止、停止、制限などの命令
※上記の他にも命令違反に対する罰則にはさまざまなものがあります。
防火対象物の関係者は主に『所有者』『管理者(管理会社)』『占有者(入居者、テナントオーバー)』の3種類に分類されます。
住居用のアパートの場合、基本的には家主が上記の責任を果たす必要がありますが、テナントなどとして利用される場合は、責任の所在(実施義務や費用負担)を明確にしておかないと後々トラブルになる恐れがあります。
火災保険への影響
通常、不動産市場で売買されている物件であれば火災保険に加入することで、万が一の場合でも補償対象になります。
(もちろん、補償範囲や特約の範囲によります。)
ただし、個人間で売買をしていたり、購入した物件を個人でセルフDIYした物件だと、最悪の場合、火災保険を満足に受け取れない可能性もあるため要注意です。
火災保険会社により判断基準は変わりますが、一般的に以下のようなケースが考えられます。
・不動産登記さえされていれば特に問題はない(施工内容や材質は不問)
・建物面積や構造判定が変更になるタイミングで申告が必要になる
・会社ごとの規定や定款によって個別に判断される
特にセルフDIYなどを実施した場合、物件の品質を高めるためにリフォームしたつもりだったものの、施工方法や素材選びに誤りがあり、結果的に防火性能を損なってしまう恐れもあります。
特に建築面積や構造判定、利用用途の変更などがあった場合は保険適用が継続されるかを把握しておくべきです。
購入前に把握しておきたい維持費用
物件の規模が大きくなれば、その分、管理コストが増え運用が複雑になる
のは当然ですが、消防法については一定の規模を超えた途端にさまざまな義務や制約が増えてしまいます。
物件規模が大きくなればその分設備や点検の費用も増加します。
当然、その分、利回りやキャッシュフローにも影響が出てきます。
本来であれば管理費用や固定資産税と同様、購入前に考慮すべき費用の
はずですが、その辺りを言及している情報(書籍やサイト)は少ない気がします。
経験が少ない大家には軽視されがちですが、入居者の安全確保は物件所有者の大切な義務です。
最低限の知識は身につけておきましょう。
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