北国の大家です。

いつもコラムをお読み頂き、ありがとうございます。

皆様から頂いた「コメント」「いいね」が執筆の励みになっています。

本当にありがとうございます!

<鶏白湯Soba>

濃厚かつさっぱり、最近はこんなラーメン(そば)がお好みです。

 

前回のコラムでは消費税について書きましたが、多くのコメントを頂き本当にありがとうございます。

10月からINVOICE制度が始まります。

事業者登録は3月までだったのが、9月までに延長になりました。

時間的余裕が出来たので、不動産投資とINVOICE制度について皆さんと考えたいなと思います。

消費税やINVOICEのテーマは今回で最終回としますが、お付き合い頂けると嬉しいです。

ちなみに暴露ネタでも、制度批判でもありません(汗)。

経営者なら多くの方が知っている事ですのでご安心を。

今回私がお話しするのは、不動産賃貸業ではやや実感しにくく、一般の実業系だと普通に感じておられることです。

前回皆様からコメントで頂いた、消費税を消費者が負担している意識は私にもあります。

消費税の趣旨や法の理念らしきものに関しても、皆で広く薄く負担すると言った一般的な感覚も持っています。

但し実務的な観点や経営者視点だと違う印象もあります。

今回は私が多くの税理士や経営者、役人OBや現役の役所の方とお話した事などを、私なりの言葉で共有できたらと思います!

■負担の感覚

まず感じるのは、消費税に対する感覚(法と言うよりは感じ方、捉え方)は、経営者と消費者でまるで違います。正反対と言っても良いです。

経営者は自分たちの法人が負担している意識が強い場合が多く、消費者(正確に言うと最終消費者)は、自分たちが負担していると感じる人が多いのです。

楽待の読者はサラリーマンの方が多いと思います。

ですから前回のコラムの反応はほぼ全ての方が、自分たちが負担している感覚だと指摘を受けるのは自然なことに感じられました。

前回は私も特に否定はせず、yesbutのような返信になり、曖昧な回答に感じた方もいたかもしれません。

今回はあくまで簡単に、制度を少しだけ掘り下げてみます。

■消費税の生い立ち

消費税は欧州の付加価値税をモデルにして作られたと言われます。

時は中曽根内閣です。

前回のコメントでも頂きましたが、制度の名前は大事なものです。

最初は売上税が検討されました。

売上税って言うと事業者側が負担するイメージが強く、企業の団体などから反対が多く、この名前は不採用になりました。

次に出たのが消費税です。

ここで今の一般的な印象(消費者が負担する税のイメージ)となりました。

しかしモデルにしたのは欧州の付加価値税です。

付加価値とは日本で同じ言葉を探すと、売上総利益または粗利です。

単に粗利税と言っても良いものです。

消費税が粗利税だと、受ける印象はどうでしょうか?

負担者は企業側のイメージになりませんでしょうか(汗)?

言葉が持つ力を感じます。

■消費税の負担者は消費者!?

消費税の実質的負担者は、消費者が負担した場合は消費者です。

実際には、消費税が賦課された(あくまでも)価格として支払っています。

この時、値引きするなどで、実質的に消費者が負担しない場合は、納税義務のある事業者が負担します。

※消費税は値引き出来ないものですが、モノやサービスを購入する時に支払うのは、消費税が含まれた(転嫁された)価格なので、こういう現象が起きます。

事業者は「消費者から消費税を貰えなかったので納税できません」とは言えません。

何故なら、消費税には預かりの性質がなく粗利から機械的に税額が算出されるからです。

ここで実際に消費者が支払うのが消費税ではなく、価格転嫁後の価格だということの影響が出るのです。

言い方を変えると、価格転嫁できた場合は消費者が負担していると言える、価格転嫁できなければ事業者が負担する場合もあるって事です。

■預り金か?益税か?(その1)

前回も書いたテーマですが、これもNOです。

理由を2点ほど挙げておきます。

一点目は、確定判決が出ているからです。

消費税の制度が出来たとき、課税売上3千万円以下が免税事業者となることができました。今は課税売上1千万円です。

※条件は課税売上の額なので、非課税の家賃収入が1億円のメガ大家さんでも、免税事業者になれます。

消費税がスタートした時から、消費者が納税しているのに、免税事業者が預かった消費税を納税しない(利益にする)のはけしからんと言う空気がありました。

ある時、大阪のサラリーマンが益税はけしからん!と裁判を起こしました。

前回のコラムでは、コメンテーターのmelmさんへの返信の中でも触れましたが、90年に東京地裁(3月26日)と大阪地裁(11月26日)でありました。

判決は「消費者は、消費税の実質的負担者ではあるが、消費税の納税義務者であるとは到底いえない」「(消費税の)徴収義務者が事業者であるとは解されない。したがって、消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者との関係で負うものではない」。

この判決は確定判決となっています。

つまり、消費税は物価の一部であり、「預り金」ではないと判決ではっきり言っています。

預り金でないので益税でもないって事です。

 ■預り金か?益税か?(その2)

次に二点目です。

消費税は、一般課税(本則課税)、簡易課税、免税の3種類があります。

基本は一般課税ですが、条件を満たした事業者は、簡易課税や免税を選択できます。

この時、簡易課税を選択すると、売上の税額に業種ごとに定められた「みなし仕入率」をかけ、仕入れの消費税額の計算を行います。

前回コラムの、こども大家さんからのコメントを抜粋します。

—–

10年ほど前まで私も課税事業者でしたが、仕入ゼロだったので、「みなし」はすごく助かってました。

最初は5%(だったかな・・)をまるっと払うもんだと思っていたのに、これのおかげで3割引・・みたいな。変なの。

—–

これは事業者が消費税を預かっていないことを意味しますよね?

預かり金なら、こども大家さんは消費税を横領した事になってしまいます(汗)。

こども大家さんは、制度に従い納税しただけです。

この2点でも、事業者は消費税を預かっていない、益税は無いことがお解かり頂けるかと思います。

つまり消費税は、不動産賃貸業者にとっては、固定資産税、法人税などと同じ価格(家賃、販売価格)を構成する要素でしかないのです。

消費税は預り金ではないので、固定資産税・都市計画税と同じように減免措置があるのです。

違いは、皆で一斉に値上げできることです。

皆で一斉に値上げすると、一般的には、独禁法のカルテルに抵触します。

但し消費税だけは独占禁止法の適用除外になっています。

消費税だけはカルテルとして扱わないとした経緯があり、消費税だけは価格転嫁カルテルが認められているのです。

これが他の価格構成要素との違いです。

■消費税は負担感が強い

日本には50種類以上の税があり、法人には色々な税が課せられます。

有名なのは法人税と消費税ですが課税される場所が異なります。

ここで売上の構造を見てみます。

①売上 = ②原価 + ③粗利(④営業利益 + ⑤販売管理費)

ですよね。

給料や役員報酬は、販売管理費に含まれます。

※製造業・建設業・システム開発業以外では、基本的には「人件費」は原価に含まれません

法人税は④営業利益(正確には税引前純利益)に課税されます。

消費税は③粗利に課税されます。

人件費を含む粗利への課税なので、事業者負担が大きく感じられるのです。

社員を派遣や外注(フリーランスなど)にすると、この費用は原価となり、若干の消費税負担が減ります。

実は消費税の納税実務は決算書の計算書を見ると、消費税を預かった事業者を記録しますが、納税額は付加価値(粗利)から算出されるのです。

ちなみに、私の知人の飲食店経営者(7店舗経営)は、毎月6百万円以上の消費税を納税しているようです(汗)。

■不動産賃貸業が有利なワケ

家賃も最初は課税対象でしたが、税率が3%→5%に引き上げる際に、非課税になったと記憶しています。

ラッキーですよね(汗)

この負担感の多い、消費税を扱わなくていい、価格転嫁に苦労することがない

不動産賃貸業は最強!

というのが前回の趣旨でした。

■INVOICE、不動産投資家はコレに注意!

前回の解説が長く成り恐縮です(汗)。

ここからは、今回お伝えしたい事です。

私の周囲やYoutubeなどで見ていると、INVOICE制度の対応は様子見(事業者登録しない)の方が多いようです。

とくに大家業は、家賃が非課税なので、私を含めなおさらその傾向が強いと感じます。

仮に入居者に法人契約があったり、テナントが入っていても、少数であれば積極的にINVOICE登録事業者にはならない方が多いようです。

登録して課税事業者になるより、取引先ごと(法人の入居者など)に値引き要請に応じた方が楽・お得だと判断されているのだと思います。

今回の指摘は税務調査リスク(汗)です。

不動産賃貸業は規模が小さいと、税務調査が入りにくい業種と言われています。

私が見る限り、大家さんでも家賃が2億超とか、同じ決算期に激しく売買を繰り返し行う方は、税務調査が入っている方も普通にいます。

ですが、多くの不動産賃貸業の方は上記に条件に該当しません。

私が役所OBの方と話した感触では、例えば物件に法人Aが入居していた時に、この入居者の法人Aに税務調査が入ったとします。

その時、INVOICE未登録の大家の物件に入居していた場合、この大家はなんでINVOICE未登録なの?ちょっと聞いてみようか(汗)?となる事は、あり得る話だと仰っていました。

税務調査リスクと言う言葉があるかは知りませんが(汗)、そういうリスクが高まる可能性があると言う方もいるという事を、お伝えしておきます。

あとは外貸し駐車場(レジに付いている駐車場と違い、必ず課税対象になる)を扱っている人は、一般の業種程度には当該リスクは高まるとも言っていました。

※一つの可能性の話です。必ずこうなると言う話ではありません。

ということで、私も入居者リストを見直すと法人契約もアリ、外貸し駐車場もあるので、そろそろ・・

INVOICE事業者に登録

しようかなと思っております!

※これはお誘いではなく、私の決意表明です(汗)。

こういう大家さんもいるということ。

これが皆様の賃貸経営において、何かのお役に立てればと思います。

 

最後までお読み頂きありがとうございました!

 

今回のコラムは如何だったでしょうか?

私達夫婦はコラムを通じて初心者の方に、不動産投資に取り組む際の「情報」と「勇気」を届ける事をテーマとしています。

我々の実践行動が、少しでも皆様のお役に立つ事を願っています。

―以上です―