マイクロ法人の株式の持ち方にはいろいろなパターンがあります。#41では2つのパターンを記載しました。今回はあまり知られていない「黄金株」を見てみましょう。
●パターン1)代表取締役(=被相続人)がすべての株を保有する
●パターン2)代表取締役51%、相続人49%の比率で株を保有する
●パターン3)代表取締役が黄金株(1株)を保有し、残りの株式はすべて相続人が保有する ← 今回はココ
■パターン3)代表取締役が黄金株(1株)を保有し、残りの株式はすべて相続人が保有する
ある東証一部上場企業の会長と話をする機会がありました。楽しく会話させていただく中で、話題は相続にもおよびました。私が「会長さんほどの人ともなると、相続もさぞ大変なのでしょうね」と言うと「相続はほとんど済んだようなもんだよ。私が持っているのは黄金株だけだからね」とおっしゃいました。黄金株なるものの存在を知ったのはこの時です。
黄金株とは、正式には拒否権付株式と言います。株主総会における拒否権を有している株式のことです。この黄金株を持っていれば、他のすべての株主が何と言おうとも、それを拒否することができます。つまり黄金株を持つ株主が「イエス」と言わない限り、株主総会の決議は成立しません。
先の上場企業の会長は、この黄金株だけを自分が保有し、他の株式はすべて相続人に譲渡済みだとおっしゃったわけです。非常に強力な拒否権を手元に残しているので、引き続き会社の経営に目を光らせることができますね。誤った方向や自分の望まない方向に舵が切られそうになった時に、鶴の一声でそれを拒否できるからです。
黄金株の価値は、その他の通常の株式とまったく同じです。黄金株だからと言って、株価が高いわけではありません。
この黄金株は定款を変更すれば、マイクロ法人でも作ることができます。
上記のパターン2)の場合、被相続人が保有する51%の株式に対しては相続税がかかってしまいます。一方、黄金株のみを被相続人が保有した場合は、その黄金株だけが課税対象相続資産に含まれます。つまり相続人は1株分だけの相続税を納めればよいのです。
ただし注意点もあります。黄金株が有するのは、あくまでも拒否権です。何でもかんでも自分の意のままに進めることができる権利ではありません。自分がこうしたいと発案しても、他の株主がNOと言えばそれまで。強引に進めることはできません。
また被相続人が黄金株を持ったままボケてしまい、正常な判断ができなくなると、困ったことになりかねません。後継者の提案を理由もなくすべて拒否してしまったら、会社は潰れてしまうでしょう。
これらのことを十分理解した上で、先の上場企業の会長さんのように、被相続人(=自分自身)は黄金株だけを保有し、その他のすべての株式を相続人(=配偶者や子どもなど)に持たせるという方法を選択することもできます。
なお、黄金株は会社設立時から設けることもできるし、設立した後で新たに設けることも可能です。
■まとめ
相続を見すえた場合、マイクロ法人の株式をどのように持たせるのが良いか、3つのパターンを見てきました。
●パターン1)代表取締役(=被相続人)がすべての株を保有する
●パターン2)代表取締役51%、相続人49%の比率で株を保有する
●パターン3)代表取締役が黄金株(1株)を保有し、残りの株式はすべて相続人が保有する
最適な方法は各人の置かれた環境によって異なるので、一概には言えません。各パターンの特長をよく理解した上で、自分に最適な方法を選ぶしかないですね。
ちなみに私の2つのマイクロ法人は、現時点では私が51%、子どもが49%になっています。2社設立した理由は、2人の子どもそれぞれに1社ずつ渡したいと思ったからです。
現在は、株価が低いうちに黄金株だけにしてしまうかどうか検討中です。即決しない理由は、将来マイクロ法人から配当金を受けたいと思うかもしれないからです。
黄金株への配当は、他の株式とまったく同じです。したがって黄金株だけを保有している場合、1株分の配当金しかもらえません。「マイクロ法人の配当金をもらえなくても老後の生活にまったく支障がない」と思えるようになったら、黄金株にシフトしても良いかなーと考えています。
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