北国の大家です。
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前回は家賃保証会社に関する国会質疑を通じて、皆で家賃保証会社の理解を深めよう!という試みでした。
質疑の中には家賃保証会社の生い立ちや、今に至るまでの変遷の概要、是非は別にして社会が持っている問題意識が共有できる良いコンテンツ(私は文字起こしただけですが汗)だと自負しております。
不動産投資家の多くは、家賃保証会社と関わらずに投資をすることはできないでしょう。投資家が意識する・しないに関わらず、貴方の物件でも入居時の保証料の支払いや、滞納時の取り立てが行われます。
今回はより家賃保証会社と投資家の接点や、投資時の注意点などを私の目線で語ってみたいと思います。
アジェンダ
1.入居者(賃借人)に誤解がある!?
2.入居者(賃借人)の負担感は大きい
3.連帯保証人の極度額
4.家賃保証会社の保証額
5.家賃が安い物件の滞納リスク
6.居住支援法人
7.滞納率(超概算)
8.管理会社のアウトソース
9.まとめ
是非、最後までお付き合いください!
1.入居者(賃借人)に誤解がある!?
まずは投資家ではなく入居者(賃借人)の目線からです。
一般の方が賃貸物件に入居しようと仲介店で、家賃の保証料を支払う時の誤解が「家賃が払えなかったとき、自分に代わり支払ってくれる」制度だと思っている方が稀にいるそうです。
家賃が払えなかったとき、自分に代わり支払ってくれるのは間違いないですが、その後の求償(取り立てなど)をイメージしていないということです。
滞納時の督促や取り立てで、初めて求償される事を知る方がいるようです。
賃貸仲介店の方はしっかりと説明して下さっているのでしょうが、この手の齟齬は一定数生まれるのかもしれません。
2.入居者(賃借人)の負担感は大きい
賃貸借契約書を見ると、入居時に必要な費用って多いですよね。
・敷金
・礼金
・ペット礼金(ペットがいれば)
・家賃・駐車場料(初回分)
・口座振替手数料(初回分)
・家財保険料
・家賃保証料(初回分)
・ハウスクリーニング費
・その他の○○費用(設備分解清掃費など)
・鍵交換費用(オーナー負担の場合もあり)
・仲介手数料
三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)で単身者の家賃・共益費の平均は7万7千円/共益費4千円(※)です。
初期費用をこの額の5倍とすると、入居には40万円+引っ越し代が必要になります。
※「平成30年度 住宅市場動向調査」(国土交通省 住宅局)
家賃賃保証料は、ご自身が滞納した際に立て替え払いして貰うための費用と捉えてもらえれば良いのですが、大家がカネを貰うために、入居者がカネを出すのはおかしい!と考える方もいるようです。
家賃保証の保証料の負担について納得がいっていない状態と言えます(汗)。
求償を含めた制度自体が理解されていないのが原因の一つで、制度を理解して納得すると、不満も減るのかなと思います。
家賃保証制度の必要性を確認する意味で、新民法下での連帯保証人についても確認してみます。
3.連帯保証人の極度額
令和2年4月に施工された新民法から、連帯保証人には極度額が設定され、新たに締結する契約からは、極度額の設定のない連帯保証人契約は無効になります。
大家にとってはインパクトのある法改正でした。
一方で連帯保証人になったために財産を失ったなどの悲劇を防ぐには必要な面もありました。
私のご近所さんでも、総資産数十億円の資産家が知人の連帯保証人となり、ほぼ全ての資産を失ったという事件がありました。
無限責任を有限責任にという流れに沿い、極度額は設定されました。
極度額の相場は家賃の12か月と言われますが、あくまでも相場でしかなく、個別の契約時において連帯保証人と極度額について合意する必要があります。
といった流れで、連帯保証人を取るのが難しくなり、取っても家賃の12か月の極度額では不足すると言った考えから、家賃保証会社の必要性が高まり、今では賃貸借契約時の家賃保証は必須と言っても良い程の利用率80%となりました。
4.家賃保証会社の保証額
皆さんは家賃保証契約書を読んでいますでしょうか?
私がサラリーマン大家のころは、稀にしか読みませんでした(汗)。
とはいえ、リーマンショック後から保証会社とは10年以上のお付き合いがあり、稀に読むこともありました。
最近は保証会社の数も多いので一般化はできません。
ここからは私の場合で言います。
以前の家賃保証会社(のプラン)は、家賃しか保証しない代わりに保証の上限がない所が多かった。
最近の家賃保証会社は、家賃以外にも退去後の原状回復、残置物撤去なども保証するようになったが、保証額に上限が設定された。
例えば、2年間の賃貸借契約の場合、保証額は家賃×24か月分となります。
連帯保証の極度額を嫌い、家賃保証会社に期待しましたが、家賃保証会社でも極度額が設定されました。
5.家賃が安い物件の滞納リスク
最近の編集部記事でこんなのがありました。
「明渡し訴訟200件」の弁護士が解説、滞納者を退去させる方法
※プレミアム会員限定記事ではないようです
ここで解説されている通り、滞納が続くなどで退去を迫る場合は基本的には「明け渡し訴訟」が唯一の選択肢になります。
新築するため解体など滞納以外の理由での退去の場合は、私の知えり得た情報だと一部の例外を除くほぼ全てが入居者との交渉で解決できます。
この場合も入居者が弁護士を立てて、争う場合もあり結果は100万円~500万円の立ち退き料が必要となったケースもありました。
編集部記事には記載がありませんでしたが、滞納時の明け渡し訴訟はどの程度の費用が掛かるのでしょうか?
最近、滞納時の明け渡し訴訟をしたという大家数名と管理会社の顧問弁護士に聞くと、札幌市で訴訟を起こした際は、一声100万円と仰っていました。
って事はですよ・・
家賃3万円の物件(2年契約)の家賃保証会社の保証額の上限は、3万円x24か月→72万円です。
その入居者に対して、明け渡し訴訟を起こすと訴訟費用100万円―72万円→28万円の持ち出しになります(汗)。
閾値は家賃4.2万円(2年契約)です。
家賃4.2万円(2年契約)以上の物件であれば、4.2万円x24か月→100万円なので、明け渡し訴訟を起こしても持ち出しはありません。
築古高利回り物件などで、安く買って安く貸す手法の場合は、こんな所にも気を付けたいです。
6.居住支援法人
前回のコラムでは、国会質疑の文字起こしをしました。
その中で国交省はこう言いました。
「家賃債務保証を受けられない賃借人について、居住の安定確保に努める。
「居住支援法人などを活用して、財政支援等を通じて取り組んでいく。」
「居住支援法人など」とは、住宅セーフティネットの事を言っています。
右下に緑で「居住支援法人」と書かれています。
国交省のページより
①②の間に「保証会社」があります。
この支援制度では、保証会社を政府系の住宅金融支援機構が保証します。
住宅金融支援機構のページより
といった感じで絵的には、立派に成立している制度ですが、現状は上手く行っている感じがあまりしません。
・地方都市には居住支援法人が少ない
札幌市には居住支援法人が数十社ありますが、道内のその他のエリアにはほとんどありません。
・継続性
居住支援法人の人件費は年間10~11か月です。
全額支給されるのではなく事業者にも人件費の負担を求めています。
居住支援法人に採用された方は、人件費が支給される10~11か月時点で雇いどめとなる方もいます。
もちろんこれは、事業者側の問題でもあります。
・改修費補助の敷居が高い
私も何度か検討しましたが、優良住宅を低廉に賃貸するための改修といった感じで補助要件への適合が難しいと感じました。
申請書類の作成も困難で基本は手慣れたコンサルを入れて取り組むのが一般的かと思います。
・セーフティネット住宅の登録
私も3戸を2回ほど登録してみました。
本来は大家が登録して、居住支援法人が仲介店のように機能するのですが、知人の居住支援法人に登録をすべてお願いしました。
市に対して申請を上げるので、レスポンスが非常に悪いです。
1戸の申請~承認まで1~2週間掛かり、少しでも修正があるとこれをもう一ターン繰り返します。
・登録数が少ない
一昨年見た時は、ほとんど認知されていないようで数件程度の掲載しかありませんでした。
・属性選択
セーフティネット住宅は、大家側が属性ごとに、この属性は許可・不許可などと設定します。
「小さな子供のいる家庭」「外国人」「出所者」・・など数十個の属性が予め定義されていて、その中から許可する属性を選択します。
例えば「外国人」を選択した場合、外国人からの入居申し込みは、基本的に断れなくなります。
この辺も大家さんからは嫌がられるポイントかなと思います。
・認知度が低い(NPOも使わない)
国交省の図で見ると、NPOも本制度を使うように描かれていますが、北海道では認知度が低く登録物件もすくないためか、NPOは制度を通さずダイレクトに管理会社へ問い合わせする場合が多いようです。
実際に私達の物件でも、NPOから管理会社経由で何度か問い合わせがありました。
以上、ダメ出しっぽくなりましたが、私から見た現状の本制度の印象です。
7.滞納率(超概算)
以前、滞納率に関して、大手の家賃保証会社が出した数字はこんな感じでした。
・滞納者は全体の10%
・滞納者の90%がうっかり滞納、10%が生活困窮
入居後に生活困窮に陥る方は1%程度はいるようです。
8.管理会社のアウトソース
管理会社+家賃保証会社のフォーメーションの場合、管理会社が以前行っていた家賃の督促・回収業務の作業量が激減します。
家賃保証会社に言わせると、管理会社の当該業務のアウトソーシングだと言い切ります。
最近管理費が5%→3%下がった理由は競争激化意外に、単純に家賃保証会社を入れることで業務が減ったからというのもありそうです。
分業化で非常に結構な話ではないかと思います。
問題は古い管理委託契約で5%+家賃保証会社となっている物件が残っていることかなと思います。
9.まとめ
家賃保証会社の生い立ちとしては、時代背景的に核家族化で単身の入居者が増えたこと(全国の物件の過半数は単身物件)や、国会質疑の言葉を借りれば、高齢者・障害者・低所得者に住まいを保証するために作られた。
その後、リーマンショックなどで職を失った人の入居促進(入居を可能に)でニーズが高まり、この頃から数が増えはじめた。
最近の民法改正では連帯保証人には極度額の設定が必須とされた結果、連帯保証人では大家が満足する信用が得られなくなった。
この信用が不足する部分を補うため、更に家賃保証会社のニーズが高まった。
という訳で家賃保証会社は、今後も社会的に重要な位置づけを維持すると思います。
国交省の国会答弁で感じることがあります。
「保証契約前の書面交付や説明を徹底させる」
家賃保証制度は求償されることを把握してないなど、制度の趣旨を理解していない人も一定数いるようです。
この施策で入居者に制度の周知を図り、無用なトラブルを防止して欲しいと感じます。
「家賃債務保証を受けられない賃借人について、居住の安定確保に努める。」
住宅セーフティネットについては、制度に魂を込める必要があるかなと感じます。
「6.居住支援法人」で指摘したこと以外で言うと、住宅セーフティネットのサイトが見た目も古い感じがして使いにくいので、天才プログラマーのこども大家さんあたりが、ハイセンスでユーザビリティに溢れた画面に作り直してくれないかなと願っています(汗)。
家賃保証会社の制度はこれからも重要度が高まるので、国交省が言う対策もさらに洗練させて、一般の理解が得られてトラブルも減ると言った形で、社会に定着して欲しいなと思っています!
今回のコラムは如何だったでしょうか?
私達夫婦はコラムを通じて初心者の方に、不動産投資に取り組む際の「情報」と「勇気」を届ける事をテーマとしています。
我々の実践行動が、少しでも皆様のお役に立つ事を願っています。
―以上です―
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