楽待実践大家コラムをご覧の皆様、元ポスドク理系大家です。

 

相変わらずご無沙汰しておりまして、すみません。またまた3ヶ月振りのコラムです。昨年の 12 月に別の保険会社と契約することで火災保険の保険料の値上げを抑えた話を書きました。

 

さらに先月、残っていた木造 AP の火災保険を更新して、所有物件の火災保険は一通り更新できたのですが、早くも値上げの話が出てきましたので、その中身を紹介したいと思います。

 

詳しい内容はジュニアさんがコラムされると思いますので、私は値上げの背景について書きたいと思います。

 

と思ったら、ジュニアさん早い!もうコラム書かれていますね💦

 

お蔵入りにするのも悲しいので、最後に少し独自の話題を追加してお届けします。

 

値上げはやはり、水災保険

 

皆さんご存知の通り、水災保険は火災保険に付帯する形で加入する保険です。また、これまでは住む地域に関係なく、全国一律の料率(保険金額に対する保険料の割合)でした。この全国一律の料率を見直すのが今回の値上げです(後述する純率も上がりますが)。

 

さて、火災保険の統計によると、水災にかかる保険金の支払い額の平均値(2016~20年度)は 400 億円を超えており、火災保険に占める水災の割合もこれまでの 4 倍(2011~15年度の平均との比較)となっています。

 

もちろん、これまでも水災保険は値上げされてきたわけですが、これまでの値上げの仕組みとしては、保険金の支払いが増えれば、加入者が支払う保険料が高くなるというものでした。

 

水災保険の加入者が減っている?

 

上記のような値上げの仕組みであるために、浸水リスクが小さい地域に住む人は水災保険を付帯しなくなっています。付帯率で見ると、21 年度は 65.4% でこれは 2017 年度と比べて約 5% ほどの低下となっています。水災保険の加入者が減るということは、先ほどの仕組みから保険料の値上げに影響してきます。

 

そこで、地震保険と同じように地域差で保険料(水災保険では料率)を変えることにして水災保険を付帯する人を増やし、全体として保険料収入を確保し、少しでも値上げ幅を抑えよう(抑えられるのはあくまで平均値での話ですが)というのが、今回の見直しの背景となります。

 

水災等地は 5 段階

 

具体的には、リスクを 5 段階に分けます。河川に近いかどうかや危険度に応じて分けます。リスクが最も低い水災 1 等地が全体の 2 割で、逆に最も高い水災 5 等地が全体の 1 割となります。

 

東京 23 区で 5 等地になる場所を挙げると、

 

台東区
墨田区
江東区
荒川区
足立区
葛飾区
江戸川区

 

となります。横浜市には 5 等地はありません。川崎市は川崎区のみ 5 等地となっています。

 

参考純率も上がります泣

 

参考純率って何という人がほとんどだと思います汗(ジュニアさんのコラムを読んでください)

 

まず、保険料率について説明します。保険料率には、保険金に充てられる分と保険会社の経費に充てられる分があります。保険料の値上げといった場合は、そのほとんどは前者の分の料率(これを純保険料率と呼びます)の変更になります。この純率は保険会社が勝手に上げるものではなく、内閣府が所管する損害保険料率算出機構が出す料率に基づいて決めることなっています。これを参考純率と呼びます。

 

これが来年度、全国平均で 13% 上がるそうです。火災保険の参考純率の変更は 2005 年度以降、6 回目で今回が最大の値上げらしいです。さらに、水災等地でも料率が変わるということで、一体どこまで上がるのだろうという感じになってきました。

 

詳細はジュニアさんのコラムを読んでください(笑)

 

水災リスクの今後

 

まず、損害保険料率算出機構のページにある「水災等地に関するよくあるご質問」にもありますが、水災等地が 1 等地だからと言ってリスクがないわけではありません。また、洪水ハザードマップのリスクと異なる理由ですが、水災リスクには河川から水が溢れたり、堤防が決壊してたりして起こる河川氾濫だけでなく、豪雨による土砂災害や下水道が溢れたりするリスクも含めて評価しているからです。

 

しかし、これも完全ではありません。例えば、今月 2 日に発生した線状降水帯による豪雨では、和歌山県でこれまで浸水想定がなされていない場所で氾濫が発生しました。氾濫は 54 か所で発生しましたが、その半数の 27 か所と半分は想定さていない場所でした。過去の水害でハザードマップ通りに浸水したという報道もありましたが、想定外もあり得ます。

 

そもそも、水防法では浸水区域を設定する河川数を約 15000 河川としているのですが、ハザードマップが整備されているのは 2022 年 5 月末の時点で 1770 河川と僅かしかありません。これが今後整備されれば、水災等地の見直しが間違いなくされるでしょう。

 

さらに私の本業とも関係するので、ざっくりした話に留めておきますが、国交省の有識者会議にて将来の気候変動も考慮したハザードマップの利用に関する手引きが作成されるなど、温暖化のリスクも評価すべきという流れになっています。

 

火災保険の保険料の値上げは将来にわたって避けられないと考えています。少しでも値上げを緩和するには水災保険の付帯率を上げるしかなさそうです。要するに大きなリスクこそ皆で備える必要があるということです。