同僚のAさんは素行が悪く、配属先で事あるごとにトラブルを起こし、その度に部署を転々としている。私の職場では知る人ぞ知るいわくつきのアルバイト契約社員である。
もうあと数年でFIRE(定年退職)だが、まだ一人暮らしの経験はなく実家住まい。見た目と立ち振る舞いだけは大企業の重役っぽいので、裏でついたあだ名は「部長」。
その素行の悪さは私生活にもおよび、先日、Aさんが休憩時間に自宅(実家)の目の前にある月極駐車場の管理会社にクレームの電話を入れているのを見かけた。
鬼のような形相で「オマエんとこに駐車している車が枠線からはみ出しているからウチの車を出すとき邪魔なんだよ!今すぐどかせやっ!この○○がぁっ‼︎さもねえと警察呼ぶぞ‼︎ゴルァッ‼︎」と電話越しに恫喝していた。
その後、さんざん喚き散らして落ち着いたのか「さきほどは大きな声を出してしまい大変失礼しました。いや私もついカッとなって、少し言い過ぎたなと…ええ、はい、私としては、とりあえず枠線からはみ出して駐車している車に関してだけ早急に対応してもらえれば…」と、意味のわからない釈明(説明?)をしているのも見かけた。
私も以前、些細なことで激昂された経験があるので、それ以来、業務上必要最低限の会話しか交わさないようにしている。
そんなAさんに出勤シフトのことで確認したところ、普段なら「あー…いつも通りでお願いします。」と答えるのだが、今回はどうも様子がおかしい。ついにFIRE(早期退職)するのか?と思ったのだが、予想外の返事がかえってきた。
「あー…ちょっと来月は引越しの予定があって、まとまったお休みをもらいたいです。実は親が亡くなって財産を相続したのですが、とんでもない金額の相続税を払わなきゃならなくて…でも、とてもじゃないが用意できない。税理士にも相談はしているけど、もう家(実家)を売るしかないって言われてるけど…突然そんな大金用意出来るワケないだろ…ブツブツ…」
想定外の展開に驚きを隠せなかった。とりあえず「それは大変ですね…とにかく引越しの予定が分かりしだい教えて貰えますか?」と無難に会話を終わらせる。
帰宅後、これは他人事ではないと、自分なりに色々と調べてみると、相続税の申告期限・納付期限は相続開始の翌日から10ヶ月となっているらしい。この期日を過ぎると、加算税や延滞税という二重のペナルティが課せられるそうだ。勿論それだけでは済まず、税額を大幅軽減できる特例や税額控除も適用できなくなり、ただでさえ払いきれない納税額がさらに高くなってしまう可能性も…Aさん大丈夫なのか。
ちなみに相続税が払えない場合の対処方法は大きく6つあるそうだ。
①相続財産を現金化する(現金納)
②相続財産を分割して払う(延納)
③相続財産を現金ではなく物で納める(物納)
④納税する金額分だけを先に分割協議する(分割納)
⑤相続を放棄する(放棄納)
⑥金融機関からお金を借りる(借金納)
もし仮に相続する財産が1億円あったとすると、相続税は1,220万円になる。
Aさんの言っていた「とんでもない金額の相続税…」というのは一体いくらになるのか…私には想像もつかないし、これ以上首をつっこむつもりもないので、この話の続きを聞くことはおそらくないだろう。
楽待ユーザーの皆さんにおかれましては、Aさんの身に起こったトラブルを決して他人事とは思わず、いずれ来るであろう相続に備えて欲しいです。
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