あなたの物件に住む一人暮らしの入居者なら、こんな経験をしているかもしれない。
月曜20時、オフィスに一人。終わらぬ仕事も上の空。”半分後悔”のネット注文が気になって仕方がない。 というのも、元はといえば週末のネット検索。最新のガジェットを見つけてしまったのだ。 「これはいい!きっと自分の生活がかわるに違いない。買うしかない…」 週末の夜の一人晩酌だった。酔った勢いがなかったとは言えない。つい、ポチッとやってしまったのだ。衝動買いというやつだな。 ポチった経緯はともかく、今日の19時にはガジェットを運んで宅配便がやってくる。物流の2024年問題で今後どうなるかわからないが、今は便利な時間指定で受け取る算段だ。なにしろ月曜19時には家に帰っているはずだったのだ。 でもなぜか、こんな日に限って仕事にハマって帰れない。 「あー、宅配便屋よ、ちょっと待っててくれー!」 |
オートロックシステムがIoTになったよ
筆者所有の賃貸物件には、こんな哀れな入居者の残念な状況をすこしだけ解消できるシステムが導入されている。
IoT(Internet of Things)を具現化したもので、テクノロジーマニア受けするようなオートロックシステムだ。
IoTとは「モノのインターネット」と呼ばれる概念である。センサーや電子機器がインターネットにつながって、うまいことやってくれるような世界のことだ。
そう、うちの物件のオートロックシステムは、インターネットにつながっているのだ。
ネットにつながって何がいいのかって?
建物のエントランスで部屋番号を入力して「ピンポーん」と呼び出すと、入居者のスマホにつながるというわけ。
しかも、カメラの画像もネット経由でちゃんと送られて、お客さんと会話ができる。会話は、部屋にいるときだけではなく外出先でも可能である。
つまり、冒頭の架空入居者がこれをつかえたならば、オフィスにいながら宅配業者と会話してやりとりできる。
「ふぅー。これで安心して夜中の残業に集中できる〜」
というわけだ。
ComelitというIoTシステム
ここで少しシステムの説明をしよう。
筆者のブログ「テック大家さん」にも書いているのだが、導入したのはComelitというイタリアメーカーの製品。
この製品を導入することになったのは、リノベーションのプロディースをしている建築家の妻、たっての希望。
来客者からの呼び出しをスマホで外出先でも受けられるシステムを導入したい、というの強い思いからであった。冒頭の状況に対するソリューションを具現化したかったのだ。
仕組みはこうである。
建物のエントランスに設置するのだが、これを建物のネットワーク(LAN)に接続する。管内のルーターの設定をちゃんとしてやると、Comelitのオートロックシステムがインターネット上のサーバになるのだ。
一方、入居者には専用のスマホアプリを自身のスマホにインストールしてもらう。「サーバー・クライアント」というコトバをご存知であればスマホが「クライアント」になるということだ。
システム構成のイメージは下図のようなものである。
技術的な詳細は筆者ブログ「テック大家さん」で詳しく書いている。もしご興味があればそちらもご覧くだされ。
この商品を導入するにあたっては見た目、つまりデザイン要素も考慮して決めた。イタリア製だけあってか、日本のどこのマンションでも見かけるインターホンよりもスッとしていて美しい佇まいだ。なにより、技術的にもわかりやすくてシンプルな作りが筆者テック大家さんを魅了した。
メリットとデメリット
実は、著者の物件には普通のマンションにあるようなインターホンの受信機を設置していない。全て入居者のスマホに頼っている。
いまどきのスマホの普及率は9割近い(内閣府のデータより)。入居者はほぼスマホを持っているわけで、それなら賃貸マンションのオートロック(インターホン)の呼び出しをスマホで応じられない入居者はいないのだ。
そう考えて、各部屋のインターホン受信機は用意しないと割り切ったのだった。しかし、それでも入居者に冒頭のシナリオのソリューションを提供できた。
入居者の反応はというと、外出時にインターホンから連絡があってはじめは驚くようだが、その後は便利に使っていただけている。
加えて、大家さんにもメリットがある。
このコラムで何度か出てきているように、この物件は箱根にある。自宅は東京だ。物件は離れているのだが、今のところ管理会社に管理の委託していない、自己管理。
となるとリモートでどれだけ管理できるかが課題だ。筆者の物件に設置されているオートロックシステムはリモートによる物件管理にも有効なのだ。
大家さんとしては架空の部屋番号を設定して、その「部屋」を呼び出すと、東京にいてもリモートで大家さん宛の問い合わせを受け取れるようにした。
リモート物件管理に便利に活用できているのだ。
一方、デメリットがないわけではない。
入居者に固有の「アクティベーションコード」というものを発行し、入居時に入居者にスマホの設定をしてもらっている。この作業は入居者のリテラシーによっては手間取るケースもあるので、サポートが必要になることもある。
また、アクティベーションコードはある種「ドアの鍵」のようなものだ。したがって、退去の際はドアの鍵同様、次の入居者に向けて「無効化」する必要もある。ちょっとした手間はかかるということだ。
とはいえ、メリットのほうが大きい。これが筆者の正直な感想である。
おわりに
出張でアメリカの家電量販店に行った際、家庭向けIoTコーナーが充実していると感じたのはコロナの数年前のこと。
その経験からすると日本の住環境におけるIoTは遅れていると感じる。
日本の住宅のインターホンといえば、米AppleのiPhoneの商標問題で有名なアイホン(株)(と、パナソニック)の独壇場である。サイト「ニュースイッチ」によると、アイホンは集合住宅で約7割のシェアだというではないか。ここも「ガラパゴス」なのか。
世界に目を向けると、このようなネットにつながってビジュアル的にも技術的にもクールな製品がみつかる。ネットショップAliExpressには似たような低価格の(しかし品質は不明)ドアベルがごろごろしている。
あなたが新築やリノベーションでオートロックを導入する機会があって、怖いもの知らず(!)の大家さんならば、こういった海外製品の導入も考えてみてはいかだろうか。
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