コロナが明けて外国人旅行客が目に見えて増えた。
物件をお持ちの大家さんなら、一度や二度はこんな風に妄想したことがないだろうか?
「物件の空室を利用して、民泊やって旅行需要の恩恵にあずかりたいなー」
そんなときに便利なのがスマートロックである。スマートロックなら鍵の受け渡しの手間を省いてくれる…
と、若干唐突で無理やりなフリであるが、本日もお付き合い頂きたい。
本日のテーマは流行り(?!)のスマートロックである。
スマートロックを導入してみる
昨今、IoT(Internet of Things)というキーワードとともに、インターネットにつないでリモートで使える機器が普及している。
一昔前ならインターネットにつなぐものといえばパソコンやサーバーだった。一方、IoTというのは、日本語で「モノのインターネット」とも言われるように、カメラやセンサー、電球やスイッチなど、機器(モノ)をネットにつなげて便利にしようという潮流である。スマホの普及もこの流れを後押ししている。
賃貸運営においても、IoTは気になるテーマである。
その最たるものが「スマートロック」。
ドアの鍵のサムターン部分に取り付けることで、スマホで鍵の開け閉めを可能にする機器である。
バーチャルな「カギ」をスマホで他の人に渡したり、時限「カギ」(時間指定で有効になるカギ)を発行したりできるような商品もある。
例えば、民泊をやるなら既存の部屋の扉にスマートロックを設置して、そのバーチャルカギや時限カギをスマホ経由でゲストに渡すことで、部屋のカギの引き渡しができるわけだ。物理的なカギのやり取りは、この場合不要。SF映画の世界(大げさ!)のようだ。
と、こんなことを言っておきながら、実は筆者はまだ自分の賃貸物件にスマートロックを設置したことがない。
しかしながら、使ってみないことには便利さがわからないし、賃貸物件に実際に導入する際の課題もわからない。なにより、テック大家さんを自称するからには、商品の背後にある「テック」にも大いに関心があり理解しておきたい。
というわけで、まずは自宅の扉に「Switchbotロック」という商品を設置してみた。数ヶ月前のことである。
Switchbotロックで手ぶら外出
Switchbotロックは、前述のようにドアのサムターン部分に取り付けて使用するスマートロックである。
ドアに取り付けると以下の写真のような感じ。
これだけで、スマホアプリを使ってロック解除ができるようになる。
だが、便利さがわかるのは「指紋認証パッド」(テンキー)とセットで使った場合である。
以下の写真のように、玄関先の良さげな壁に指紋認証パッドを貼り付けておく。すると、最近のスマホのロック解除よろしく指紋認証でドアのカギが開けられるのだ。もちろん、数字ボタンのコンビネーションでも開ける。
築25年の木造の家が、まるでオートロック付きマンションになったようではないか。
これならカギを持たずに手ぶらで外出できる。なんだ、この開放感は!
リモートのカギ管理に必要な謎の機器「ハブ」
ところで、実はこの状態は、もやはやIoTでもなんでもない。
どういうことかというと、スマホを使うことなく、これ単体で動作する。「ロック」と「パッド」間の通信は、Bluetoothとよばれる無線規格で行われているようだ。
そう、インターネットでもなんでもないのだ。
これではIoTとは呼べない。もちろん、設定にはスマホが必要になる。だが、スマホとの通信もBluetoothで行われるからだ(下図)。
Bluetoothというのは近距離通信。機器間の通信距離は数十メートルと言われている。ということは、WiFiみたいなもので、家の中にいればつながるが、外出してしまうとつながらないのだ。
まるで、井戸の中で大海をしらずに大暴れをしているカエルのような状態なのである。
そこで第3の機器が登場する。下の写真のような「謎の」Switchbotハブという商品である。こちらは自宅のWiFiにつないで使うものである。
「ハブ」にはいろいろな機能がついている。例えば、写真に映っている24や57%は、それぞれ温度、湿度だ。一見すると温度計。なにを以て「ハブ」とよんでいるのか、実にわかりにくい商品名ではないか。
だが、最も重要なこの機器の役割は、Bluetoothによる建物内の通信とインターネット(WiFiでつなぐ)をブリッジすることにあるのだ。
全体像を図にすると以下のようになる。
こうすると、ロックがインターネットにつながり晴れてIoTでいうところの「モノ」になるわけだ。
ネットにつながるとなにが良いかというと、外出時にスマホからカギの開け閉めできる他、「パッド」に入力する暗証番号をリモートから設定したりできる。
それはいいのだが…
う〜ん、大家さんが賃貸で使うユースケースがいまいち浮かばない…
皆さんなら、どう考えるだろうか。いいアイディアや実例があれば、是非共有して頂けたらと思う。
ちなみに、「スマートロック」というのは商品カテゴリで、実際の製品はいくつかのメーカーのものが出回っている。筆者がSwtichbotを選択した理由は、技術的な観点である。実は、Switchbotはメーカーがプログラムから使用できるインターフェース(API)仕様を公開しているのである。ということは、独自のシステムを開発できるということだ。
この辺りは楽待のコラムでは専門的すぎるテーマなので筆者のブログ「テック大家さん」で今後扱う予定だ。
スマートロックを取り付けるなら、ここに注意!
さて、設置して数カ月後のことである。
外出から帰った家族から連絡があった。
「カギが掛かっていない!」
どうも、カギをかけようと動作し始めたロックが床に落ちてしまって本来の機能を果たせなかったようである。
えー!井戸の中のカエルが大海に出ようとして井戸の中に落ちてしまったようだ。いや、使えなくなったのだからそれより悪い。
実はこのロック。サムターンに取り付ける際に使用するのは、3Mブランドの強力な(!)両面テープなのだ。
スマートロックの回転部分は、さまざまなサムターンに対応するためにかなりの「遊び」がある。多少ズレて設置してしまってもサムターンを回せてしまうのだ。
ズレた状態だと固定部分、つまり、両面テープに余計な力がかかり何度も使っているうちに粘着部分が弱ってくる。しまいには剥がれてしまう、というわけだ。
幸い今回は、カギを閉める際に落っこちたので締め出しは免れたが、開けようとしたときにこれが発生していたら、家に入れないところだった。
不幸中の幸いとはこのことだ。怖い怖い。
スマートロックを両面テープで設置する際は、くれぐれも力がかからないように軸を合わせるようにご注意を。
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