突然だが、あなたはテレビをよく観る人だろうか?
「イエス」というあなたは、もしかすると40代か50代以降の世代の方かもしれない。
総務省の令和3年「情報経済白書」の「主なメディアの平均利用時間と行為者率」という資料にデータがある。ご想像の通り、テレビをリアルタイムで観る平均視聴時間は、10代や20代は中年以降の世代と比較して明らかに低い。
筆者は先の質問に胸を張って「イエス」と言える。そう、何を隠そう50代。つまり、そういう人種(!)なのだ。
一方、所有する物件は中古の1Kが中心なので、入居者は社会人になりたてとか入社数年とかいう若い世代が多い。彼らと筆者テック大家さんのテレビライフはきっと全然違ったものであろう。
と、前置きが長くなったが、本日は、どこの物件にもあるであろうテレビアンテ端子、これが不要になる世界がもう来てるんじゃないか、というテーマでお送りしたい。
「チューナーレステレビ」という商品カテゴリの登場
突然だが、2つ目の質問。
「チューナーレステレビ」という商品のジャンルがあるのはご存知だろうか?
冒頭の質問を投げかけたのは、実は、テレビのリアルタイム視聴時間における世代間ギャップだけが理由ではない。「チューナーレステレビ」という商品カテゴリが、最近気になっているからだ。
これがどんな特徴があるのかについては自身のブログ「テック大家さん」でも詳しく書いているので、ご興味があれば筆者のプロフィールからたどってほしい。
チューナーレステレビとは、その名の通り、チューナーが入っていないテレビだ。
「チューナーがないなら何が観れるのだ?」
と思うかも知れない。
「それ、テレビじゃない」、と思う方もあるかも知れない。
いや、案外「チューナーってなんですか?」と、なんの悪気もなく質問してくる若い人も多いのかも知れない。
チューナーとは、空気中を伝わるテレビの放送信号を復調してテレビに表示する信号に変えるための部品のことだ。チューナーがないテレビは、要は、リアルタイムで地デジやBSなどの「テレビ放送」が観れないテレビということだ。
テレビ放送が観れないテレビなので、当然NHKも映らない。したがって、NHKの受信料を払わなくて良いテレビと言われたりする。
リアルタイム視聴が大好き、または、録画機を持ってて録画してテレビを見る、という向きにはチューナーレステレビの価値は多分わからないだろう。
そもそも、子供の頃「8時だよ!全員集合」を観てないと次の日に学校で話題についていけない経験を持つ世代にとって、テレビという商品は放送を観るためのモノなのだ。
それが今は違う。テレビの「画面」に映る映像はネットからやってくる。
志村だって、ちょーさんだって、ネットからやってくる。
最近売っているテレビはチューナーレステレビに限らず、スマホよろしく、ネットからアプリのインストールができる。だから、新しいサービス・アプリの動画コンテンツをテレビ(という商品)でどんどん観れる。
アプリが入っていてスマホみたいだから、それまでのものと区別して「スマートテレビ」と呼ばれてた時期もある。
さらに、TVer(ティーバー)のように、リアルタイムで見逃したテレビ番組をネット配信するアプリまで存在する。たとえあなたが、リアルタイムでは観ないけどテレビ番組は後からちゃんとチェックするという人だとしても、録画機すら不要な時代なのだ。
そういえば、今年の年始は、箱根駅伝も日テレがTVerでライブ放送をやっていた。そう、今やチューナーがなくてもネットでもリアルタイムでテレビ放送が視聴可能なのだ。
そんなわけで、テレビは、チューナーがなくても成り立つでしょ、ということになる(下図)。
チューナーレステレビとは、つまり、スマホを大きくして横向きにして脚をつけたような商品なのである。チューナーが搭載されていない分価格がやすいというのもポイントだ。
放送を観るのに「アンテナ」は不要
少し話がずれるが、実は、地上波の地デジ用の集合アンテナや衛星放送(BS/CS)のパラボラアンテナが物件についていなくても、テレビ放送を観る手段はある。
その手段とは、インターネット回線として建物に引き込んでいる光回線やケーブル回線だ。
以下の写真は、NTT光回線の終端につける(建物の中に設置する)装置で、終端装置と呼ばれるものである。
普通はこの箱からインターネット回線を取り出して、WiFiのルーターにLANケーブルでつないで建物内のWiFiを利用可能にする。ホームネットワークの裏方の機器だ。
実はこのボックスには、写真のように、テレビの同軸ケーブルを取り出す端子と、固定電話の回線を取り出すモジュラージャックがついている。
「光テレビ」というサービスを利用すると、この魔法の箱からテレビの信号を取り出してテレビにつなぐことになる。
つまり、大家さん目線でいうと、入居者の部屋には光回線だけが敷設してあればよいわけだ。部屋の壁にある同軸端子(アンテナ端子)は不要というということになる(下図)。
誰も使わなくなるアンテナ端子
テレビ放送をリアルタイムで観ない若い世代は、ネット動画で問題ない。見逃し配信もネットでOK。
どうしても地デジやBS/CSなどの「テレビ放送」を見たければ、ネットで使っている光回線やケーブル回線の終端装置から同軸ケーブルを引いてくればいい(ひかりTVの契約は必要)。
となると、大家さんが自分の物件に設置している集合アンテナや、そこから伸ばして壁の中に敷設している同軸ケーブル、同軸ケーブルの終端で壁に設置するアンテナ端子(同軸端子)。
これらの設備は結局誰も使わないんじゃないか!ということになる。
それでも付けるか集合テレビアンテナとアンテナ端子
最近フルリノベした著者が所有している物件では、まだテレビアンテナ端子(同軸端子)は残している。中古で物件を購入した際に、既に衛星放送のパラボラもついていたのでそのまま使うことにした。
ちなみに、その物件。固定電話のモジュラージャックはリノベの際に付けない判断をした。
単身向けでみんなスマホを持っているし、まず固定電話を使わないだろうと踏んだ。満室だが入居者も文句をいってこないし、募集中の不動産屋から何か言われたことはない。万一の場合は部屋に光回線が引いてあるのでそこからひかり電話の回線を取ればいいのだ。
しかし、次に何かリノベするとか、新築を建てるとかいう状況になったらどうだろう。
集合アンテナや壁にあるテレビアンテナ端子はもう不要なんじゃないか。
固定電話のモジュラージャックと同様、廃れていくんじゃないか。
筆者の中で、そういう思いが最近強くなってきているのである。
さて、みなさんは、どう考えるだろうか?
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