入居募集を不動産屋さんにお願いすると、賃貸情報サイトに登録してもらえる。

入居希望者がネットで賃貸物件の検索をすると、出てくるのはスポンサーリンクや、大手の賃貸情報サイトばかり。

 

大家さんのあなたが、いくら自分の物件に手をかけ、愛情をそそごうが、比較されるのは、賃貸情報サイト目線の項目だ。

バス・トイレ別、駐車場あり、二階以上…こんな項目で比較されたのでは、大家さんの思い入れが伝わらない。せっかく大家さんが入居者のライフスタイル思いを馳せ、考え抜いて様々な工夫を施したとしても、肝心の入居希望者に伝わらないのだ。

不動産屋に思いを語ったところで、ネットの情報は大手の賃貸情報サイトが牛耳っているから、不動産屋さんとしてもどうにもならない。

 

大家さんができることといえば、せいぜいサイトの上の方に出してもらうためのお金を積むくらいか…

 

こんな状況に、なにかモヤモヤしないだろうか。

自分で物件紹介サイト構築する

インターネットはもっと自由だ。

自分で所有物件紹介サイトを作れば、大家さんの思いを伝えることができるはずなのだ。

 

筆者も前述のモヤモヤをどうにかしたくなった一人である。そこで、当コラムで何度も登場する筆者所有の物件(箱根にある)の紹介サイトを作ることにした。

サイトのURLは、物件名をわかりやすく表現するために「独自ドメイン」を取得して公開している。

おかげさまで、ちゃんとサイト経由で入居希望などの問い合わせが来るようになってきた。

試しに筆者の物件の名前「ハイドレンジア箱根」をGoogleの検索ボックスに入れてみてほしい。著者の所有物件が、ちゃんと検索結果のトップに表示されるのがわかる(2024年5月現在)。

 

(注:もっとも、物件名を知っていて検索してくれれば苦労はしない。物件のことを知らない人が、筆者の物件を見つけてくれるにはもう少し努力が必要だ)

 

検索エンジンの検索結果の上の方にちゃんと出るようにするには、それなりに工夫も必要(SEO : Search Engine Optimizationと呼ばれたりする)。知識も必要になる。

というわけで、ここではSEO対策の一つと考えられている独自ドメインについて少し話そう。

独自ドメインとは

「ドメイン名」、とか、単に「ドメイン」、または「独自ドメイン」、などいろいろに呼ばれるが、インターネット上のサイトを識別するために付ける名前のことをドメイン名と呼ぶ。

ネット上では、全世界で唯一になるよう、ドメイン名前は被らないように付ける仕組みになっている(後述)。だから、ドメイン名はどれもこれも「独自」のはずなのに、わざわざ「独自ドメイン」と呼ぶことに、筆者としては若干違和感がある。

とはいえ、一般的によく使われるコトバなので、ここでは「独自ドメイン」と呼ぶことにする。

example1.com

example2.co.jp

のようなドメイン名を独自ドメインと呼ぶ。

 

では反対に、「独自ドメインではない」とはどいうことか。

例えば、昨今ホームページ作成で有名なWix(ウィックス)というサービスがある。ここでページを作ると、ユーザのページのURLは

example1.wixsite.com

や、

example2.wixsite.com

のように必ず最後にwixsite.comがつく(注釈1)。

これだとなんとなく大家さんであるWixさんから賃貸で間借りしているような印象のURLになってしまう。

一方、example1.comやexample2.co.jpのように、自分が強調したい部分(この場合example)だけを含むようなドメインが「独自ドメイン」なわけだ。

ちなみに、.comとか.jpはトップレベルドメインと呼ばれ、特別なドメイン名である。通常「独自ドメイン」はトップレベルドメインと自分が決めたワードだけを含むようなドメイン名のことをいう。(.jpドメインの場合は、.ne.jpとか.co.jp+自分のワード)。

ドメインの仕組み

ここでドメインの仕組みについて説明しよう。

ベースになっているのは、DNS (Domain Name System)というプロトコル(通信のための規格)である。世界中にDNSのサーバーがあるのだが、普段ネットを使っていてもその存在に気づくことはまずないだろう。そのようなDNSサーバーの一つで筆者のドメインが管理されている。

ドメイン名は、階層構造になっている。不動産でいうところの住所のようなものだ。

階層構造がどいう意味かというと、例えば日本の住所だと「東京」の「世田谷区」の「上野毛」の何丁目、みたいな感じ。ここで、東京の中には、世田谷区もあれば練馬区もある。さらに世田谷区に絞れば、上野毛もあれば、北沢もある、といったイメージ。

ドメイン名も住所と同じなのだが、階層構造が逆向きだ。広いほうが後ろに来る。

yahoo.co.jp

というドメイン名は、JPが一番広くて、「jp」の「co」の「yahoo」さん、という具合だ。

元々DNSはアメリカ人が作ったから住所も日本と逆なのか?詳しいことはわからない。とにかく、日本の住所とは逆向きにドメイン名を記すのがルールになっている。

 

 

yahoo.co.jpというドメインを所有している人は、そのサブドメインを自由に作れることができる。yahoo.co.jpであれば、 mail.yahoo.co.jpやshop.yahoo.co.jpなどを誰に許可を取らずとも作れる。

この仕組みなら、各ドメインの管理者がちゃんと管理していれば、世界中のサーバーに付けられている名前が被ることはないわけだ。

 

独自ドメインを持つというのは、例えていえば、ある地域の「町内会長さん」になったようなイメージだ。

(実際の町内会長さんにはできないが)自分の町内であれば、すきなように建物を立てて、住所を割り当てられるという特権を持っている町内会長さんだ。

例えば、あなたが、「○×ヒルズ」という物件を所有していて、something-hills.comというドメインを所有したとしよう。

そうすると、

building1.something-hills.com

building2.something-hills.com

と、棟ごとの(!)サイトを自由に構築できるのだ。

ちなみに、emailアドレスも自分で勝手に発行できる。

問い合わせ用のinfo@something-hills.comとか、

オーナー個人宛のonwer@something-hills.comのようなアドレスだって自由に作れるのだ。

 

筆者の場合は、自分の物件の入居者専用サイトを作って入居者限定で情報共有している。オートロックの使い方とか、ゴミの出し方など、物件固有の情報だ。そのサイトのドメインは、建物のドメイン名のサブドメインにしている。

ただし、入居者専用サイトは誰でもみられるのはいかがなものか、ということで、パスワードがないと見られないようにしている。アクセス制限に関しては、筆者のブログ「テック大家さん」でも紹介しているので、ご興味があれば筆者プロフィールからたどってみてほしい。

ドメイン取得とは?費用は?

ところで、ドメインの取得はどのように行うのだろうか。

ネット上にはドメイン取得を提供するサービスがいくつもある。サービスによって選べるトップレベルドメインが様々なのだが、.com や.co.jpのような一般的なものであれば、どのサービスでもたいてい取得できる。

取得すると手数料を年ごとに支払うことになる。

これもトップレベルドメインにより値段が異なる。.comであれば¥2000円/年でお釣りがくる程度である。サーバーの契約と合わせるとタダにしてくれるところもある。

 

上の説明で例として使った「◯×ヒルズ」のsomething-hills.comはまだ取得可能なようである(笑)。年¥1,800。

domains.squarespace.comより転載

 

ドメインを取得してもサーバーがないことには始まらない。この辺りは、この記事の反応が良ければ、別の機会に取り上げることにしよう。

 

本日は、ここまで。ありがとうございました。

 

注釈1: Wixでも、ドメインを取得していれば、Wixのドメイン名ではなく独自ドメインで運用することも可能である。